数値だけでは語れない良好な走りと使い勝手
フォルクスワーゲン(VW)『ポロ』が9年振りのフルモデルチェンジで6代目へと進化。VWが進めるモジュール『MQB』の採用で、コンパクトカーでありながら上級モデルが採用する先進安全装備を標準装備。 しかし、ボディサイズは全幅が1730mmと日本の規格では3ナンバー。エンジンは、従来の1.2リットル直列4気筒から1リットル直列3気筒へとダウンサイジング。しかし、従来エンジンより、パワーは5ps、トルクが75Nm(1.6kg-m)アップしている。 毎度のことながら数値だけで判断してはいけない、VWらしい魅力がミッチリと詰め込まれている一台だ。
VW「パサート」にTDI追加!ディーゼルとは思わせない軽快感
新型『ポロ』のボディサイズは全長×全幅×全高()内は先代モデル比=4060(+65)×1750(+65)×1450(-10)mm。ホイールベースは2550(+80)mm。 全幅が1700mmを超えているため確かに日本のナンバーの規格では3ナンバーとなる。しかし、全長やホイールベースはトヨタ・アクアと同じ。決して「大きくなってしまったな~」と言うほどのサイズアップではない。
むしろ全幅が広がったことで助手席に乗るパッセンジャーとの距離感に余裕が生まれ、小さなクルマに乗っている窮屈さはまったくなくなっている。 なにより水平基調のデザインを採用するインテリアは、華美な演出はされていないが質感が大幅にアップ。手が触れるステアリングやシフトレバーは本革が採用され、しっくりと手に馴染む。
もし、5ナンバーサイズにこだわるのであれば、ポロの弟分に当たる『up!』を選べばいい。じつに潔く無駄をそぎ落とした内外装と、高速走行も難なくこなせる走行安定性など「さすがドイツ車」と思わせるコンパクトカーだ。
話を新型『ポロ』に戻そう。搭載エンジンは1リットル直列3気筒ターボ。先代モデルは1.2リットル直列4気筒ターボだったから、実質的なダウンサイジングだ。 排気量と気筒(シリンダー)数が少なくなってはいるが、パワーは5ps、トルクが75Nm(1.6kg-m)アップ。これに7速DSG(乾式ツインクラッチAT)を組み合わせる。
今回の試乗は、山間部の比較的大きなカーブが多い道が中心で、長い上り坂などもあり、ポロのパフォーマンスを確認するにはピッタリなコースだった。
走り出すまでは、3気筒エンジンがエンジン音やフィーリングの質感を落としてしまっているのでは?という懸念もあった。 しかし、アクセルペダルを大きく踏み込まず2500rpmくらいで走行していると、先代モデルと同様な質感の高い走行フィールを示す。少しシフトアップするタイミングが早いように感じるが、決して加速が鈍るなど不快感はない。むしろ燃費効率の良さそうな回転域をキープしていると感じられる。
長い上り坂では、シフトレバーをマニュアルモードにしてエンジンの回転を高めてみた。 さすがに4000rpmを超えると3気筒エンジンと感じるエンジンサウンドとなるが、回転フィールは至ってスムースで、しかも力感もある出力特性なので心地良い。 信号待ちなどではエンジンマウントが硬いからなのか、若干エンジンの振動を感じさせる。だが、走り出してしまえばまったく問題なし。 3気筒とか1リットルにダウンサイジングは、まったくネガティブな部分は持っていない。
それ以上に注目したいのがボディ剛性の高さだ。路面の段差を通過しても、しなやかなサスペンションと強靱なボディによって、見事にいなしてしまう。 また、高速道路ではコンパクトカーに乗っているとは思えないほどの直進安定性を示してくれた。
ステアリングは、後に試乗した市街地ではかなり軽めだが、カーブの多い山道では節度感があり心強い。カーブなどでステアリングの操舵したとき、タイヤの向きがはっきりと伝わってくる。このあたりは、国産車とは一線を画するところだ。
試乗時に「ぜひ後席にも座ってください」といことだったのでチェック! ホイールベースが先代モデルより80mm延長されていることもあるが、その数値以上に広く感じる。これはシートの座面とシートバックの角度の良さもあるだろう。
実はシートバックの角度調整が付いていても、腰などの負担が少ない角度は意外にも限られている。さらに室内が狭く見えてしまうが、座面長に余裕があるとヒザの裏側がシートで支持されて疲れにくいのだ。 ちなみに前席はシートバックが大きく、背中や肩、腰椎まわりをしっかりサポートする。
シートのどこか一点に体重が集中することもなく、全体で身体を支持してくれるので、長距離走行をしたときの疲労度は間違いなく低いだろう。
ラゲッジルームは先代モデルより71リットル拡大されて351リットルを確保。リヤシートは6対4分割可倒式なので、長尺モノを積載するときも便利だ。これはボディサイズの拡大化のメリットのひとつ。
そもそも全長は4060mmと十分にコンパクト。全幅は1750mmと大きくなっているが、VW車の特徴でもある視界の広さもあって、そのサイズアップ感はまったく感じられなかった。
MQB(モジュラー トランスバース マトリック)をベースにしたことで、上級モデルで採用するプリクラッシュブレーキシステム(歩行者検知対応シティエマージョンシーブレーキ機能)などを標準装備。自動的にステアリングを操作してドライバーの駐車をサポートする「駐車支援システム」なども採用されている。
このように、小さなボディには先進の技術と熟成された乗り味が凝縮されている。さすが今年のニューヨークモーターショーで「アーバン・カー・オブ・ザ・イヤー」を授賞しただけの実力を持つクルマだといえるだろう。
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