日産好きのオーナーが作り上げた、アメリカンなフェアレディZ
クルマのカスタム&チューニングの方向性は多種多様だ。ここにご紹介するこのイエローの日産「フェアレディZ」(6代目Z34型)は、ビレットの大径ホイールなどが象徴するように、アメリカ的スタイルが施されたもの。日本車なのにアメリカ的とはどういうこと? という疑問をお持ちの方もいるだろう。今回は、日本車でアメリカの雰囲気を楽しむドレスアップのジャンル、USDM(ユーエスディーエム)の世界をお伝えしよう。
「西部警察」のスーパーZを独自に再現! 日産「フェアレディZ」を大門団長に憧れてこだわりのレプリカに仕上げました
日産車好きのオーナーさんは、レアな車両の持ち主でもあった
この「フェアレディZ」は、2023年12月9日に開催された「TOYO TIRES FAN MEEITNG IN FUKUOKA」の会場内で、コンテストエントリー参加者専用駐車場に展示されていた車両だ。オーナーの山本智洋さんは、日産ディーラーにて約8年間の整備士業務を経験。その後、ドレスアップ専門店の店長業務に転職し、3年前に「HG AUTO MOTIVE(エイチジーオートモーティブ)」として独立開業。つまり、クルマのチューニング&ドレスアップを専門に扱うプロの方だ。
山本さんの場合、「日産車独特のデザインだったり、メジャーな会社なのにちょっとクセがある感じが好き」というのが、日産車にハマるきっかけだったそう。
最初の日産車は「マーチ」(2代目K11型)で、その後の日産車遍歴は、カーショップが製作した後付けターボを装着のK11型。そして、「セフィーロ」(3代目A33型)などを乗り継ぎ、結果的に現在は、このZ34型以外にも、「フェアレディZ」(4代目Z32型)、「レパードJフェリー」を所有している。
「Jフェリーに至っては、左ハンドルのアメリカ仕様も含めて、合計5台所有しています。もちろん部品取り車も含めての台数ですが、あの独特で日本では不人気だった車両が大好きで、これだけの台数を持っている人は僕だけなんじゃないかと思っています(笑)」
これだけ日産愛が炸裂しているわけだが、山本さんの愛車は、基本的に「USDM(ユーエスディーエム)」を基本としたアメリカ的ドレスアップスタイルが施されていることがポイントなのだ。
USDMとは?
「USDM」とは「United States Domestic Market」の略称である。直訳すれば、「アメリカ国内市場」という意味。日本で作られている日本車が、アメリカへとたくさん輸出されているのは皆さんご存知だろう。その輸出車というのは、現地の法規制に合わせて作られている。つまり、「USDM」とはアメリカの法規制仕様となった純正品を装着するドレスアップのこと。
左ハンドルとなった純全たるアメリカ仕様を楽しむ人もいるが、それでは単純な逆輸入車である。「USDM」とは右ハンドルの日本仕様にアメリカ向け純正パーツを装着することで、「アメリカで日常的に走っている仕様を日本でも楽しむ」という、アメリカに憧れたクルマ好き達が古くから定着させてきた、ひとつのドレスアップジャンルなのだ。
アメリカ仕様の純正パーツ装着が基本
アメリカでは、前後左右の車体の大きさが判別しやすいように、必ずオレンジ色のサイドマーカーが装着されているため、山本さんも前後灯火類と共にバンパーを変更。フロントはナンバースムージング加工も施されている。また、日本では「フェアレディZ」だが、向こうでは「370Z」が正式名称となるため、エンブレムも交換済みだ。
これらのアメリカ仕様純正パーツへの交換を土台として、ドレスアップのセカンドステップとして、足まわりや内装のパーツ選択に、アメリカで流行しているパーツブランドを選んだり、それらしい仕様を施して完成。
この車両で言えば、サスペンションは社外メーカーのエアサスへと交換されているが、見せるエアサスシステムとしてリアフードからそれらが見える位置へと搭載。さらにホイールは、現地でも大人気だったイタリアの老舗ブランド、スポルザを選択。日本のシャコタンではなく、アメリカのスラムド(着地)スタイルを完全再現した。
「僕の世代のスポーツカー好きは、ドリフトを楽しんだりする人が多かったんです。でも当時は、MOONEYES(ムーンアイズ)などによるアメリカのカスタム文化、CAL LOOK(キャルルック)なども流行っていて、僕はそれに惹かれたんです。だから、最初のマーチもバンパースムージングやオーディオカスタムなどをして楽しんでいました。ホイールも独特の光り方がカッコイイビレット(鍛造)に憧れましたね」
純正品をアメリカ仕様へと変更してUSDM化し、それをベースにし足まわりや各パーツを変更して、ドレスアップを完成させる。海を越えて現地に赴くにはハードルが高いが、日本で生活しながら憧れたアメリカンスタイルの文化を、愛車に取り入れる。そんなクルマ遊びは、90年代の頃から人気で、少しずつ方向性は変化しながらも、今でも幅広い世代のクルマ好きに親しまれているのだ。
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