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「黙って俺についてこい」──クルマがそう言っている。メルセデスGクラス&ジープ ラングラーの到達点【Playback GENROQ 2019】

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「黙って俺についてこい」──クルマがそう言っている。メルセデスGクラス&ジープ ラングラーの到達点【Playback GENROQ 2019】

Mercedes-Benz G550 × Jeep Wrangler Unlimited Sport

メルセデス・ベンツ G550 × ジープ ラングラー アンリミテッド スポーツ

「黙って俺についてこい」──クルマがそう言っている。メルセデスGクラス&ジープ ラングラーの到達点【Playback GENROQ 2019】

最強オフローダー、2台の到達点

1979年に初代登場以来、39年ぶりにアップデートされたメルセデスGクラス。そして11月23日に販売された比類なきオフローダーのジープ・ラングラー。オフローダーとしての伝統を守りつつ、新型の2台はどこを目指したのか? ロングツーリングでそれぞれの方向性と走りの違いを検証してみた。

「頑なに伝統を死守しながらも、現代的にアップデートされた2台」

選ぶとしたら、さぁどっち? と言われたところで迷う人はあまり多くはないだろう。

21世紀に至ってもなお頑強なラダーフレームを持ち、ともに屈指のオフローダーとして歴史を積み重ね、フルモデルチェンジのタイミングも偶然一致したが、しかしまったく別の価格帯において、それぞれの道を走破してきた2台。ジープ ラングラーとメルセデス・ベンツ Gクラスである。

Gクラスは39年ぶり、ラングラーは11年ぶりのフルモデルチェンジとなるが、ちゃんとこのクルマのことを意識している人じゃないと新型と従来型を見分けるのは難しい。シルエットに関してはほとんど変わっていないにも拘らず、中味がことごとく刷新されているのである。

クルマのデザインは、機能に先んじて販売に直結するようなところがある。つまり今回、2台のシルエットはアイコンのように認知されており、大胆に変えてしまうことなどまかりならん、というわけである。変えちゃいけないけれど、変わっていなきゃいけない。こういうタスクはデザイナーにとって難しい。

「Gクラスの見た目のトピックはモダンになったダッシュパネル周りにある」

ドアハンドルとリヤのスペアタイヤカバー以外はすべて変わっているというGクラスだが、見た目のトピックはダッシュパネル周りが一気にモダンになったインテリアにある。一方ドライバビリティではフロントサスペンションがリジッドから独立懸架にしたことでターマックとの親和性が驚くほど高まっている。元来Gクラスを選ぶ人は、やせ我慢をしてクラシックカーに乗りたいわけではなく、中味に凝った王様級のメルセデスを転がしたいのだから、これはありがたい。

従来のGクラスのインパネは、古いデザイン上に新開発されたギミックを長年追加し続けた感じで、ダッシュの上にちょこんと載せられたモニターや「高級車だったらこれくらい付けとかなきゃ」みたいに散りばめられたウッドパネルの後付け感が苦しかった。

その点新型はエアコンの噴き出し口の形状からダッシュパネル、センターコンソールにいたるまでデザイナーがゼロから理想を求めた感じが素晴らしい。セダンのように滑らかな曲線が連続しているわけではなく、そこそこの不協和音を敢えて盛り込んでいるあたりにオフロード特有のダイナミックさが薫る。

「新型Gクラスで少し苦労が伴うのはコクピットの高みに上るときぐらいしかない」

一方独立懸架の前脚を得たことによるドライバビリティの向上は想像以上だ。何しろワインディングでステアリングを切り込んでいくと、昔のEクラスのようにキレイなダイヤゴナルロールがはじまり、自信を持ってコーナーに切り込んでいける。またS字コーナーのようなロールを左右に切り返すようなシーンでも、滑らかになったステアリング系統のおかげでインフォメーションが途切れ、車体がふらつく瞬間もなくなっている。

21世紀以降の従来型Gクラスは、無理やり足を硬くして高性能タイヤを履かせてアップデートを図っていた感が強かった。このため所有欲は大いにくすぐられるのだが、実際のドライブにはやせ我慢がつきものだったのである。その点、新型Gクラスで少し苦労が伴うのはコクピットの高みに上るときぐらいしかない。

「ジープは強固なフレームと直4ターボのお陰でとにかくドライビングが愉しい」

フラフラせずにビシッと走るという表現は新型ラングラーにも当てはまる。こちらはGクラスのようにフロントのサスペンション形式を変更してはいないので、より一層驚かされる。今回の試乗車は17インチのオフロード系タイヤを履いていたこともあり、ビシッとまではいかなかったけれど、不満は一切ないし、強固になったフレームと新たに加わった直4ターボのお陰でとにかくドライビングが愉しいのである。

先月行われた新型ラングラーの試乗会ではV6モデルにしか乗ることができなかったのだが、今回4発を積んだラングラー アンリミテッド スポーツをドライブできたことで、ようやく新型の全体像を把握することができた気がする。

V6モデルはオフロード走行におけるスロットルの踏みはじめの安定したトルクを求める人、もしくはターボのお転婆な感じが気に入らない人向け。一方アルファロメオ ジュリアのエンジンをベースにしている直4ターボの性格は、まさにアルファそのもの。2t弱の車重をものともせずにビュンビュンとターボキックを繰り出してスピードを上げていく。信じられないかもしれないが、曲率を問わず次のコーナーが楽しみな気持ちになるのである。

「カスタマーへ媚びず、新型になってもこの2台は気持ちいいくらいに迷いがない」

これまでのラングラーというかアメリカ車になかったファンなフィーリング。アメリカ人とイタリア人の結婚によって新たな個性が産み落とされた瞬間である。個人的には4発のラングラー推しである。

ラングラー アンリミテッド スポーツとG550。頑なに伝統的なスタイルを守りつつ、かなり入念に内面的アップデートを果たした2台のどちらかを選ぶ人は、本気でアウトドアに興じるにせよファッションで乗るにせよ、一時的な流行に左右されない丁寧なモノ選びをする人なのだと思う。ガスライターよりジッポー、ステンレスより炭素鋼のナイフ、見たことのないアディダスよりもスタンスミス・・・。

伝統を重んじるということはカスタマーに媚びていないということ。消費者のご機嫌を窺い過ぎて、コロコロと姿かたちを変えていったモデルも少なくない現代にあって、今回の2台には気持ちいいくらいに迷いがないのである。「黙って俺についてこい」クルマがそう言っている。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

【SPECIFICATIONS】

メルセデス・ベンツ G550

ボディサイズ:全長4817 全幅1931 全高1969mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2354kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:310kW(422ps)/5250-5500rpm
最大トルク:610Nm(62.2kgm)/2000-4750rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後リジッド
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後275/55R19
燃料消費率:12.5L/100km(EU複合モード)
車両本体価格:1562万円

ジープ ラングラー アンリミテッド スポーツ

ボディサイズ:全長4870 全幅1895 全高1845mm
ホイールベース:3010mm
車両重量:1950kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1995cc
最高出力:200kW(272ps)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後リジッド
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤ&ホイール:前後245/75R17
燃料消費率:11.5km/L(JC08モード)
車両本体価格:494万円

※GENROQ 2019年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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