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ターボかスーチャー、NAか ルノー・フエゴ ランチア・ベータ フォード・カプリ 吸気違いの3台 後編

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ターボかスーチャー、NAか ルノー・フエゴ ランチア・ベータ フォード・カプリ 吸気違いの3台 後編

シャープな反応で発進時から意欲的な加速

シルバーのランチア・ベータ HPEヴォルメックスは、ジェイ・シャルマ氏がオーナーの1984年式。入念にレストアを受けており、見た目だけでなく、シャシーの仕上がりも新車時と変わらないといっていい。

【画像】ターボかスーチャー、NAか ルノー・フエゴ ランチア・ベータ フォード・カプリ ほか 全104枚

今回の3台では最もボディサイズは小さいが、スタイリングは1番整っているように見える。スマートな容姿を、ブラックアウトされた大きなフロントスポイラーが引き締める。適度にアグレッシブだ。

インテリアでは、カラフルに色分けされたヴェリア・ボルレッティ社のメーターや、スクエアなヒーター系の操作パネルが、フィアットとの関係性を匂わせる。ダッシュボードのデザインが特徴的でもある。

ドライビングポジションはイタリア車らしく、足を屈めて腕を伸ばすタイプ。しかし、ドライビング体験は過去のベータ HPEの記憶を清々しく覆してくれた。

アクセルペダルに対する反応はシャープで、発進時から加速は意欲的。今でも速い。6200rpmで始まるレッドゾーンへ向けて回転数を高めても、スーパーチャージャーの悲鳴は聞こえない。後付けのチューニングパーツとは異なる。

パワーステアリングが備わるステアリングホイールは低速域で重めだが、速度の上昇とともに軽快になり、前輪駆動らしい鮮明なフィードバックが伝わってくる。ラック&ピニオン式のステアリングラックは、切り始めの反応がリニアではないけれど。

シャシーバランスが秀逸なランチア

1500rpmを過ぎるとモリモリとトルクが湧き出てくる。コーナーが連続する区間でも、シフトダウンの回数は最小限で済む。遅いトラックの追い越しも難しくない。シャルマのクルマの場合は、シフトレバーにもう少しの調整が必要そうだ。

5000rpmを超えると、2.0L 4気筒ツインカムエンジンは息苦しそうになっていく。そのかわり、スーパーチャージャーの効果で早めのシフトアップでも勢いは失われにくい。

イタリア生まれのベータ HPEヴォルメックスなためか、グレートブリテン島の荒れた路面との相性は今ひとつ。高速で隆起部分を越えると、硬めのスプリングに対しダンパーの減衰力不足を感じる。うねりを通過すると、垂直方向の制御が追いつかなくなる。

それでもシャシーバランスは秀逸。ホイールベースは長めでも、タイトなカーブではドライバーのいたずら心にリアアクスルが応えてくれた。

対するフォード・カプリのスタイリングには、1960年代に起源を持つ暖かさを感じる。マイケル・サーストン氏の愛車は1984年のスペシャル仕様で、7スポークのRSアルミホイールを履き、リアアクスルにはリミテッドスリップ・デフが組まれている。

ドアを開くと、こちらも特別仕様のハーフレザー・レカロシートが出迎えてくれる。レザー巻きで小さめの3スポーク・ステアリングホイールが、ほぼ垂直にドライバーへ対峙する。奥には、6枚のメーターが大きなパネルに並ぶ。

ややステアリングが曖昧な後輪駆動のカプリ

サーストンはサスペンション・ブッシュを硬いものへ交換しており、乗り心地は引き締まっている。凹凸を越えても、しっかり組まれたボディはきしまない。乗り心地は3台で最も快適。サイズが大きいものの、風切り音は小さい。

カーブでは、ベータ HPEヴォルメックスやルノー・フエゴ・ターボとの違いが良くわかる。前輪駆動の2台はステアリングホイールを切ると鋭く正確に反応するが、後輪駆動のカプリはリニアに反応しつつ、リア・サスペンションの古さも相まって若干曖昧だ。

ブレーキも、有効な制動力を引き出すには、それなりの力でペダルを踏む必要がある。少なくとも反応は漸進的で、レイアウトはヒール&トゥーするのに塩梅が良いのだが。

インジェクション化された2.8L V6エンジンは、カタログ値上はベータ HPEヴォルメックスより23psほどパワフルだが、この違いが発揮されるのは4000rpm以上。一生懸命回す必要がある。

2気筒多いぶん、エグゾーストノートは良く響く。低回転域から、音響的に加速のプロセスを楽しめる。

スタイリングが最もモダンといえるのは、マーク・パウリング氏がオーナーのフエゴ・ターボだろう。1980年代というより、1990年代のモデルにも見えなくない。リモコンでの集中ドアロックを、量産車として初採用してもいる。

フランス人技術者のポール・リプシュッツ氏が生み出した技術で、PLIPシステムとマニアの間では呼ばれている。現在でも故障せずに動くが、クルマのすぐ隣でボタンを押す必要がある。

高効率で洗練されたフエゴのターボ

シートはクッションが柔らかく、身体を包容してくれる。ステアリングホイールは4スポークで、センターコンソールにはトリップコンピューターが配される。ダッシュボードのデザインはモダンだ。

ターボで加給される1.6L 4気筒エンジンだが、ブースト圧は低め。3000rpmを過ぎると加速力が高まり、爽快とまではいえないにしろ、活発にダッシュを始める。

新車当時に中間加速を比べた記録では、4速のまま48km/hから80km/hへ届く時間は、フエゴ・ターボで7.7秒。カプリ 2.8インジェクションで8.5秒、ベータ HPEヴォルメックスは6.4秒となっている。勢いの差は、現在でも変わらない。

ブーストが効き始めても、公道の速度域ではタービンは殆ど鳴かない。高効率で洗練されたシステムなことを物語る。

ブレーキは3台で1番強力。フロントにベンチレーテッド、リアにソリッドのディスクが組まれている。シャープなフォルムのクーペながら、乗り心地は枕のようにソフト。横方向の姿勢制御は緩いものの、操縦性は悪くない。

現在、多くのエンジンがターボ化されていることを考えると、40年前のルノーの判断は正解だったといえる。かといって、クラシックカーとして最も魅力的だとは限らない。

優雅なシティクーペのカプリは、3台では完成度が最も高い。英国人として、贔屓目もある。それでも、スーパーチャージャーを積むイタリアのランチアへ、気持ちが傾いてしまうことは否定できない。

協力:ルートン・フー・ホテル

ルノー・フエゴ フォード・カプリ ランチア・ベータHPE 3台のスペック

ルノー・フエゴ・ターボ(1983~1986年/英国仕様)

英国価格:8700ポンド(新車時)/1万ポンド(約161万円)以下(現在)
販売台数:26万5367台(フエゴ合計)
全長:4368mm
全幅:1692mm
全高:1315mm
最高速度:194km/h
0-97km/h加速:8.4秒
燃費:8.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:920kg
パワートレイン:直列4気筒1565ccターボチャージャーSOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:133ps/5500rpm
最大トルク:20.4kg-m/3000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ランチア・ベータ HPEヴォルメックス(1983~1984年/英国仕様)

英国価格:8500ポンド(新車時)/2万ポンド(約322万円)以下(現在)
販売台数:2370台
全長:4285mm
全幅:1650mm
全高:1310mm
最高速度:196km/h
0-97km/h加速:9.2秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−
車両重量:1128kg
パワートレイン:直列4気筒1995ccスーパーチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:137ps/5500rpm
最大トルク:20.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

フォード・カプリ 2.8インジェクション(1981~1986年/英国仕様)

英国価格:8125ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:9万1349台(カプリ Mk3合計)
全長:4380mm
全幅:1700mm
全高:1320mm
最高速度:214km/h
0-97km/h加速:8.2秒
燃費:8.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:1168kg
パワートレイン:V型6気筒2792cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:160ps/5600rpm
最大トルク:21.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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