現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 走りも良かったホンダの力作ミニバン!!! エリシオンが初代限りとなった理由 【偉大な生産終了車】

ここから本文です

走りも良かったホンダの力作ミニバン!!! エリシオンが初代限りとなった理由 【偉大な生産終了車】

掲載 更新 18
走りも良かったホンダの力作ミニバン!!! エリシオンが初代限りとなった理由 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

商用バン界に革命は起こせたか 風雲児ホンダN-VANの新しさと魅力

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ エリシオン(2004-2013)をご紹介します。

●【画像ギャラリー】先進・上質を目指したホンダの3列ミニバン!! エリシオン/エリシオン プレステージをギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:HONDA

■ミニバンのさらなる価値の創出を目指して登場したエリシオン

「新世代プレミアム8シーター」とのキャッチフレーズを伴い、当時人気を博していた日産エルグランドや、その後ミニバン界の盟主となったトヨタ アルファードのライバルとして2004年に誕生。

 しかし「ホンダが考えるミニバンの価値」と、多くのユーザーが考えるそれが噛み合わなかったせいか人気薄となり、1代限りで消えていったLサイズミニバン。

 それが、ホンダ エリシオンです。

 エリシオンは、2003年の第37回東京モーターショーに出展された「ASM」の市販版で、ミニバンブームの火付け役となった「オデッセイ」より大柄な8人乗りミニバンです。

全長×全幅×全高は4840mm×1830mm×1790mm。当時のオデッセイ(3代目)が4765mm×1800mm×1550(-1570)mmと、とくに全長の違いは目を引く

 エクステリアデザインのモチーフは「大海原を疾走する大型クルーザー」とのことで、そのフォルムはLサイズミニバンとしてはワイド&ローなもの。

 そして実際、全長4.8m強となるボディは底床・低重心な設計が自慢のひとつでした。

 初期モデルに搭載されたエンジンは3L V6および2.4L直4のi-VTECで、インスパイア譲りの3L V6エンジンは走行状況に応じて3気筒を休止させる「可変シリンダーシステム」を備えています。なおトランスミッションは両エンジンとも5速ATが組み合わされました。

 その後いくつかのグレードを追加していったエリシオンは、2006年12月にマイナーチェンジを実施。

 従来モデルのヘッドランプやフロントフェイスなどを変更すると同時に、最上級グレード「エリシオン・プレステージ」を追加したのです。

2006年12月に発表された上級グレード「プレステージ」(発売は翌1月)。本文にもある通り、アッパーなフロントグリルがベースグレードとの突出した差異を作っている

 エリシオン・プレステージは、当時人気だった日産エルグランドと肩を並べる最高出力300psの3.5L V6エンジンを搭載し、いわゆる押し出し感の強いヘッドライトとフロントグリルを採用したグレードです。またそのリアコンビネーションランプも、標準車より大型化されています。

 その後も新グレードの投入や一部仕様変更を繰り返すことで、Lサイズミニバンの超売れ筋となったトヨタ ヴェルファイア&アルファードを追撃せんと試みたエリシオンでしたが、結論としてパッとしない販売状況が続いてしまいました。

 そのためホンダは2013年10月、エリシオンの生産と販売を終了。

 その後、2016年1月にはいちおう「2代目ホンダ エリシオン」が誕生したのですが、こちらは中国市場専用モデルであって、日本では発売されていません。

■走りや3列目への「気配り」が裏目に? エリシオンの敗因とは

 なかなかの力作と思えたホンダ エリシオンの売れ行きがパッとせず、1代限りで消滅してしまった理由。

 それは結局「ユーザーの嗜好を読み間違えた」ということに尽きるのでしょう。

 Lサイズミニバンであっても「地に足のついた走り」でなければならない――との考えから、エリシオンは前述のとおり底床・低重心な設計となり、そのため、ライバルの全高が約1.9mであったのに対し、エリシオンのそれは約1.8mに抑えられました。

 またエリシオンの3列目シートは左右に跳ね上げて格納する方式ではなく、座面だけを持ち上げて前に寄せる方式であったため、3列目を格納した際の荷室(特に奥行き)は、ライバルと比べるとどうしても狭くなります。

エリシオンの内装とシートを倒した例(下)。当時の資料からは、現在も3列シートの課題となっている「3列すべてのシートにゆとりと快適性をもたせる」ことへの労苦も垣間見える

 しかしその分だけエリシオンの3列目シートはしっかり作られており、なかなか上質な座り心地を味わうことができたのです。

 さらにフロントマスクも、「あまりにも押し出し感が強いデザインはいかがなものか……」と開発陣が考えたかどうかは知りませんが、結果として、同種のLサイズミニバンと比べれば格段に上品な顔立ちとなりました。

 これらのこと、つまり「背をやや低くすることで走りを向上させ、荷室容量を多少犠牲にしてでも3列目の座り心地にこだわり、そして上品な顔立ちにする」というのは、ホンダとしては「良かれと思ってやったこと」です。

 しかし、その思いは通じませんでした。

 市場は、というかLサイズミニバンを好むユーザーの多くは、「そんなことよりも、押し出し感の有無のほうがはるかに重要である」と判断したのです。

 そのためホンダはあわてて2006年12月に「押し出し感が強い系」であるエリシオン・プレステージを追加したわけですが、最初に付いた「エリシオン=威張りが利かないLサイズミニバン」というイメージを覆すことはできず、プレステージの販売もまた苦戦しました。

リア。日本では初代のみとなったが、生産終了から3年を経た2016年1月中国市場で2代目が発売。全長・全幅・全高は4940mm、1845mm、1710mmと、さらに大柄となっている。

 というか、確かにエリシオン・プレステージは押し出し感を狙ったデザインになっていますが、今にして思えばやや中途半端だったようにも思えます。

 もっとゴリゴリでベタベタなフロントマスクにしたならば、もしかしたら、もうちょっとは売れていたのかもしれません。

 まぁこのあたりについては今さら言っても詮ないことで、とにかく、ホンダは読み間違えたわけです。残念ですが、「でもまぁ仕方ない」とするほかありません。だって、人は誰だってたまには失敗するのですから。

■ホンダ エリシオン 主要諸元
・全長×全幅×全高:4840mm×1830mm×1790mm
・ホイールベース:2900mm
・車重:1940kg
・エンジン:V型6気筒SOHC、2997cc
・最高出力:250ps/6000rpm
・最大トルク:31.5kgm/5000rpm
・燃費:9.8km/L(10・15モード)
・価格:451万5000円(2004年式VZ)

●【画像ギャラリー】先進・上質を目指したホンダの3列ミニバン!! エリシオン/エリシオン プレステージをギャラリーでチェック!!!

こんな記事も読まれています

【新車価格情報】輸入車 デビュー&改良情報(ダイジェスト)※2024年4月20日時点
【新車価格情報】輸入車 デビュー&改良情報(ダイジェスト)※2024年4月20日時点
カー・アンド・ドライバー
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】混雑を避けて移動したい! 道路別・渋滞予測まとめ
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】混雑を避けて移動したい! 道路別・渋滞予測まとめ
くるくら
最近聞かない「水抜き剤入れますか?」のセリフ! なぜ勧められなくなった? 昔はよく声掛けられたのに…なぜ?
最近聞かない「水抜き剤入れますか?」のセリフ! なぜ勧められなくなった? 昔はよく声掛けられたのに…なぜ?
くるまのニュース
修理代を請求されることはある? 教習所で転倒してしまった場合の責任の所在
修理代を請求されることはある? 教習所で転倒してしまった場合の責任の所在
バイクのニュース
MINIに新種『エースマン』登場、航続406kmのEV…北京モーターショー2024
MINIに新種『エースマン』登場、航続406kmのEV…北京モーターショー2024
レスポンス
GW渋滞、京滋バイパス・阪和道・近畿道・西名阪道・京都縦貫道のピークはいつ?【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】
GW渋滞、京滋バイパス・阪和道・近畿道・西名阪道・京都縦貫道のピークはいつ?【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】
くるくら
ヨコハマタイヤ 日本のスーパーフォミュラマシンを使った無人自動運転レースにアドバンタイヤを供給
ヨコハマタイヤ 日本のスーパーフォミュラマシンを使った無人自動運転レースにアドバンタイヤを供給
Auto Prove
EVけん引役の米テスラ、4年ぶりの減収減益で“大騒ぎ”[新聞ウォッチ]
EVけん引役の米テスラ、4年ぶりの減収減益で“大騒ぎ”[新聞ウォッチ]
レスポンス
日産ではない日産車? 本格4WD「謎のSUV」発表!新型「パラディン」って? 手掛ける鄭州日産、中国で誕生
日産ではない日産車? 本格4WD「謎のSUV」発表!新型「パラディン」って? 手掛ける鄭州日産、中国で誕生
くるまのニュース
スバル『レガシィ』セダン、2025年春に生産終了へ…電動化への移行を反映
スバル『レガシィ』セダン、2025年春に生産終了へ…電動化への移行を反映
レスポンス
ホンダ・WR-V vs ライバル ~ヤリス クロス/CX-3/クロスビー etc.~
ホンダ・WR-V vs ライバル ~ヤリス クロス/CX-3/クロスビー etc.~
グーネット
日産 リビングと車内がシームレスにつながるNissan ConnectにGoogleを搭載
日産 リビングと車内がシームレスにつながるNissan ConnectにGoogleを搭載
Auto Prove
【MotoGP】MotoGPの人気復活にはシュワンツのような男がいる? 大注目の新人アコスタ、“個性”あるライダーの必要性感じる
【MotoGP】MotoGPの人気復活にはシュワンツのような男がいる? 大注目の新人アコスタ、“個性”あるライダーの必要性感じる
motorsport.com 日本版
最大渋滞40km!? 東北道の「GW渋滞地獄」回避するコツは? 鬼門の「羽生PA」 実はけっこうある「意外と空いてる時間帯」は一体いつなのか
最大渋滞40km!? 東北道の「GW渋滞地獄」回避するコツは? 鬼門の「羽生PA」 実はけっこうある「意外と空いてる時間帯」は一体いつなのか
くるまのニュース
ヤマハの電アシ「PAS SION-U」 低床U型フレーム採用車の2024年モデル発売
ヤマハの電アシ「PAS SION-U」 低床U型フレーム採用車の2024年モデル発売
バイクのニュース
スマート第3のモデルはオフロード電動SUVに、航続550km…北京モーターショー2024に展示予定
スマート第3のモデルはオフロード電動SUVに、航続550km…北京モーターショー2024に展示予定
レスポンス
2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか?
2シーズン目が始まる「フォーミュラ・ジムカーナ」! 「大学の自動車部対抗競技」をなぜ大企業が支援するのか?
WEB CARTOP
ホンダが中国市場に投入する新型EVの「烨(yè:イエ)シリーズ」を発表
ホンダが中国市場に投入する新型EVの「烨(yè:イエ)シリーズ」を発表
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

18件
  • 何だろう?
    色々見馴れたせいか、プレステージがカッコよく見える。
  • フルモデルチェンジして「オデッセイ」に名前を変えたんだと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

297.0361.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

7.0134.0万円

中古車を検索
エリシオンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

297.0361.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

7.0134.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村