2019年9月、トヨタはカローラ(セダン)、カローラ ツーリング(旧ワゴン)をフルモデルチェンジ、大々的な発表会を行った。
キープコンセプトだ! いや、原点回帰というべきか? 1966年10月デビュー初代カローラから数えて実に約半世紀、12代目となる新型カローラを見て、直感的にそう確信する。
【一代の間に一体何が】 変わりすぎてわからない フルモデルチェンジお前誰選手権
カローラセダンとしては初めて全幅が1700mmを超える1745mmとなり、3ナンバーとなったのに、なにがキープコンセプトなのか? と思う人もいるかもしれない。
だが、「アクシオ」、「フィールダー」といったサブネームを廃し『カローラ』というネーミングに戻されたことからもわかるように、12代目カローラは『カローラ』というクルマの基本コンセプトに立ち返り、カローラとはどのようなクルマなのかを徹底的に考え抜いて作り上げられた、真の意味での「キープコンセプト」といっていい。
そんな12代目カローラとはどんなクルマなのか!? 徹底的に解剖しよう。
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※本稿は2019年9月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年10月26日号
■最新のトヨタセーフティセンスを全車に標準装備
「カローラという車名はトヨタ自動車にとってとても大切な存在です。新型を開発するにあたり、カローラとはどういうクルマであるべきなのかを徹底的に考え抜きました」
開発を担当した上田泰史ミッドサイズビークルカンパニーチーフエンジニアは言う。
開発をリードした上田泰史チーフエンジニア。『カローラ』というネーミングをしっかりと今後に繋げていくためのクルマとは!? をじっくりと考えて開発したという
1966年以来のカローラのネーミングを変更する論議などはいっさいなく、むしろ2代前から付けられた「アクシオ」というサブネームを廃止。
セダンはシンプルに「カローラ」、ワゴンは「フィールダー」ではなく「カローラツーリング」として、よりカローラの存在感を高めている。
1966年に初代が登場してから53年が経過し、54年目となったカローラの歴史。時代時代に合わせてレビンやFX、スパシオやランクスなどの派生モデルを生み出しながら、その基本となるセダンはしっかりと継続され、今回のモデルチェンジで12代目となった。セダンでは「アクシオ」のサブネームは外れた
先代型ではヴィッツなどと同じBプラットフォームを採用したカローラだったが、今回はグローバルモデルと共通のCプラットフォームを採用することで、ワンランク上のシャシー性能を追求した。
ただし、日本仕様はホイールベース2700mmではなく、先に登場したカローラスポーツと同じ2640mmとすることで、日本国内で使いやすいボディサイズとしている。
全幅1745mmは30型プリウスの全幅と同じで、大きさを感じることはないはずだ。
全長はワゴンと同じ4495mmのセダン。北米や中国で販売されるセダンとはホイールベースも違うしボディ外板も専用設計
これまでの「フィールダー」というネーミングはなくなり、「カローラツーリング」となったワゴン。全長は4495mmとなる
■TNGAプラットフォームをさらに進化させ乗り心地も操安性能も向上
新たなCセグプラットフォームをベースに開発された新型カローラ。このプラットフォームはプリウスから採用されたTNGAで、ホイールベースは2700mmと、短い2640mmバージョンがある。
プリウスは2700mmでC-HRやカローラスポーツは2640mmだ。また、欧州向けのカローラツーリングや北米向けのカローラセダンなどでは2700mmを採用する。
手前からワゴンの「ツーリング」、セダン、そして一番奥の赤いボディが5ドアHBの「スポーツ」だ。スポーツは昨年6月に先行してデビューしていたが、今回のセダン/ワゴンフルモデルチェンジに合わせて一部改良を実施してサスチューニングを進化させた
今回登場した国内向け新型カローラは、簡単にいってしまえば昨年6月に先行して登場した5ドアハッチバックの『カローラスポーツ』のセダン版、ステーションワゴン版ということになる。
ホイールベースやエンジン搭載位置、前後シート位置関係などのパッケージングはカローラスポーツと同じなのだが、全幅は1790mmのスポーツに対しセダン/ワゴンは1745mmと45mm幅狭ボディとなっている。
これまでのカローラのイメージとはガラリ一新したスポーティ感覚のインテリア。基本的な造形はセダン/ワゴン共通だ
これはもちろん国内での使い勝手を考慮したためだ。外板で輸出仕様と共通なのはエンジンフードとワゴンのテールゲートだけで、前後フェンダーやドアパネルなどはすべて国内向けの専用設計となっている。
セダン/ワゴンともに5ドアHBと室内パッケージングは共通。乗降時の足の出し入れはシルが高いことに加え、開口幅がやや狭く足先を引っかけやすい。セダンの頭上はラウンドしたルーフが若干気になる
「全幅1745mmというのは、実は先代型プリウスと同じです。3代目プリウスは国内でも多くのお客様にご高評をいただきました。この全幅1745mmであれば、それほど大きさを感じることなく使っていただけると考えました」と上田CEは説明する。
エンジンは1.8L MA、1.8Lハイブリッド、1.2Lターボの3タイプを用意。セダン/ワゴンともに1.2Lターボエンジンモデルが設定されるが、CVTの設定はなく6MTのみとなる
■日常の使い勝手で「大きさ」を感じさせない工夫
さらに『大きさ感』を感じさせないために細部にまで手が入っている。
ドアミラーはステーの取り付け位置を16mm上方に移動し、左右の出っ張り自体を17mm内側に減らしている。
上の写真の白いボディはセダン、赤いボディはスポーツだドアミラーの取り付け位置を見比べていただきたい。ステーの位置がセダンのほうがやや上方にあることがわかるだろう。
上下の写真を見ていただくとわかりやすいが、赤いボディのカローラスポーツと白いボディのカローラセダンでは、ドアミラーと窓枠との距離が異なっていることがわかるだろう。
また、狭い駐車スペースでの乗り降り時のことを考慮して、前席ドアのドアトリム、特にアームレスト部分の張り出しを抑えることで、身体を斜めにして乗り降りするような場面での引っかかりを減らしているのだ。
これもカローラスポーツの写真と比較していただきたい。
ミラーと窓枠の距離はセダンのほうが接近しており、ミラー本体の張り出し料が小さいことがわかる。また右側写真ではドアトリムのアームレストの張り出しの大きさが比較できる。セダンのほうが小さい
■目線移動を減らすサスチューニングで操安性向上
今回新たに取り組んだシャシーチューニングの考え方として「ドライバーが予測できる動きにクルマの挙動を制御する」というものがある。
つまり、視界や車両操作からドライバーは「この先クルマはこう動く」と予測しながら運転しているが、その予測に沿った動きをさせることで安定した操作性を実現させるとともに、乗り心地もよく感じるようになるという。
国内向けカローラシリーズはセダン/ワゴン/5ドアHBともに新世代TNGAプラットフォームのホイールベース2640mmバージョンを採用。シャシーチューニングは世代ごとに進化し、最新のカローラでは乗り心地も操安性もさらに向上している
そのための重要な要素のひとつとなるのがドライバーの視線移動だという。走行中の揺れに対して視線移動の量を小さくしてやることで、ドライバーはクルマの挙動が安定しているように体感することがわかった。
新型カローラはドライバーの視線移動の減少を狙ったサスチューニングをすることで、感覚にマッチした操縦性、乗り心地を実現しているということだ。
かぎられたコース内での短い試乗だったが、確かに路面のうねりやマンホールの突起などを乗り越した際に頭が上下左右に振られるような動きは少なく、乗り心地のよさを実感した。
このサスチューニングは、カローラスポーツも今回同時に一部改良され盛り込まれている。具体的には、従来型に対しリアバネ/ダンパーは動かす方向にしながら、スタビを強くしてロール方向の動きを抑えているという。
カローラ、特にセダンの中心ユーザー層は現在70歳代だという。上田CEは、「これまでのユーザーにはもちろんですが、30~40歳代のドライバーにもカローラのよさを知っていただきたい」と、カローラの若返りを力説する。
■新型カローラシャシーチューニングのポイント
・ドライバーの目線移動に着目して、目線移動の少ないサスペンションチューニングを実施
・リアのバネ、ダンパーを動かす方向でチューニング。一方スタビは硬くしてロールは抑える
・ドライバーが予測できるクルマの動き方となるようなシャシーチューニングとした
■コネクティッドはますます進化! LINEカーナビで音声操作
新型カローラでは全モデル全グレードでディスプレイオーディオを標準装備している。スマホと連携させることで地図アプリや音楽などを聴くことができる。
これに合わせてトヨタとLINEが連携して「LINEカーナビ」を開発。すでに9月5日より無料で提供が開始されている。
トヨタのナビエンジンを搭載し、音声認識AIアシスタント「Clova」との連携により、音声入力でさまざまな操作が可能となる。
カーナビの目的地設定を音声入力できるほか、例えば運転中に音声入力でLINEを送ることができたり、お気に入りの音楽をカーオーディオでかけたりすることが可能。アプリは無料で提供されている
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