日本の自動車メーカーで唯一チャンネル制にこだわってきたトヨタだが、2020年5月から、全店全車扱いに切り替えた。トヨタが中核である販売を大きく刷新したのは大きなニュースだった。
全店全車扱いになると、販売チャンネル向けに競っていていた兄弟車、姉妹車というのが不要となってくるのは明らかで、トヨタは商用車から着手して、乗用系モデルでも車種整理に着手している。
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2Lクラスミニバンは熾烈なカテゴリーで、トヨタはヴォクシー/ノア/エスクァイアというキャラクターの違う3車をラインナップしているが、全店全車扱いになってその販売動向はどうなっているのか?
車種整理の嵐のなか、どのモデルが残るのか? ということについて渡辺陽一郎氏が考察する。
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】まさにサバイバル!! ヴォクシー/ノア/エスクァイアで生き残るのはどれだ?
タンク売れていたにもかかわらずルーミーに統合
タンク、ルーミーとも販売好調だったが、2020年9月のマイチェンでタンクはルーミーに統合されるかたちで消滅してしまった
トヨタは、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード&ヴェルファイアなどの姉妹車を用意するが、今後は統合される可能性が高い。
2020年5月から、東京地区に続いて、ほかの地域でも全店が全車を売る体制に移行したからだ。
販売面で苦戦していたプレミオ&アリオンは2021年3月に生産終了となることが正式にアナウンスされた。
もともと姉妹車は、トヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店という系列ごとに商品をそろえる目的で用意されていた。販売系列が残されても全店が全車を扱うなら、もはや姉妹車を用意する必要はない。
そこでルーミー&タンクは、マイナーチェンジでタンクを削り、今はルーミーのみになった。商用車のハイエースにも、以前は姉妹車のレジアスエースが用意されていたが、廃止されてハイエースのみに絞られた。
ハイエースの兄弟車のレジアスエースはネッツ店の専売車種だったが、2020年4月のハイエースの一部改良を機に統合され消滅した
売れなくなったヴェルファイアが消滅候補
先代モデルではちょっと悪そうな雰囲気とシャープなエクステリアでアルファードを凌駕する人気となったヴェルファイアだが、全店全車扱いを機に販売は激減
現存する姉妹車で、全店が全車を扱う体制になって売れ行きが大きく変わったのは、アルファード&ヴェルファイアだ。従来型はヴェルファイアの売れ行きが好調で、現行型にフルモデルチェンジされた時点でも、同様の売れ方だった。
それが2017年12月のマイナーチェンジで逆転した。アルファードのフロントマスクがさらに派手になり、登録台数でヴェルファイアを上回った。
それでも2020年1~4月の時点では、両車の販売比率はアルファード:75%、ヴェルファイア:25%くらいだ。ネッツトヨタ店がヴェルファイアの販売に専念して、相応の台数を売っていた。
しかし2020年5月以降は、今までこの2車種を販売していなかったトヨタ店とトヨタカローラ店でも、アルファードが売れ始めた。さらにネッツトヨタ店でも、ヴェルファイアからアルファードへの乗り替えが見られるようになった。
その結果、2020年9~11月には、アルファードの登録台数が1カ月当たり1万台を上回り、販売比率もアルファード:89%、ヴェルファイア:11%に広がった。全店が全車を扱う体制に移行して販売格差が拡大され、アルファードが圧倒的多数を占める。
こうなると次のマイナーチェンジなどで、ヴェルファイアが廃止される可能性もある。トヨタが全店/全車扱いに踏み切った背景には、リストラすべき車種を浮き彫りにすることも含まれているからだ。
次期アルファードは2022年にフルモデルチェンジ予定。消滅するヴェルファイアの受け皿として、エアロモデルのカスタムを設定する可能性が高い。画像は予想CG
ヴォクシー/ノア/エスクァイアの販売も変動
左からヴォクシー、ノア、エスクァイアで、見てのとおりフロントマスクで差別化されている。それぞれが個性を発揮している
それならミドルサイズのヴォクシー/ノア/エスクァイアはどうか。この売れ方は、アルファード&ヴェルファイアほど極端ではない。2020年9~11月を見ると、ヴォクシー:53%、ノア:36%、エスクァイア:11%だ。
全店が全車を扱う前の2020年1~4月は、ヴォクシー:47%、ノア:29%、エスクァイア:24%であった。
全店が全車を扱うようになり、ヴォクシーは少し増えて、ノアはさらに増加した。そのぶんだけエスクァイアが減っている。アルファード&ヴェルファイアほどではないが、ヴォクシー系3姉妹車の販売比率にも変動が生じた。
エスクァイアの販売が減った理由
ノアが販売増となっているのは、ヴォクシーの標準ボディの消滅により、250万円台で買えるエントリーモデルが売れていることが大きい
なぜエスクァイアが減ってノアが増えたのか。以前は3姉妹車の中でエスクァイアのみを扱っていたトヨタ店に、今の3姉妹車の売れ方について尋ねた。
「以前はヴォクシーとノアは扱わず、エスクァイアのみを販売していました。エスクァイアは内装が上質で、クラウンを扱うトヨタ店のイメージに合っています。その代わり価格も少し高いです。ノーマルエンジンの売れ筋グレード(Gi)は約300万円で、ハイブリッドは340万円弱です。エスクァイアにエアロパーツは装着されていませんが、価格はヴォクシーのエアロ仕様やセレナのハイウェイスターと同等です」
インテリアは3モデルとも基本的な部分は同じだが、エスクァイアは高級志向のため、シートカラー、素材にこだわり差別化。しかしそのぶん高価になる
ノア、ヴォクシーについては、以下のようにコメントしてくれた。
「ノアの標準ボディは価格が安く、250万円台から選べます。そのために今は、スポーティなエアロ仕様ならヴォクシー、安い標準ボディはノア、高級感を求めるお客様にはエスクァイアという売り方になりました。ニーズに応じて3車種を使い分けるようになり、エスクァイアは減りました」
ちなみに今ではヴォクシーの標準ボディは廃止され、エアロパーツを装着したZSのみになる。それでもミニバンではエアロ仕様が人気だから、ヴォクシーは3姉妹車の販売総数の内で53%を占める。
逆に高級指向のエスクァイアは、ニーズが少ないため、全店が全車を扱う体制になって10%まで減った。
ヴォクシーは2017年のマイチェン時には3ナンバーのエアロボディ(左)と5ナンバーの標準ボディ(右)の両方をラインナップしていたが、現在はエアロのみ
リセールバリューの高いモデルをユーザーに推奨
ネッツトヨタ店からは、数年後に売却する時の査定額に関する話を聞けた。
「ミニバンでは、グレードによってリセールバリューがかなり違います。エアロ仕様で、外装色がブラックかホワイトパールなら、高値で売りやすいです。そこでお客様にも、ヴォクシーのブラックかホワイトパールを推奨しています。安さを重視するならノアの標準ボディですが、外装色はやはりブラックかホワイトです」
ヴォクシーは濃色のボディカラーが人気で、ブラックを選ぶ人は多い。リセールバリューが高いというメリットがある
販売店としては、リセールバリューの高い仕様を売ると、数年後に高値で売却できるために乗り替えを促しやすい。
「今なら120万円で買い取れるので、130万円をご用意いただければ新型に乗り替えられます」
という具合だ。そこでリセールバリューを重視すると、まずはヴォクシーZS、次いでノアSiを推奨する。
逆に安さを重視するユーザーに対しては、ヴォクシーが標準ボディを廃止したから必然的にノアXになる。高級指向のエスクァイアは選ばれにくい。
エスクァイアは車両価格がほかの2台よりも高いことでユーザーが敬遠。全店全車の場合扱、売れるクルマにセールスパワーが集中し、負のスパイラルとなる
選べる自由があるのがトヨタの魅力
このような売れ方を見ると「最後まで生き残るのはヴォクシーか?」と思うが、ノアも全店が全車を扱うようになり、3姉妹車中の販売比率を36%に高めた。
ノアの発祥は、1990年代のタウンエースノア&ライトエースノアに遡るから、トヨタのミニバンの本流でもある。エアロ専用のヴォクシーと併せて、標準ボディを選べるノアも残すだろう。
エスクァイアは販売動向会らもリストラの対象となる可能性が高いが、高級志向ゆえアルファードからのダウンサイズユーザーの受け皿となりうる
エスクァイアは10%だから廃止される可能性も高いが「小さな高級車」的な独特の雰囲気もある。乗り心地や静粛性を改善すれば、アルファードからダウンサイジングするユーザーに選ばれることも可能だろう。
このようにヴォクシー系3姉妹車の世界観は、アルファードとヴェルファイアに比べると、各車種の個性が際立っている。
今後も3車種をそろえて発展してほしい。トヨタの魅力は、車種数が豊富で、選べる自由が得られることにもあるからだ。
次期モデルではヴォクシーが3ナンバー専用ボディ、ノアが5ナンバーサイズとすみ分けると言われている。ともにエアロのカスタムを設定。画像は予想CG
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同義語じゃないの?
やっぱり・・・・・・