現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 世界を驚愕させたテクノロジーはその後どうなった?

ここから本文です

世界を驚愕させたテクノロジーはその後どうなった?

掲載 21
世界を驚愕させたテクノロジーはその後どうなった?

 常にイノベーションが生み出される自動車。革新的な新技術として登場し、現在はスタンダードになっているものも多いが、なかにはさまざまな理由で定着できずに終わってしまったテクノロジーもある。今回は、そうした悲劇のテクノロジーを振り返っていくことにしたい。いったい何がマズかったのか?

文/長谷川 敦、写真/マツダ、アウディ、日産、シトロエン、トヨタ、ポルシェ、FavCars.com、Newspress UK

世界を驚愕させたテクノロジーはその後どうなった?

マツダのみが実用化したロータリーエンジン。果たしてその未来は?

おむすび型のローターが特徴のロータリーエンジン。レシプロエンジンより優れた点も多かったが、燃費などの問題から主流のシステムにはなれなかった

 一時期はマツダの代名詞とも言える存在だったのがロータリーエンジンだ。ピストンの往復を回転運動に変換するレシプロエンジンとは違い、おむすび型のローターが回転して動力を生み出すロータリーエンジンは、マツダが世界で唯一完全実用化に成功し、数多くの市販車にも採用している。

 ロータリーエンジン自体の歴史は古く、実用化に向けて数多くの試みがあったが、1950年代にドイツ人技術者のフェリクス・ヴァンケルが完成させ、1957年にはドイツの自動車メーカー・NSUによって試作品が誕生している。

 NSUは1964年に世界初のロータリーエンジン搭載市販車のヴァンケル スパイダーを発売するものの、その完成度は低く、特にスパイダーに続いて販売されたRo 80ではトラブルが続出。販売成績も伸びずに、やがてNSUはアウディに吸収合併されることになる。

 ロータリーエンジンのメリットは、エンジン全体をコンパクトにできることやそれによる軽量化、振動の少なさや排気量あたりのパワーが大きいことなどが挙げられる。しかし、実用化までの技術的ハードルは高く、NSUに続くメーカーも完全実用化を成し遂げることはできなかった。

 そこで名乗りをあげたのが日本のマツダだった。独自の技術によって他メーカーとの差別化を狙ったマツダは、1961年の段階でNSU社とのロータリーエンジンに関するライセンス契約を締結して独自のロータリーエンジン開発に着手。さまざまな試行錯誤を重ねてついに量産と実用に耐えうるロータリーエンジンの開発に成功した。

 マツダ初のロータリーエンジン搭載市販車のコスモスポーツは1967年に販売が開始され、日本はもとより世界中にセンセーションを巻き起こした。これによって「ロータリーのマツダ」を確立し、以降はRX-7シリーズなど、数多くのロータリーエンジン搭載車を世に送り出すことになる。

 コンパクトかつ高出力のロータリーエンジンはスポーツカーに最適であり、実際にマツダの2&3代目RX-7は生産終了から20年近くが経過した現在でも高い人気を保っている。だが、そうしたマツダのロータリーエンジン搭載車の系統も2012年のRX-8販売終了をもって途絶えてしまっている。

 ロータリーエンジンには利点が多い反面、燃費の悪さやオイル消費量の多さなど、エコが重視される現代では致命的とも言える難点がある。これは構造に起因するところが大きく、マツダの技術力を持ってしても、レシプロエンジンに対する燃費面の不利などを覆すことができなかったのだ。

 こうして現在は市販のロータリーエンジン搭載車が存在していないが、実はロータリーエンジンには水素燃料との相性が良いなどの特徴もある。つまり、もしかするとロータリーが華麗なる復活を遂げる未来が待っているかもしれない。ロータリーエンジンのファンならば、その日が来ることを期待して待ちたい。

(編集部注/ロータリーエンジンは、純粋なスポーツエンジンとしてではなく、電動車のレンジエクステンダー用(発電用)として2023年頃の登場が期待されております)

エクスロイドCVTは繊細すぎたことで残念な結果に

エクストロイドCVTを搭載して1999年に登場した10代目日産 セドリック(Y34型)。新技術の旗手として期待されたが、2004年にはその歴史を終えている

 自動車の速度はエンジンの回転数とギヤチェンジによって調整される。現在の日本でメジャーなのは自動的にギヤチェンジを行うオートマチックトランスミッションだ。こちらはトルクコンバ―タ―という機構を使うシステムだが、無段階変速が可能なCVT(Continuously Variable Transmission)方式を採用したクルマも多い。

 “トルコン”式に比べてCVTでは変速時のショックがほぼなく、燃費が良いなどのメリットがあり、コストも抑えられるために軽自動車でも数多く用いられている。しかし、エンジンパワーが大きくなると効率が落ちるなどの問題もある。

 こうした問題を解決するために生み出されたのがエクストロイドCVTだった。

 1999年に日産が発売したセドリック&グロリアに採用されていたのがこのエクストロイドCVTで、従来のベルト式CVTとは異なり、ディスクとパワーローラーによって動力を伝達するのが特徴。

 それまでのCVTの弱点だった大排気量&高出力にも対応し、素早いレスポンスと滑らかで力強い加速を実現。さらに従来のオートマ車に比べて約10%の燃費向上も達成していた。

 ここまで見る限りでは理想的なトランスミッションに思えるエクストロイドCVTだが、現実はそううまくは運ばなかった。最初の問題は製造コストで、部品点数が多く複雑な構造になるエクストロイドCVTはどうしてもこの難点を解決できなかった。

 また、複雑ゆえにその取り扱いもデリケートであり、高価な専用オイルが必要なこと、そして故障の際に部品交換ができず、トランスミッションを載せ換えなくてはならないことなど、問題点は多かった。

 鳴り物入りで登場したエクストロイドCVTだったが、上記の問題は根が深く、結局2004年をもって生産を終了。予想外の短命に終わってしまった。

シトロエンの粘り腰もハイドロサスを残せず

1955年に史上初のハイドロニューマチック・サスペンション装備で登場したシトロエン DS。サスペンション機構に加えて斬新なフォルムも注目された

 伝統的な金属製スプリングではなく、液体とガスによって車体を支え、走行中のショックも吸収・減衰するのがハイドロニューマチック・サスペンションだ。スプリングに換えて空気を利用するエアサスとも異なるのは、液体の力も利用していること。

 ハイドロの略称でも知られるこの方式のサスペンションには、金属製スプリングでは得られない乗り心地の良さや、車高調整が簡単に行えるなどのメリットがあり、特に乗り心地に関しては「雲の上に乗っている」と表現されるほどの極上感があったという。これはオイル量を変化させて車高を一定に保つ能力があったから。

 このハイドロサスの開発を積極的に推し進めていたのがフランスのシトロエン。1955年には自社のDSにこのハイドロニューマチック・サスペンションを採用し、その後も改良を続けている。

 シトロエン DSのハイドロサスでは、高圧のオイルを使ってサスペンションを支えるが、このオイルはギヤのセレクターやクラッチ、パワーステアリングとブレーキにも活用される総合的なシステムになっていた。ある意味合理的なシステムではあったのだが、どうしても複雑になり、それに起因するトラブルもあった。

 スプリングとダンパー(ショックアブソーバー)によるシンプルなサスペンションはトラブルも起こしにくく、コストも抑えることができる。そしてこの伝統的なサスペンションでも、時代が進むに連れて改良が加えられ、乗り心地も改善されていった。

 もちろん、シトロエンでも自社のアイデンティティであるハイドロサスを電子化するなどして改良し、最終的にはハイドラクティブIIIプラスと呼ばれるシステムに進化させた。しかし、コストがかかり故障の可能性もそれなりに高かったハイドロサス搭載車は、2017年をもって生産が終了となり、シトロエンもこれ以上の開発・販売を行わないことを公表している。

 「雲の上に乗る」「魔法のじゅうたん」などと賛美され、ファンも多かったシトロエンのハイドロサスは、初登場以来60年以上に渡って販売が続けられていたが、エコ重視やEV化などの時代の流れには逆らえなかった。

リトラクタブルヘッドライトはスーパーカーの証?

国産車では1967年発売のトヨタ2000GTがいち早く採用したリトラクタブルライト。ライトオープン状態でカエルっぽい見た目になってしまうのは仕方がない?

 1970年代中盤に日本国内で巻き起こったスーパーカーブーム。当時の少年たちは、外国製超高性能スポーツカーの先進的なスタイルや高出力のパワーユニットに夢中になった。

 そんなスーパーカーのカッコ良さを象徴していたのが、通常走行時はボディ内に収納されていて空気抵抗を抑え、夜間になると立ち上がって照明となるリトラクタブル式ヘッドライトだった。

 ポルシェなどの一部のモデルを除いて、スーパーカーブームで人気を集めたクルマの多くにこのリトラクタブルヘッドライトが採用されていて、この人気はやがて超高級車だけでなく、より手の届きやすい国産スポーツカーにも波及していった。

 まずはマツダが2ドアスポーツのRX-7でリトラクタブルヘッドライトを採用すると、トヨタもセリカのハイグレードモデル・XXをリトラクタブルヘッドライト仕様にした。そして日産 シルビアやホンダ CRX、そしてトヨタのAE86トレノと、1980年代のスポーティなクルマはこぞってリトラクタブルヘッドライトを装備した。

 だが、特に収納時のスマート感は抜群だったリトラクタブルヘッドライトも、機構的に通常のライトより重くなり、コスト高を招くことに加えて、急な故障の際には夜間走行の安全性が低下するなどの問題があったのも事実。

 一部の地域ではヘッドライトの最低地上高規制があり、これをクリアするためにリトラクタブルヘッドライトを採用した例もあったが、この規制も緩和され、徐々にリトラクタブルヘッドライトを採用する必然性はなくなっていった。

 こうした流れによってリトラクタブルヘッドライトを装備するクルマの数は減少し、現在の新車ラインナップでリトラクタブルヘッドライトの採用例はない。スーパーカーブームを知っている世代にはさみしい限りだが、これもまた時代の必然なのかもしれない。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

スポーツ走行もツーリングだってイケちゃう! 守備範囲の広いミドルクラスの「スーパースポーツ」バイク3選
スポーツ走行もツーリングだってイケちゃう! 守備範囲の広いミドルクラスの「スーパースポーツ」バイク3選
VAGUE
[RX-7]と[510ブルーバード]を借りられる!? [オジサン]感激で嬉し涙が止まらねぇぇぇ
[RX-7]と[510ブルーバード]を借りられる!? [オジサン]感激で嬉し涙が止まらねぇぇぇ
ベストカーWeb
【ワールドプレミア】新型アウディA6アバント登場 アバントの歴史に新章
【ワールドプレミア】新型アウディA6アバント登場 アバントの歴史に新章
AUTOCAR JAPAN
ネオクラシックのスカイラインなど…クラシックカーフェスティバル in アグリパークゆめすぎと
ネオクラシックのスカイラインなど…クラシックカーフェスティバル in アグリパークゆめすぎと
レスポンス
【CG】ホンダ新型「フィット」!? 丸目ヘッドライトな「旧車デザイン」が超カッコイイ! 2026年にも全面刷新!?な予想CGをデザイナーが作製
【CG】ホンダ新型「フィット」!? 丸目ヘッドライトな「旧車デザイン」が超カッコイイ! 2026年にも全面刷新!?な予想CGをデザイナーが作製
くるまのニュース
BMW新型「2シリーズ グランクーペ」は528万円から…日本の道路事情にジャストサイズが嬉しい! ガソリンだけでなくディーゼルもあります
BMW新型「2シリーズ グランクーペ」は528万円から…日本の道路事情にジャストサイズが嬉しい! ガソリンだけでなくディーゼルもあります
Auto Messe Web
「安ウマ」で人気のホンダWR-Vがもっと「ウマ味」をプラス! 弱点だった「上質感」が加わってバカ売れ確実!!
「安ウマ」で人気のホンダWR-Vがもっと「ウマ味」をプラス! 弱点だった「上質感」が加わってバカ売れ確実!!
WEB CARTOP
アルピーヌF1、2026年に勝利&2027年タイトル争い!? 相談役のフラビオ・ブリアトーレが強気予想
アルピーヌF1、2026年に勝利&2027年タイトル争い!? 相談役のフラビオ・ブリアトーレが強気予想
motorsport.com 日本版
愛犬家必見! シュコダと獣医師の新たな研究で、犬は電気自動車を好むことが判明
愛犬家必見! シュコダと獣医師の新たな研究で、犬は電気自動車を好むことが判明
LE VOLANT CARSMEET WEB
ホンダ「ホーネット2.0」 最新モデルをインドで発表
ホンダ「ホーネット2.0」 最新モデルをインドで発表
バイクのニュース
国交省、新たな図柄ナンバー 十勝・日光・江戸川・安曇野・南信州 5月7日に交付開始
国交省、新たな図柄ナンバー 十勝・日光・江戸川・安曇野・南信州 5月7日に交付開始
日刊自動車新聞
革同等のプロテクション性能! OXFORD「スーパー ストレッチ ジーンズ」がクラウドファンディングに登場
革同等のプロテクション性能! OXFORD「スーパー ストレッチ ジーンズ」がクラウドファンディングに登場
バイクブロス
欧州 CO2規制を緩和、自動運転開発にテコ入れ 「今こそ行動起こすとき」
欧州 CO2規制を緩和、自動運転開発にテコ入れ 「今こそ行動起こすとき」
AUTOCAR JAPAN
【サウジアラビア】トヨタ最新型「クラウン“マジェスタ”」がスゴイ! 約840万円の334馬力「ハイパワーモデル」! 5年ぶり復活の「高性能仕様」どんなモデル?
【サウジアラビア】トヨタ最新型「クラウン“マジェスタ”」がスゴイ! 約840万円の334馬力「ハイパワーモデル」! 5年ぶり復活の「高性能仕様」どんなモデル?
くるまのニュース
新東名‐市街間の「ボトルネック」7日ついに解消! 大井川を渡る“静岡の大動脈”に橋を追加
新東名‐市街間の「ボトルネック」7日ついに解消! 大井川を渡る“静岡の大動脈”に橋を追加
乗りものニュース
標準装備を厳選して戦略的な価格を実現したメルセデス・ベンツGLC/GLCクーペのエントリーモデルが日本デビュー
標準装備を厳選して戦略的な価格を実現したメルセデス・ベンツGLC/GLCクーペのエントリーモデルが日本デビュー
カー・アンド・ドライバー
【2025年F1チーム別プレビュー/ウイリアムズ】2026年に集中も、サインツという資産を得て上昇は必至
【2025年F1チーム別プレビュー/ウイリアムズ】2026年に集中も、サインツという資産を得て上昇は必至
AUTOSPORT web
VW、小型EV『ID. EVERY1』を2027年に市販へ…価格は2万ユーロから
VW、小型EV『ID. EVERY1』を2027年に市販へ…価格は2万ユーロから
レスポンス

みんなのコメント

21件
  • リトラクタブルライトが世界を驚愕させたテクノロジー?
  • そんなことより、ベストカーは、新型〇〇をスクープ!って流したデマ記事のその後はどうなったか伝えろよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

263 . 0万円 325 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

26 . 0万円 478 . 0万円

中古車を検索
マツダ RX-8の買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

263 . 0万円 325 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

26 . 0万円 478 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村