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アルファロメオ8Cスパイダーは、期待どおりに優美で官能的だった【10年ひと昔の新車】

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アルファロメオ8Cスパイダーは、期待どおりに優美で官能的だった【10年ひと昔の新車】

2009年、コンセプトカー発表から4年、ついにアルファロメオ 8Cコンペティツィオーネのオープンモデル「8Cスパイダー」が登場した。生産台数は8Cコンペティツィオーネ同様、わずか500台。正式発表前から世界各国で争奪戦が繰り広げられたのも記憶に新しい。ここでは生産開始されて間もなく行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年10月号より)

戦前のアルファロメオにも、クーペと対をなすオープンスポーツがあった
美しきロードスター。ブランドの歴史を辿れば、オープンモデルこそ、アルファロメオのスポーツ性を語るに相応しい存在であるのかもしれない。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

戦前のアルファロメオには、優美なグランツーリズモのクーペと対をなして、よりコンペティティブな世界で戦ったオープンスポーツ=グランプリマシンがあった。

いずれにも、6C(セイ・チ)や8C(オット・チ)といったネーミングが使われている。数字はシリンダーの数を、Cはイタリア語でチリンドリ(シリンダー)を示すものだ。

現代によみがえった8Cにも、このたび、クーペのコンペティツィオーネに続いて、オープンのスパイダーが設定されることに。もっとも、戦前のようにオープンモデルの方がよりレーシー、というわけにはさすがにいかないのだけれど……。

クーペモデルの市販化が正式にアナウンスされる前に、8Cスパイダーのコンセプトカーは登場していた。順を追って説明しておくと、2003年秋に8Cコンペティツィオーネの、2005年夏に同スパイダーのコンセプトカーがそれぞれ発表され、2006年秋のパリ国際モーターショーにて前者が正式にデビューし、2007年秋に生産開始。そして2009年春のジュネーブ国際モーターショーにおいて、8Cスパイダーの市販モデルが発表されている。

クーペモデルと同様に、世界限定500台。日本市場への割当ては70台前後とされているが、ほぼ完売で残り枠はわずかということだ。

エレガントなスタイルを生み出すために、ソフトトップを採用
モデル概要を振り返っておく。フェラーリ/マセラティ製4.7L V8+トランスアクスルの2ペダルロボタイズドミッションというパワートレーンや基本的なシャシデザインなど、主要メカニズムはクーペとまったく同じと言っていい。

ただし、オープン化に伴って燃料タンクの位置を前方に50cmずらした他、当然ながらコイル/ダンパーのセッティング変更(バネは硬く、ダンパーは柔らかく)やフロア強化(ストラットタワーバーやクロスバー、ブレースの追加など)を実施している。また、ブレンボ製CCM(カーボンコンポジットマテリアル)ブレーキを標準とした点も目新しい。

リトラクタブルルーフ全盛の時代にあって、クーペと変わらぬ運動性能とスタイルのエレガントさを保つために、あえてソフトトップをチョイス。ラッチの解除と左右のトノカバー装着は手動という半電動タイプだ。ダッシュボードセンターに配されたスイッチを使って開閉するが、トノカバーの設置を除いた開閉時間は、およそ7~9秒である。

カーボンとアルミニウム、レザーで構成されたインテリアも、前を向いて座っているかぎりクーペとまったく同じ。当然ながらシート背後のスペースはつぶされており、代わりにリッド付きのトランクがある。もっとも、それほどの容量はなく、実用性という意味ではクーペに相当劣っている。デザイン重視、パフォーマンス重視のオープンスポーツであることが、そのことからもわかるだろう。

ドライバーを包み込むような、官能的サウンドが味わえる
新色パールホワイトの試乗車にはオプションのカーボンパッケージが奢られていた。今となってはちょっと古めかしいキーをシリンダーに差し込み、捻る。スターターボタンを押すと、迫力のサウンドで目覚める。オープンにしているため、クーペよりいっそう刺激的に聞こえた。

走り出す前にスポーツボタンを押す。マフラーのフラップが開き、サウンドがさらに野太さを増す。音に併せて、V8エンジンの鼓動がドライバーに伝わってくるようだ。

Aボタンを押してマニュアルモードに切り替え、右手でカーボンパドルシフト(標準はアルミニウム)を手前に引き、1速に。走り出した瞬間、クーペに比べると路面からの当たりが多少柔らかいかな、と思ったものの、相変わらず硬派な乗り心地である。フェラーリ・カリフォルニアと比べてもハードだ。

数字上、加速タイムはクーペより劣ることになっているが、オープンにして走れば、その差異など誤差の範囲。4500rpmを超えたあたりからの官能的なサウンドは市販車随一と言っていいだろう。

ハンドリングでもクーペゆずりのリアルスポーツぶりを見せつけた。やや扱いやすくは感じるものの、基本的にはビッグパワーのFRリアルスポーツだ。

荷重移動を正確に感じ取りながらノーズをきれいに内向かせ、あせらず騒がずクルマの姿勢が出口を向いた刹那、V8サウンドを全開に轟かせる。そのコーナリングひとつひとつが、ストレスを発散させてくれる。クルマ好きにとって、極上のオーディオルームのようだ。(文:西川 淳)

アルファロメオ 8C スパイダー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4381×1894×1370mm
●ホイールベース:2645mm
●車両重量:1675kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4691cc
●最高出力:331kW(450ps)/7000rpm
●最大トルク:480Nm/4750rpm
●トランスミッション:6速AMT
●駆動方式:FR
●タイヤサイズ:前245/35R20、後285/35R20
●0→100km/h加速:4.5秒
●最高速:292km/h 
※EU準拠

[ アルバム : アルファロメオ 8C スパイダー はオリジナルサイトでご覧ください ]

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