ETC2.0だけの割引サービスも存在
高速道路など有料道路での支払いにETCを利用していないというドライバーは、いまや超少数派だ。国土交通省の発表によると、高速道路におけるETCの利用率は、直近で93%を超えている。
警戒すべきは盗難じゃない! ETCの挿しっぱなしが危険な理由とは
料金ゲートで停止することなく、安全のために減速するだけで支払いができるのだから、その利便性を一度味わってしまうと、ETC車載器のコストを負担してでもETCを利用する価値があると考えるユーザーが多いのも納得だ。
まして、一部の有料道路ではETCを利用することで割安になる料金体系だったりする。東京周辺のドライバーにとっては、首都高を利用する際にETCであれば距離制となるが、現金払いの場合は最大料金を負担しなければならない。また神奈川県と千葉県を結ぶ東京湾アクアラインの通行料はETC利用によって大幅割引になる。こうした料金制度は、ETCを導入するインセンティブになっている。
では、2016年4月に始まった「ETC2.0」の普及状況はどうなっているのだろうか。
まず結論的に数字を言おう。前述した国土交通省の発表データによるとETC2.0利用率は26.5%となっている。高速道路を走るクルマの4台に1台がETC2.0にて料金を支払っているというわけだ。
そもそもETCとETC2.0は何が違うのか。単純化すると、前者の機能は料金支払いだけに限定されているが、ETC2.0は双方向通信によってITSスポットサービスなどが提供する情報サービスを利用できるようになっている。
これによって最大1000km先の情報を得ることができ、その情報に基づいた「渋滞回避支援(ダイナミックルートガイダンス)」が可能になっているというのは公式にいわれるメリットだ。ただし、これについてはテレマティクスを利用したカーナビであれば同等のサービスを享受できるという見方もある。
またETC2.0だけの割引サービスも存在する。ふたたび関東圏だけの話で恐縮だが、関東地方の環状的につなぐ「圏央道」についてはETC2.0を利用することで割引料金が適用される。たとえば、普通車で松尾横芝・木更津東の59.0kmの区間を走った場合、ETC2.0では1750円の支払いで済むが、ETC2.0以外では2070円となってしまうのだ。
高い比率でETC2.0の普及が進んでいるといえる
そのほか、通常は高速道路を降りると次に乗ったときに初乗り料金が必要となるが、いまETC2.0を使った「賢い料金」という一時退出・再進入の社会実験がおこなわれている。これは対象のインターチェンジで降りて、対象の道の駅に立ち寄り、ふたたび対象のインターチェンジから高速道路に乗ることで、初乗り分の加算を受けずに済むというもの。とはいえ、対象となっている道の駅は全国で23か所しかなく、現時点ではその恩恵を受けられるドライバーは限られる。
いずれにしても、日常的にETC2.0限定の料金サービスを受ける状況になければ、あえてETC2.0車載器を導入するインセンティブにはならないだろう。実際、ETCよりETC2.0は高価だからだ。
では、ETC2.0を選ぶユーザーは増えているのだろうか。
ITSサービス高度化機構の発表している統計によると、2021年6月時点でのETCの累計セットアップ件数は1億498万4281件で、うちETC2.0は843万1513件でしかない。
ちなみに、この数字にはクルマのオーナーが変わったときの再セットアップも含んでおり、約659万台のETC2.0車載器が世の中に存在しているという。この数字からは、ETC2.0は少数派に思えるが、さにあらずだ。
2021年6月における新規のETCセットアップを見ると、全体として48万9782件のうちETC2.0は14万5222件となっている。おおよそ3人に一人がETC2.0を選んでいるのだ。
このあたり、ユーザーが積極的にETC2.0を選んでいるといよりも、多くの新型車においてETC2.0車載器が標準装備されていることも影響しているのだろう。それにしても意外に高い比率でETC2.0の普及が進んでいると感じさせられる数字だ。
というわけで、タイトルに記した「ETC2.0は成功している」かどうかについてだが、少なくとも新規セットアップ件数や利用率の数字から見ると順調に普及しているといえそうだ。
当初、ETC2.0は渋滞を回避するルートを選んだことで料金を下げるようなサービスも実施する計画だった。交通量をコントロールするような制度とサービスにより、もっとETC2.0を選びたくなるような仕組みに進化することを期待したい。
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みんなのコメント
ウリだった映像表示も殆ど使われていない。機能はあってもちゃんと運用されていなければ意味がない。