2019年11月に発売されたダイハツ・ロッキー、トヨタ・ライズは、ライズが国産乗用車販売台数NO.1の座についたこともある、今でもそのお手頃感から絶大なる人気を誇る100万円台から手に入る5ナンバーサイズのコンパクトクロスオーバーSUV。ダイハツが、タントに続くDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)第二弾として登場させ、トヨタにライズとしてOEM供給しているのは、かつてあった両社のコンパクトSUV、ビーゴ&ラッシュを振り返れば、当然のことである。
デビュー以来、パワーユニットは3気筒1Lターボのみの展開だったのだが、発売からちょうど2年を経た2021年11月、待望のハイブリッドモデル(2WDのみ)と、新開発された3気筒1.2L NAエンジンを追加(2WDのみ)。これまでの1Lターボエンジンモデルは、乗り心地面で評判の良かった4WDとの組み合わせに限定されている。
DOHCエンジンで〝走りのホンダ〟を印象付けた1980年代の「ワンダーシビック」
注目のハイブリッドはe-SMART HYBRIDと呼ばれ、日産ノートなどと同じ、エンジンで発電し、モーターで100%駆動するシリーズ式ハイブリッドだ。シンプルな構造とコンパクトなサイズ、そして割り切りある性能によって、ロッキー・ライズの大きな強みである低価格をも実現。実際、ハイブリッドモデルの価格はロッキーの場合、税込みで211.6万円からである。また、新開発の1.2L NAエンジン搭載モデルは最廉価となり、166.7万円から。従来の1Lターボエンジン+4WDモデルは194.48万円からとなっている。
さて、ここでは新型ロッキーでもっとも買いやすい価格帯を実現した、最廉価グレードのL同士で前型よりも3.8万円安いスタート価格がうれしい、ロッキーの新開発1.2L NAエンジン搭載モデルの試乗記をお届けしたい。グレードは最上級のPremium G、2WD、205.8万円(税込み)である。
最初に、ぶっちゃけ話をしてしまうと、開発陣の言葉からも、ロッキーの動力性能順位はハイブリッド→1Lターボ→1.2L NAとなり、試乗車のNAエンジンはよーいどんの加速力では最下位に位置するパワーユニット、つまり87ps、11.5kg-mという控え目なスペックの持ち主だ。しかしながらこの最上級グレードにもなると、LEDヘッドランプ、LEDシーケンシャルターンランプ、本革巻きステアリング&シフトノブ、最大19種類の先進運転支援機能(ブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックアラート、スマートパーキングアシストなどはオプション)、さらに今回の新型から加わった電子パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能まで奢られているのだから完璧だ。装備面ではもはや上級高級車に遜色ないレベルにあると言っていい。結果、ACCは電子パーキングブレーキ装備のため全車速追従機能&レーンキープ機能まで加わり、高速走行、ロングドライブはより快適・安全なものになる(ACCの制御の良し悪しは別として)。
ちなみに日産のワンペダルのようなスマートペダル(S-PDL)を採用し、AC100V/1500Wコンセントも選べるハイブリッドモデルは、ゴルフバッグやベビーカー、ドッグカートが真横に積める(ここが重要。斜めにしか積めないと積載効率が著しく落ちる) 自慢の大容量ラゲッジルーム床下にある80Lものサブトランクスペースが狭まっているのは当然で、補器バッテリー(駆動用のリチウムイオンバッテリーは後席座面下に配置)の積載などによって80Lが17Lにまで減少するのだが、1.2L NAエンジンモデルなら従来の2WD車と同じ、機内持ち込みサイズのキャリーケースさえすっぽり入る80Lもの床下収納が唯一、使えることになる(4WDのみになった1Lターボモデルは38L)。
ガソリン車のラゲッジルーム床下収納
ハイブリッド車のラゲッジルーム床下収納
試乗車にはオプションのブラインドスポットモニター(6.6万円)も装備されていたから、電子パーキングブレーキ&オートブレーキホールド機能と合わせて先進運転支援機能的には最新の上級車並みと言えるのだ。
市街地を走り出せば、まずはエンジンのピックアップ、レスポンスの良さに驚かされる。確かに1Lターボ、ハイブリッドモデルに対して動力性能的には劣るのだが、街乗りシーンでは必要十分な加速力がスッとタイムラグなく得られ、軽量な車重もあって(シリーズ中、最軽量の980kg)、キビキビした軽快感ある走行性能が好ましく思えた。試乗コースには首都高速道路も含まれていたものの、速くはないが、それなりに流れに乗ることは可能だった(1名乗車時)。パワーステアリングは低速域でごく軽く、速度を増すとしっかり引き締まる設定で、コンパクトなボディサイズ、小回り性の良さもあって、走りやすさは依然、文句なしである。もっとも、車体の軽さが影響しているのか、カーブなどでの重心感の高さはそれなりに感じることになる(重量物のハイブリッドバッテリーを低い位置に積載し、重心が低まるハイブリッドモデルとの比較において)。
エンジンフィールは可もなく不可もなく、というレベルで、アクセルペダルをベタ踏みしても加速は穏やか。とはいえ3気筒感、エンジンノイズがそれほど気にならない程度に抑えられている点には好感が持てた。エンジンノイズについては、ほかのパワーユニットより高回転を使う場面が多いにもかかわらず、別稿にて試乗記をお届けする期待の!?ハイブリッドモデルよりも抑えられていたことは、ちょっと意外でもあった(ハイブリッドモデルは3気筒感あるエンジンノイズがかなり目立つということ)。
ただし、ロッキー&ライズのデビュー以来、指摘してきた、195/60R17サイズの大径タイヤによる乗り心地は、開発陣によれば「地道に改善してきた」とはいうものの、依然、褒められない。良路ではともかく、段差やマンホール越えでのショック、音、振動の収束がいまひとつで、そのシーンに限ればガタピシ感が拭えないのである。1Lターボモデルのみの時代から筆者が提言してきた、大径タイヤ&ホイールによる足元のカッコ良さより乗り心地にこだわるなら16インチタイヤ装着車を薦めたい・・・という指摘は今も変わらず、といったところである。
ダイハツの開発陣の説明によれば、各パワーユニットのキャラクター分けとして、新開発されたハイブリッドモデルは環境、燃費、先進感を求めるユーザー向け、この新開発1・2L NAエンジンモデルは街乗りメインの価格重視ユーザー向け、そして従来からある1Lターボエンジン+4WDモデルは走りにこだわるアクティブなユーザー向け・・・と説明されるのだが、意外にも新開発された1.2L NAエンジンは素直な出来の良さがあり、WLTCモード燃費20.7km/Lに迫る実燃費約19km/L(1名乗車、市街地50%、高速道路50%走行、エアコン25度オート)を達成し、そして最も廉価な価格帯であることから、街乗りメインの使用、お一人様のロングドライブもたまには・・・という使い勝手であれば、ラゲッジスペースの大容量ぶりを含め、”SUVの雰囲気を楽しむ”コンパクトカーとして、アウトドアにも活用できる商品力の高い選択肢と思えたのも本当である。Xグレードなら181万円で、乗り心地面で優位な16インチタイヤになるため、狙い処とも言えそうだ。それにブラインドスポットモニターを付ければ、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能は付かないものの(そこは残念)、充実した先進運転支援機能からダイハツコネクトの用意もある安心・安全な”つながる”クルマとしての買い得感はなかなかと思える。
ダイハツ・ロッキー
https://www.daihatsu.co.jp/lineup/rocky/
写真・文/青山尚暉
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みんなのコメント
さすがダイハツ。
高速では少しパワー不足かもしれない。
この1.2にターボ装着すれば面白いと思う