この記事をまとめると
■「R’s Meeting 2024 in 富士スピードウェイ」にて「R32 EV」がお披露目された
不敗神話の「R」伝説がEVで蘇る!? 日産がR32型スカイラインGT-R EVコンバージョンプロジェクトを開始
■R32 EVの発起人である平工良三さんにこだわりを直撃した
■いまからさらに30年後にも楽しめるR32 GT-Rを目指して開発されている
渦中のEVコンバート版R32GT-Rついに現る
去る10月27日、富士スピードウェイで開催された「R’s Meeting 2024 in 富士スピードウェイ」にて、R32 GT-Rを電動化したコンセプトモデル「R32 EV」がついに白日の下に現れた。これまで、SNSや動画サイトでチョイ見せはあったものの、実物が公開されたのはこれが初めてのこと。
始動こそされなかったが、R32オリジナルの車体をはじめ、2シーター化されたインテリアや、オリジナルデザインのまま18インチに拡大されたホイールなど、GT-Rファンならずとも多くの観客が胸を熱くしたことは間違いない。
会場ではGT-Rチーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志さんによるトークショーも開催され、R32 EVの発起人となった平工良三さんも登壇した。その平工さんにR32 EVについてインタビューした模様をお伝えしよう。
──そもそも、どういうきっかけでR32のEVコンバージョンが始まったのでしょうか。
平工:いまから30年後でも、R32 GT-Rの楽しさ、フィーリングを味わえるようにしたいと考えたのが発端です。R32はほぼ30年前にデビューしたクルマですが、いま現在でもワクワクするような楽しさを味わえるものです。が、いまから30年後にしっかりと走れるR32が存在するかといえば、それは難しい。そこで、30年後でも手に入るであろうモーターやバッテリーを使ってR32を再現できないかと探り始めたのです。
──では単純なEVコンバートのショーケースではないと。
平工:そのとおりです。たとえば、EV化するにあたって技術的にはFRで作るほうがハードルは低いのですが、それではR32の走りは再現できません。また、VDCなど現在の技術もまたR32の再現には不要だと考えて搭載していません。
──EV化にあたって、R32の走りを再現するのにもっとも重要なことはなんだったのでしょう。
平工:もっとも重要なのはモーターとバッテリーの制御技術です。R32 GT-Rに限らず(ガソリン車は)運転する人によってフィーリングの感じ方は違います。このフィーリングを制御プログラムとして作るのが大きな課題でした。加藤博義さん(GT-Rの社内テストドライバー)にお願いして、もっともR32らしいフィーリングを味わえるようにドライブしてもらい、プログラムを完成させました。具体的には、ヒール&トゥで4速から2速へシフトダウンし、2速からアクセルを全開にしていく気もちよさ、みたいなところまで再現できたと思っています。
30年後にも楽しめるR32 GT-Rを目指して
──SNSではR32を解体するシーンまでありました。EV化にあたって、苦労したポイントなどありますか。
平工:R32を作った当時はCAD(コンピュータ設計支援システム)がなく、最初は各部の正確な3Dデータを作成しなければなりませんでした。紙の図面も少なかったので、エンジンベイの寸法など、あらゆる計測をしなおしたのです。ちなみに、解体にあたってEV化で不要となったパーツはネジ1本にいたるまで保存してあり、元どおりのR32 GT-Rに再生可能としています。
──モーターとバッテリーを搭載することで、R32とは車重や前後バランスなど変わっていますか。
平工:詳しくはお話しできませんが、当然車重は増えています。しかし、バランスはむしろ向上しています。また、重量は増えたもののパワーウェイトレシオ、そしてトルクウェイトレシオについてもR32とほぼ同じく仕上げています。R32の車体は(現代の基準からすると)とても小さく、バッテリーを床下に収納するといったことができなかったので、リヤシートを外して搭載することになり、残念ながらオリジナルと違って2シーターとなってしまいましたけどね。
──オリジナルと違うといえば、ホイールサイズが16インチから18インチへと拡大されました。
平工:車重が増えたために、ブレーキを強化する必要があったのです。せっかくなら、R35でも使っているブレンボを使いたいとなったのですが、どうしてもオリジナルのデザインは活かしたいと。そこで、一緒に取り組んでいたデザイナーが18インチ化を実現してくれたのです。デザインだけでなく、中空スポークなど機能的にもR32と等しく、当然大径のキャリパーにも対応しています。
──R32 EVは音についても再現されているとか。
平工:これも詳しくはお話しできませんが、R32オリジナルの音をとてもリアルに再現できたと思っています。音振を担当した技術者のこだわりが凄まじく(笑)、私でさえ理解不能な領域で頑張ってくれました。ぜひともご期待いただきたいポイントです。
いまだベールに包まれているところは少なくないものの、平工さんの言葉からR32 EVがただのコンバートではないことをご理解いただけただろう。
インタビューの最後に、30年後の人がR32の走りを体感できるとなると、平工さんは「R32 EVはちょっとしたタイムマシンのようですね」と愉快そうな笑みを見せたのが印象的だった。さらなるディテールは近いうちにご紹介できるので、ぜひR32 EVにご期待いただきたい。
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