アウディは電動車両、e-tornを2025年までに30%以上にするという意欲的な計画を持っている。そこで重要なのが、充電技術とバッテリーマネジメント技術。ドイツ・ベルリンで行なわれた技術セミナーを取材した。TEXT&PHOTO◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)FIGURE◎AUDI
EVの普及の鍵は航続距離 /充電インフラの整備/充電時間/価格の4要素
アウディ:新たな企業戦略で2025年に80万台の電動化モデルの販売を計画
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アウディに限らず、世界中の自動車メーカーは、電動化へ突き進んでいる。アウディも2025年までに電動化車両(EVとPHEV)e-tronの販売台数を30%以上にするという目標を掲げる。そこで重要になるのが、EVの航続距離、充電インフラの整備、充電時間の短縮、EVの価格である。航続距離と価格は、搭載するバッテリーの量と比例関係にある。バッテリーを積めば積むほど航続距離は伸びるが価格も上昇する。今回のe-tronは95kWhのバッテリーを積みWLTPで400kmという航続距離をもつ。当面は「400km」というのが、ひとつの指標となりそうだ。400km走れればたいていの場合、夜間に自宅ガレージで充電器に接続しておけば朝にはフル充電状態となるからだ。
アウディも、e-tronにおける充電機会の85%までは家庭で行なわれると想定している。標準となるのは最大11kW出力に対応するコンパクトチャージングシステムと呼ばれる交流(AC)充電だ。電源ケーブルは、230V・2.3kWの家庭用ケーブルと400V・11kWの三相ケーブルで、三相ケーブルを使った場合は、満充電まで8.5時間を要する。8.5時間は長すぎるとなると、オプションのコネクターチャージングシステムを用意する。これは最大22kWのAC充電ができ、満充電までの時間が4.5時間に短縮される。
欧州の街を見ると、クルマは自宅の前の道路脇に駐められていることが多い。どうやってEVを自宅で充電するのだろう?と思っていたら、コネクトチャージングシステムでは7.5m長のケーブルにPINコードでロックできる機構が付くという。なるほど。コネクトチャージングシステムのメリットは充電時間の短縮よりも、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)との連携だ。充電システムは家庭のWi-Fiネットワークを経由してHEMSに接続される。アウディは、SMAソーラーテクノロジー社とHagerグループをパートナーにして共同開発を進めている。
HEMSと組み合わせることで、バッテリー残量、移動予定を考慮しつつ、もっとも電気代の安い時間帯に充電を行なう。コネクトチャージングシステムは、あらかじめ設定しておけば、自宅にソーラー発電があれば、そこで発電された電力を優先的にe-tronの充電に充てることもできる。スマートフォン用のアプリmyAudiを使えば、充電の遠隔操作も乗車前の冷暖房の操作もできる。このあたりは、日産がリーフですでに実現している技術とも言えるが、これからEVの普及をスタートする欧州では新しい技術なのだろう。
HPC(High Power Charging)と呼ばれる高電圧DC充電=急速充電
さて、次はHPC(High Power Charging)と呼ばれる高電圧DC充電=急速充電だ。ご存知のように、高電圧急速充電の主な規格は、日本発のCHAdeMO、中国のGB/T、テスラのSC(スーパーチャージャー)、そして欧州のCCS(Combined Charging System)の4種類ある。e-tronはもちろんCCSを搭載する。CCSの特徴は、AC/DCをひとつの充電口で行なえることだ。CCSの現在のスタンダードは50kW。これだと満充電までに80分かかる。アウディが見据えているのはさらなる充電器の高出力化だ。そのために、アウディとポルシェを含むVWグループ、BMW、ダイムラー、フォードによるジョイントベンチャーで、「Ionity(アイオニティ)」を設立した。Ionityは、最大150kWで1カ所平均6基の充電ポイントを備えたステーションを今年中に約200箇所、20年末までにさらに200、合計400カ所のステーションを高速道路、幹線道路に120km間隔で設置する計画だ。
150kW(500V・400Aで最大150kW)のHPCだと、充電時間は30分以内に収まる計算だ。CCSは、将来的に350kW(800~1000V・400A)までの高出力化を狙っているようだが、技術的には可能でも実現できるかはわからない。350kWのHPDが実現すれば充電時間はわずか12分以内。ほぼガソリン給油並みとなるわけだ。ちなみに、日本発のCHAdeMO(急速充電器の数では現在圧倒的に世界一である)も、規格を150kWに改定している。
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