自動車メーカーは、時代背景やニーズを調査し、「良いクルマ」を作ろうと日夜努力を続けている。しかしながら、ニューモデルやフルモデルチェンジを期に生み出される良いクルマに対し、市場の反応が冷ややかなケースも多い。
販売ターゲットが不明瞭なものや、少々ニッチな市場への提案など、開発陣が考える良いクルマのなかには、少々売りにくいクルマが存在する。
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本稿では、トヨタの販売現場で営業活動に従事してきた筆者が、良いクルマでも売りづらかったクルマを紹介したい。
文/佐々木亘 写真/TOYOTA
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■初代ラクティス
初代ラクティス。スポーティさを強調する装備と実際の走りに統一感がなく、ターゲットが定まりにくかった
2005年から2016年まで、5ナンバーサイズのコンパクトハイトワゴンとして販売されてきたのがラクティスだ。4mを切る全長に、大人4人がしっかりと座れるスペースを確保し、居住性と使い勝手を両立させている。
当時のコンパクトカーとしては珍しく、本革巻ステアリングを装備し、テレスコピックを搭載した。クルーズコントロール、CVT専用のパドルシフトを採用するなど、質感とスポーティさにもこだわりを見せている。
広いウィンドウエリアが生み出す視界の良さは、運転のしやすさにつながっているのだが、旋回時にはハイトワゴン特有の重心の高さが気になり、ハンドリングには少々不安な部分があった。
スポーティさを高める装備と、実際の走りがチグハグな印象となり、結果として販売ターゲットが定まりにくいクルマとなってしまった一例であろう。
■2代目bB
初代bBは若年層をターゲットとしていたが、中高年層から思わぬ支持を集めた。しかし2代目はより若年層向けのモデルチェンジだったため、中高年層の指示を失う結果となった
若年層男性をターゲットに作り上げられた初代bBは、四角いボディから生み出される居住性の高さと、見切りの良さが奏功し、中高年層からの支持も集めた。その後を継いだのが、2005年に登場した2代目bBだ。
2代目は、初代が持っていた「チョイ悪」の雰囲気をさらに強くした。クルマの中をミュージックボックスに見立てた最上級グレード「ZQ」の装備が特徴的だった。
9スピーカーを装着し、マッタリモードと呼ばれるフロントシートを沈み込ませたシートアレンジを用意する。装備やエクステリアのアクを強くしたことで、初代が集めた中高年層のユーザーは、一気に離れていった。
bBが貫き通した初代からのコンセプトが、ユーザーのニーズと合わなくなった結果、売り手側も販売ターゲットを見失い、販売台数も顕著に減ってしまったクルマだ。
■ポルテ
大きなスライドドアがセールスポイントだったポルテだが、片側のみというのが惜しかった
2004年から2020年まで2代にわたり販売されてきたポルテ。大開口のスライドドアは乗降性がよく、小さな子どものいるファミリー層から高齢者層までをターゲットとした。
しかし、運転席側からリアシートへのアクセスが悪く、購入に二の足を踏むユーザーが多かった。(初代では運転席側リアドアなし、2代目ではヒンジドアが採用される)
小さなミニバンを意味する「プチバン」として売り出した2代目も、ミニバン志向のユーザーは囲い込めなかった。子育てママをメインターゲットにしたが、2015年には2代目シエンタが登場し、ポルテを選ぶユーザーは、輪をかけて少なくなる。
同時期に販売されていたプジョー 1007のように、両側に大開口のスライドドアが装備されていれば、ポルテの特徴を、より強調できたように思う。小さなミニバンとして売り出すには、機能性をもう少し高めてほしかった。
■2代目イスト
SUVテイストを強くし、大型化したことによって販売台数を落とした2代目イスト
シンプルなコンパクトカーが多かった2000年代初頭に、クロスオーバーSUVの雰囲気を醸し出し、5ナンバーサイズにまとめ上げた初代イストは、約5年間で37万台超を販売する大ヒットとなった。
しかしながら、SUVテイストを強くし、ボディ幅を1725mmまで拡大した2代目イストは、販売台数を大きく落とす。
フルモデルチェンジを期に、コンパクトカーユーザーではなく、SUV志向のユーザーへターゲットを変えてしまったことが、販売不振の大きな原因だ。ボディが大きくなったことにより、初代イストからの代替が進まず、イストユーザーへも提案しづらいクルマに代わってしまった。
車格アップは、イストを支持していたユーザーを遠ざける結果となる。コンパクトクロスオーバーSUVというコンセプトは良かっただけに、ボディサイズを5ナンバーサイズに収めていれば、2代続けての大ヒットとなったであろう。
■オーパ
あまりに万能で逆にセールスポイントがなく1代限りで販売を終えたオーパ
全長4250mmながら、室内長2025mmという広大な空間を生み出した、5ドアハッチバックがオーパである。2000年から2005年まで販売され、1代で生涯を終えたが、クルマとしての完成度は高かった。
2700mmのロングホイールベースが直進安定性を高め、リアシートにはスライド機構を備える。5ナンバーサイズながら、大型セダン並みの乗り心地と居住性を誇った。
走行性能・機能性ともに万能なクルマであったが、目立ったセールスポイントが少なく、販売ターゲットが絞りにくかったのが、売りにくさにもつながってしまったかもしれない。
優等生過ぎて気品が高い、ちょっとおしゃれなフランス車のような佇まいが、トヨタの中では馴染まなかったのだろうか。クルマとしての素性は良いだけに、一つ飛びぬけた特徴があれば、販売動向は大きく変化したクルマに違いない。
* * *
今回取り上げた5台は、どのクルマも開発陣の熱量が高い、良いクルマばかりだ。筆者は自動車ディーラーで働き、「良いクルマ」と「売れるクルマ」は全く別物であるということを、強く感じている。
メーカーは、良いクルマを作ることはできるが、売れるクルマかどうかは、販売してみないとわからない。ヒットするかしないかは時の運の要素が強い。良いクルマを投入し続ければ、メーカー開発陣の努力は必ず結実するはずだ。これからも、各メーカーの考える「良いクルマ」に期待していきたい。
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みんなのコメント
これの実質後継が現行シエンタってことなんだろうけど…
モデル末期にはナディアSUという、今でいうSUVテイストで車高を上げた四駆グレードも用意したが、鳴かず飛ばずで終わってしまった。