毎年、さまざまな新車が華々しくデビューするいっぽう、その影でひっそりと姿を消すクルマも多い。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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現在は空前のSUVブームとなっているが、出てくる時代が早すぎたのか? はたまたボディサイズなどが日本市場には合わず淘汰されてしまったのか? 消えゆくクルマの事情はさまざま。
今回は、過去に登場し一代限りで日本市場を去った残念なSUV5台をピックアップ。どんなクルマだったのか? なぜ消えてしまった? を、岡本幸一郎氏が解説していく。
文/岡本幸一郎
写真/MAZDA、NISSAN、MITSUBISHI、HONDA
【画像ギャラリー】日本市場から消えてしまった残念なSUVをもう一度チェック!
■マツダ CX-7
2006年12月に日本でデビューしたCX-7。トランスミッションは6速ATのみだったが、当時としては珍しい2.3L直4直噴ターボエンジン(238ps/35.7kgm)を搭載していた
いまや充実したラインアップを誇るマツダのCXシリーズで、最初に出たのがCX-7だ。SUVクーペ的な雰囲気もあるスポーティで筋肉質なスタイリングは、当時としては異彩を放つもので、メカニズム的にはMPVやプレマシー、マツダスピードアテンザから大半を調達しており、走りの仕上がりも上々だった。
ほどなく北米向けに見た目が相似で、さらに大柄なCX-9が加わるいっぽうで、やがて弟分にスカイアクティブ技術を用いたCX-5が登場すると、CX-7はお役御免となる。まあ、北米はさておき、日本ではやや大きくて小回りが利かず、なにより燃費がよろしくなかったのが、あまり売れ行きが芳しくなかった要因といえそうだ。
ただし、中国でのニーズを受けて、日本での生産が終了してから2年後に、中国で基本設計が同じままライセンス生産されるという珍しいことが起こった。そしてそのまた約2年後、中国専売のCX-4が生まれると、CX-7は生産終了となった。
というわけで、このCX-4が実質的にCX-7の後継に当たり、CX-7というモデルは一代限りで終わったわけだが、なぜ「7」があえて「4」にされたのかは、実のところよくわからない。ほかのラインアップとの整合性を考えると、最近出たCX-30もそうで、のちのち厄介なことになりそうな気がする。
参考までに各車の全長を示しておくが、 サイズ的には「30」が「4」で、「4」は「6」か「7」のままのほうがしっくりくるように思えてならないのだが……。
CX-3=4275mm
CX-30=4395mm
CX-4=4633mm
CX-5=4545mm(現行)
CX-7=4695mm
CX-8=4900mm
CX-9=5065mm(現行)
■日産 スカイラインクロスオーバー
「FRプラットフォーム採用の高級クロスオーバーSUV」として2009年に登場したスカイラインクロスオーバー。新車時価格はFRが420万~472.5万円で、4WDが447.3万~499.8万円だった
V36スカイラインの派生モデルとして、SUV人気が高まる2009年に日本にも導入された。スカイラインと同じく海外ではインフィニティの一員で、当時は「EX35」だった。
日産にとってもムラーノが売れたから、売りたくなった気持ちはわかる。ところが販売的には伸び悩んだ。要因としては、内容を考えると不当に高いわけではないのだが、割高感があったのは否めず。また、3.7LV6のみというエンジンの選択肢も弱みといえる。
登場当時は、あえてスカイラインの一員であることを強調していたふしがあったが、往年のスカイラインファンが求めるのは、もっと違うものだったのは否めない。
セダンや、クーペのV36ですら支持されたとはいえない状況だったのに、クロスオーバーが共感を得られるわけもなく、むしろ裏目に出た感もあり、低迷したまま2016年に販売終了を迎えた。ただし、念を押しておくとクルマとしての出来はけっして悪くなかった。
現在も、後継となるインフィニティQX50は海外では販売されているが、同じく日本では売れなかったクーペとともに現行型の日本導入は見送られたままだ。
■三菱 チャレンジャー
1996~2001年まで日本で販売されていたチャレンジャー。3LV6エンジン、2.8L直4ディーゼルターボ、2.5L直4ディーゼルターボを設定。パリダカなどのモータースポーツでも活躍した
パジェロの弟分として1996年7月に登場。5ナンバーも選べたのも特徴だ。当時イケイケだった三菱は、すべて拡大路線だった。
パジェロが大人気で、ジュニアやミニもあったところに加えて、2代目パジェロの基本メカニズムを譲り受けた本格的なクロカン性能も備えたクルマながら、クロカン色を抑えたちょっとオシャレなスタイリングが特徴だった。
ちょっと違った雰囲気を持つことから、海外ではパジェロスポーツなどの名称で販売されたが、日本ではこれまでやってなかったことに挑戦する意味から、チャレンジャーと名づけられたんだったような気がする。
販売的には、当時すでに確固たる地位を築いていたパジェロの牙城を崩すことは難しく、いまひとつパッとしなかったこともあり、日本では一代限りで販売を終了してしまったのだが、海外市場では、実質的に系譜であるパジェロスポーツの後継が人気を博している。
本家のパジェロの販売が日本国内では終了してしまったことだし、パジェロスポーツを日本でも売ってくれるとよいのだが……。
■ホンダ クロスロード
ストリームをベースに開発された3列7人乗りのクロスオーバーSUV。エンジンはストリームと同じ1.8L直4i-VTECエンジンと2.0L直4i-VTECエンジンで、FF、4WDともに5速ATを搭載していた
実は正確にいうと一代限りではなく、1990年代にSUVにうとかった当時のホンダが、ランドローバーから供給を受けたディスカバリーをそのままクロスロードという車名で販売していたので、車名としては2世代となるのだが、独自開発では唯一となる。
2007年2月に登場した時は、リーズナブルな価格で日本でももてあまさない手ごろなサイズに、「ハマーH4」と呼ばれたのもご愛敬のスクエアなフォルムや、このクラスでは珍しい3列シート、泥臭さを感じさせない雰囲気など、売れる要素満載だと思ったものだが、意外や販売はずっとふるわず、3年8カ月という短命に終わってしまった。個人的にも予想がまったく外れた珍しい1台として印象に残っている。
ところが生産終了となる前後から中古車相場が異様に上がり始めて、いまでも程度のよい個体はけっこうな高値がつけられるほどで、隠れた絶版人気車となっている。
まさしく世に出るのが早すぎたのだろうか。いまそのまま売り出しても、けっこう売れそうな気がする。
■日産 ラシーン
1994年に登場したラシーン。サニーベースのコンパクトサイズながら、全車4WDでスクエアなボディや背面タイヤ、グリルガードの装着など、クロスカントリーテイストのデザインが好評を得た
ほかに一代限りというと、車名としては、日産ではミストラルやラシーン、ホンダではエレメントやHR-V、Z、トヨタ キャミ/ダイハツ テリオスの姉妹車、ダイハツのタフトとラガー、スズキKeiなどが挙げられるが、このなかで現役当時そこそこ人気だったのになぜか一代限りで終焉を迎え、その後も後継車と呼べるクルマが出てきていないという点では、ラシーンは特異な存在といえる。
1990年代のRVブームのなか、まだコンパクトSUVがほぼ存在しなかった1994年に登場するや、そのデザインやコンセプトが注目を集め、若い女性を中心に人気を博した。以降ラインアップを拡充しつつ、2000年まで販売され、惜しまれつつ生産終了となった。
内容的には、B13サニーやN14パルサーと多くのパーツを共用しており、クロスオーバーSUVというよりは、SUVテイストのコンパクトカーというべき造りで、カタログモデルとして普通に売られていたものの、Be-1、パオ、フィガロの流れをくむ日産パイクカーシリーズの続編のような雰囲気のクルマだった。日産なればこそ、ラシーンのようなクルマを企画できたことに違いないし、後継車が存在しない点もパイクカーっぽい。
当初はそれなりに話題となったとはいえ後年は存在感が薄れていたが、絶版となってから再注目されて、いまでもラシーンを専門に扱う中古車店やカスタムやレストアを手がけるショップがいくつもある。
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みんなのコメント
ACCが付いて高速クルーズがほんと楽でしたが足まわりが固かったので一般道は乗り心地悪かったですね
燃費も悪くリッター6km位でしたが色々思い出を作った楽しい車でした。