落ち着いたマナーでカーブを鋭く縫う
フォトグラファーのリュク・レーシーは、ヒョンデi30 Nへ熱心にレンズを向ける。その後ろを、世代交代したホンダ・シビック・タイプRが爽快に追走する。
【画像】ホットハッチの頂点 ホンダ・シビック・タイプR ライバルのRS3とゴルフ R、i30 Nも 全118枚
アジア生まれの2台が駆け回るのは、冷たい雨に濡れた、グレートブリテン島の丘陵地帯。アスファルトへエネルギーが伝わり、アフターファイヤーの破裂音が周囲に響く。片方はオートマティックだが、もう一方はドライバーの手で次のギアが選ばれる。
2台の最高出力を合わせると、609psにも達する。前輪駆動のホットハッチなのに。少し前までは、想像し難かったパワフルさだ。
片輪を浮かせながら飛び回ったプジョー205 GTiや、後輪をロックさせテールを振り回したMk3 フォード・フォーカス STの時代とは違う。その頃は、確かにジュニアという言葉がぴったりだった。
FL5型へ生まれ変わった最新のシビック・タイプRは、先代から更に成長を遂げた。落ち着いたマナーで、ツーリングカー選手権のレーシングカーさながらにカーブを鋭く縫っていく。
これが今回の主役。英国編集部が厳選したライバルモデルとの比較で、その才能を探ってみたい。果たして、喜ばしい進化を遂げたのだろうか。
四輪駆動のRS3とゴルフ R 20イヤーズ
本日の相手は、i30 Nだけではない。際立つ1台といえるのは、グリーンのボディが鮮やかなアウディRS3だろう。現在は、3気筒や4気筒がこのクラスでは一般的だが、5気筒エンジンを搭載している。それだけで高得点を与えたくなる。
2.5Lエンジンが放つ最大トルクは、実に50.9kg-m。これは、20年前のランボルギーニ・ガヤルドに迫るほど。他のエンジンと聞きわけられる、濃厚なサウンドも放つ。
ご存知の通り四輪駆動。リアアクスルを知的に制御する技術で、アウディのレン・シュポルト、レーシングスポーツを名乗るのに相応しい身のこなしも実現している。
ここへ加わったのには、別の理由もある。新しいシビック・タイプRの英国価格は、4万6995ポンド(約756万円)へ上昇した。プレミアム・ブランドが売るモデルとの価格差が、大幅に縮まったのだ。
2台目の四輪駆動となるのが、フォルクスワーゲン・ゴルフの「R」。今回持ち込んだブルーのクルマは20周年の限定仕様、ゴルフ R 20イヤーズだ。
オリジナルのゴルフ R32は、自然吸気のV6エンジンを搭載して2002年に登場した。最新版が搭載するのは、名機といえるEA888型2.0L 4気筒ターボ。最高出力は通常のゴルフ Rから13ps増しの333psで、1.5kgの軽量化も果たしている。
ゴルフ R 20イヤーズで注目すべき改良が、スロットルとウェストゲートのバルブ制御。アクセルオフ時でもターボの回転を維持し、立ち上がりを鋭くするアンチラグ機能が載っている。
VWゴルフらしい能力の幅の広さ
リアタイヤの左右へ伝わるトルクを調整する、リミテッドスリップ・デフも見逃せない。過去最もエキサイティングなゴルフにしたいという、フォルクスワーゲンの意気込みが伝わってくる。シャシーのコンセプトは、RS3にも近い。
0-100km/h加速を4.7秒でこなし、歴代のゴルフで最強の公道仕様といえる。インテリアにカーボンファイバー製トリムがおごられた、初のゴルフでもある。
能力の幅広さはゴルフらしい。シビック・タイプRのように激しくコーナーを捲し上げても、粗野な乗り心地を示したり、ボディ剛性の不足は感じさせない。上級なグランドツアラーの領域にも近い。
落ち着いたレザー仕立てのインテリアは、真っ赤なバケットシートは派手過ぎるという向きには好印象なはず。4本出しマフラーやリアウイングで武装しているものの、日常の景色へ違和感なく溶け込める容姿も好ましい。
ただし、同社がアダプティブ・シャシー・コントロールと呼ぶ、普段使いしやすくするアダプティブダンパーは、英国仕様では850ポンド(約14万円)のオプション。相応の車両価格にも関わらず。
チタン製のアクラポビッチ・エグゾーストも、3500ポンド(約56万円)という高価なアイテム。「R」にぴったりなラピス・ブルー塗装には、835ポンド(約13万円)の追加費用が求められる。
試乗車の英国価格は、5万5000ポンド(約885万円)を超えていた。通常のゴルフ R 20イヤーズは、4万8250ポンド(約776万円)なのだけれど。
BMW M5の技術者がシャシー開発を担当
そして、主役と同じアジア勢となるのが、ヒョンデi30 N。8速デュアルクラッチATを搭載し、英国価格は3万5095ポンド(約565万円)からと1番お手頃だ。ホットハッチとしては安くないが、2023年の市場を俯瞰すると、内容に見合った設定といえる。
エンジンは2.0L 4気筒ターボで、最高出力は280psと4台では1番控えめ。前輪駆動で、機械式のリミテッドスリップ・デフが組まれる。シャシー開発は、E39型のBMW M5を生み出した有能な人物が主導した。
2017年に登場し、2021年にフェイスリフトを受けている。軽量な19インチの鍛造ホイールに大径のフロントブレーキが備わり、サスペンションはスプリングとアダプティブダンパーだけでなく、ジオメトリー自体も調整されている。
その結果、優れない路面への処理能力や操縦性が向上している。初期型も魅力的といえたが、少々荒削り感もあった。パッケージングを煮詰めたことで、熟成した特性を得ているはず。今回の比較では、i30 Nの能力の変化も確かめたいと考えている。
自由度の高い動的特性は、どのような味付けへアップデートされたのか。空力が重要視される速度域に届き、国際サーキットでの走りも許容するホットハッチなら、求められる水準は一層厳しいものになる。
完璧なドライビングポジション
早速、シビック・タイプRの運転席へ座ってみよう。FL5型のインテリアの印象はかなりポジティブ。真っ赤なクロス張りのバケットシートは適度にソフトで、彫りが深く横方向のサポート性に不足はない。ポジションは完璧。フロアカーペットもレッドだ。
正面にはアルカンターラが巻かれた、理想的なカタチのステアリングホイールが据えられる。左手を自然に降ろした場所には、アルミニウム製のシフトレバー。寒い日は冷たいが、運転しているうちに温まる。
1997年発売の、EK9型シビック・タイプRから特長が受け継がれている。2023年の今でも素晴らしい眺めだし、価値あるレガシーだといえる。
スマートなダッシュボードには、帯のようにハニカム・トリムが埋め込まれている。タイプRではシックなカラーリングで新鮮味は控えめだが、退屈な内装ではない。フェラーリF40にも通じる雰囲気を筆者は感じた。
少し子供っぽいと思う読者もいらっしゃるかもしれないが、これはホットハッチ。やんちゃなくらいが丁度いい。残りの3台の、すべてグレーでコーディネートされた車内と、どちらがお好みだろうか。
この続きは中編にて。
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みんなのコメント
日韓請求権協定を無かったことにしやがって、未だに日本に賠償を求めてる。
慰安婦合意もチャラ。
約束も守れない国とは付き合えない。