今回ご紹介する映画は世界中で多くのファンを持つ名車が多数登場するが、それでレースをするというわけではなく、なんとそれを盗む自動車泥棒の話である。
タイトルの『60セカンズ』は、1台を盗むのにかかる時間というからすごい。
トミカも走らせて競争する時代だ!! 実況付レースができる専用サーキットが新登場!!
スタッフにも出演者にもクルマ好きが多く、マニアックなクルマトリビアも飛び出すこの作品を楽しもう!
文/渡辺麻紀、写真/ウォルト・ディズニー・ジャパン、Newspress、Toyota、Porsche
【画像ギャラリー】ジャガー、ポルシェ、メルセデス……映画『60セカンズ』で盗まれる世界の名車たち!!
■70年代のカーアクションカルトムービーをリメイク
劇中で主人公たちが盗んでいく高級車の一部をご紹介していこう。アストンマーチン DB7。007のパロディ映画『ジョニー・イングリッシュ』にも登場している
『バニシングIN60“』(74)はカーアクション映画のカルトとも言える作品だ。スタントマンのH.B.ハリッキーが製作・脚本・監督・主演・スタントと、ひとり6役を兼ねたワンマン映画で、後半40分にも及ぶド派手なカーチェイスが公開当時、大きな話題になった。
その作品のリメイクが今回ご紹介する『60セカンズ』(00)。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジェリー・ブラッカイマーが製作、主人公のスゴ腕車泥棒、メンフィスには当時人気ナンバーワンだったニコラス・ケイジが扮している。タイトルの“60セカンズ”は車を盗む時間は60秒でOKという意味だ。
物語の大筋は、期日までに高級車50台を盗むハメになった車泥棒たちを描くもの。車泥棒を廃業し、まっとうな仕事に就いていたメンフィスが、新興勢力に弱みを握られた弟たちを救うために再び仲間を招集。敵が出した条件、72時間以内に高級車を50台集めるという難題にチャレンジする。
■マニア垂涎の高級車とクルマを偏愛するドロボーたち
ポルシェ 911。窃盗団はターゲットに暗号名として女性名をつけるのだが、女性同様に大事に扱い、その美しさを讃える
車ファン的に注目したいのはやはり次々と登場する高級車だろう。
99年アストンマーチンDB7、64年ベントレー・コンチネンタル、59年キャデラック・エルドラド、97年フェラーリ355F1、99年ジャガーXK8クーペ、57年メルセデスベンツ300SL/ガルウィング、99年ポルシェ911(996型)……という具合に新旧とりまぜて50台。
日本車では2000年トヨタのランドクルーザーと98年トヨタスープラがターゲットになる。
彼らは、この車にラーラやアルマ、パトリシアと言った女性名前の暗号名をつけ、無線を傍聴されたときに備えるのだが、その本来の目的はさておきで、ちゃんと車をレディ扱いし、その美しさを讃えることも忘れない。この辺にも彼らの車愛が満ちていて、微笑ましくなる。
その車愛で言うのなら、メンフィスがかつての仲間と再会するシーンでは、カセットデッキでル・マンのレースの轟音を聴いて車の名前を当ててみたり、盗みの下見シーンではチームが無線や携帯を通じて車トリビアで盛り上がる。
「TVドラマと車」というお題のなかで出される質問は「『刑事コロンボ』のコロンボが乗っている車は?」とか「73年型ポンティアック・ファイヤーバードに乗っていたのは誰?」とか「『私立探偵マグナム』の愛車のナンバープレートに書かれた名前は?」とか。
普通の人からすると難問というか、どうでもいい問題だが、彼らにとっては常識でありつつ面白いというわけだ。観ているほうも、次々と正解して行く彼らのノリのよさを大いに楽しめる。
ちなみに『刑事コロンボ』の答えはプジョーのコンパーチブル、ファイヤーバードは『ロックフォードの事件メモ』、そして『マグナム』は「ヒギンズ」という具合。こういう遊びはオリジナルにはなかったもの。チームプレイのもうひとつのお楽しみだ。
■とっておきのカーチェイスシーンはGT500「エレノア」で!!
最後に盗むシルバーの67年シェルビーマスタングGT500。劇中では「エレノア」のコードネームで呼ばれる
そして、メンフィスがもっとも思い入れを示すのが、最後に盗むエレノアと名付けられたシルバーの67年シェルビーマスタングGT500。オリジナルでも最後の車は同じくエレノアという名前だが、車はイエローの73年フォードマスタングと異なる。
このGT500を盗みドライブするメンフィスことニコラス・ケイジは、彼をBMWで追い詰める宿敵の刑事とロサンゼルスのヴィンセント・トーマス橋周辺で大チェイスを繰り広げる。
実は本作、カーアクションと呼べるのはこのシーンだけなのだが、いろいろと趣向をこらして盛り上げてくれる。
橋に至るまでメイン通りや脇道、水路を使い、パトカー、トラック、バス、ヘリコプターが立ちはだかり、巨大な水素タンクが転がり、事故で大渋滞中の橋ではスーパー級のジャンプを決行したりと、ヴァラエティに富んでいるのだ。
この凄まじいドライビングをやってのけたのは、撮影前に教習を受けた上に、そもそも車好き(というかコレクター)のケイジ自身だと言われているが、どこまでやったのかはよく判らない。少なくとも最後の特大ジャンプにはデジタルが使われていることは確かだろう。
また、エレノアは撮影のために7台のレプリカが作られ、スタントシーンで5台が使われ、残りの2台はケイジとブラッカイマーが記念に貰ったと言う。
13年にはその車の1台がオークションにかけられ1憶円で落札されたというニュースが報じられたので、もしかしたらこのふたりのどちらかが売りに出したのかもしれない。
本作の紅一点、かつての主人公の恋人でもあった女性スウェイを演じるのは、『17歳のカルテ』(99)でアカデミー助演女優賞に輝いたばかりのアンジェリーナ・ジョリー。
当時はバリバリのパンクなおねえさんで、颯爽とバイクにまたがって登場する。このバイク、ファンにたまらない99年製のMVアグスタセリエオロ(ゴールドシリーズ)。バイクながら最高速度281キロを誇る、世界でわずか300台しか生産されなかった激レア製品だ。
こんなバイクもちゃんとサマになっているあたり、さすがアンジー。当時の彼女の愛車はフォード・トラックだったというのも何となくしっくりくる。
もちろん、ケイジが本作に出演したのは車が大好きだったから。そして、アンジーもまた同じ理由で出演したという。彼らのその気持ちは伝わってくる。
●解説●
かつて最強の車泥棒として名を馳せたメンフィスだったが、今はすっかり足を洗い子ども向けのサーキットで働いていた。そんな彼のもとに実弟のキップと仲間がヤバい連中に借りを作り、抜き足ならない状況に陥ったという報せが届く。メンフィスは弟を助けるため、かつての仲間を集めることに。
メガホンを取ったのは『ソードフィッシュ』(01)等、クライムアクションを得意とするドミニク・セナ。オリジナルはカーアクションのみに特化していたが、本作では兄弟愛や仲間愛をドラマにすえてウェルメイドな作りになっている。
その脚本にはクレジットなしで『スター・ウォーズ』シリーズのJ.J.エイブラムスも協力したという。また、脚本にはオリジナルのハリッキーの名前と、エグゼクティブプロデューサーには彼の奥さんデニースの名前がクレジットされている。
ハリッキーは89年、『バニシングIN60“』の続編を撮影中、給水塔に突っ込むスタントによって事故死した。03年には奥さんのデニースがそれを30分の短編としてまとめ『Gone in 60 Seconds2』というタイトルで発表している。
※記事中に掲載していますクルマの写真は登場車と同型のもので、実際に映画に登場しているものではありません。
* * *
『60セカンズ』
ブルーレイ発売中/デジタル配信中
(C) 2021 Buena Vista Home Entertainment, Inc.
発売/ウォルト・ディズニー・ジャパン
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みんなのコメント
カルトなのは「バニシングin 60"」のほう。
主人公はほぼ自動車で、登場人物たちの余計なエピソードや無駄な会話もドンパチも無く、自動車が走るのを見るだけの自動車好きにはたまらない映画。
もう少し会話やストーリーか欲しければ「激走!5000キロ」もオススメ。
CG一切ナシのガチ撮影はカーアクション界の神!!
スーパーマンの歌も哀愁漂う感じでよかった