「カワサキメグロ製作所」倒産後、カワサキ明石工場で生産されたメグロ
大正13年(1924年)に操業を開始した目黒製作所。戦前から純国産の500cc単気筒エンジンを搭載した二輪車を生産し「国産大型車の名門」といえる存在だった。
戦後は500cc単気筒だけでなく、125cc単気筒、250cc単気筒などを展開。
昭和35年(1960年)には500cc並列2気筒の高性能車「スタミナ」を送り出すが、同年に川崎航空機工業と業務提携を行う。50ccはカワサキに集約、125cc以上をカワサキとメグロの販売網で販売することとなった。
【画像15点】カワサキが造ったメグロ「250メグロSG」を貴重な1965年当時写真で解説!
しかし、徐々に目黒製作所は業績が悪化。昭和37年(1962年)にはカワサキが資本提供を行いカワサキメグロ製作所と社名を変更しつつ立て直しを図るが、1964年に倒産となってしまう。その後、カワサキがメグロのブランドを引き継ぎ、メグロの車両の生産も行っていく。
そんなカワサキが生産したメグロの1台が250ccの「250メグロSG」だ。目黒製作所時代の車両からは一部改良が行われていたが、当時の評価はどうだったのだろうか?
『モーターサイクリスト1965年4月号』のテスト記事を以下に紹介する。
メグロの伝統を受け継いだSG
試乗レポート●大久保 力
オーソドックスな実用車として独自の行き方をするメグロが川崎航空機の傘下に入り、カワサキメグロとなって早4年。商品名は「カワサキメグロ」となったが、伝統のメグロはいまだ健在である。少し前まではカワサキメグロといってもメグロはメグロ、カワサキはカワサキというように、今まで両社の歩んできたものと何ら変わらないものであった。
しかし、ここ数年来のカワサキの活躍は目覚ましく、更に完全な製作態勢を固めるため、明石の工場施設拡張と同時に、従来横浜にあったメグロの工場を移し、すべて明石で設計・製作することになった。カワサキは既に今年(1965年)は完全な製作態勢を整え、50ccから500ccまでの製作に乗り出した。
以上のようなわけで、今回テストしたメグロSGもカワサキの手になるもので、名称はカワサキ250メグロSGと、メグロの名称を用いているが全く別個の車と考えて良い。スタイルのみならず車の特徴もメグロ独特の伝統を受け継いでいるが、やはり異なった点が多く見られる。
デザイン面から見ると、パイプ製クレードルタイプのフレームを用い、ブラックをベースとしたシックなカラーリングでまとめられている。特にタンクのデザインは既に30年近く前に誕生したメグロそのもので、メグロ独特の型である。このタンクのデザインは、長い間変更なく採用されているだけあって既に一種のトレードマークとなり、メグロの固定ファンに根強く支持されている部分といえよう。
ハンドルにしてもそうで、いわゆるライディングスタイルが直立となる殿様乗りのアップハンドルがメグロの典型であるが、SGのそれは幅も広いが従来のものに比べてやや狭くなり、押さえの充分利くものになっている。タンクも幅の広いもので、かなり容量が大きく見えるが12Lと標準的である。タンク幅の広さは現在一般的となっている前傾姿勢の車種では具合が悪いが、あまりタンクを深く挟まないこの車種では別に問題なく、サドルにまたがってゆったりとできるだろう。
タンクの取付けは、クラシックな英国車に多いタンクの上から長い1本のボルトで固定する方式のもので、タンクキャップの下部にあるゴムのカバーがこのボルト穴をふさぐものである。更にタンクには、これもおなじみのゴム製で厚手のニーグリップが付けられ、この取付け方及び形状も英国調のクラシック型である。
ハンドル中央のステアリングダンパー、ヘッドライト上のキースイッチ、スピードメーターのデザイン、ライトのクロームメッキが施されたヒサシ等も、やはりメグロの伝統を生かしている。またツールボックスをはじめ、前後フェンダーの形状、フロント・テレスコープ、リヤ・スイングアームの構造等、メグロジュニアの名で発売されて以来10年以上根本的な変更は見られない。もっともジュニアが発売されて何年かは、リヤのサスペンションがプランジャー型だったが……。
SGは一見すると従来とあまり変わらないイメージで、若干スマートになったという印象を持つ程度かもしれない。しかし、私自身、同社の明石テストコース場で初めて実車を目にした時、これはメグロではなくカワサキだという感じをとても強く受けた。カワサキの明石の工場で、メグロの伝統を殺さず失くさないように、そして新しい空気を採り入れるように細心の注意で仕上げられた形跡が顕著だからである。
このSGとなってからは川航の技術でメグロを造るわけであり、川航の技術陣のメンツもあるし、根強いメグロファンの目を止めさせつつ、さらに上のレベルのメグロにしなくてはならない。そうでなければメグロファンの心さえ捕らえる事もできないし、より広いユーザー層を狙うには余計必要な事。そんな事情もあってか、各所に大きく進歩の跡が見られるわけである。
そのひとつが入念な仕上げである。フレームのパイプは一層ガッチリしたものとなり、各部の溶接箇所などが極めて綺麗に上がり、塗装、メッキ部分等にそれが良く見られる。ブレーキは全面的に改良され、従来のメグロより一段と径の大きいドラムとなり、表面がバフ仕上げのしっかりしたものになっている。従来のブレーキも利きはスムーズなものの、重量も関係して高速時にやや制動力の不足が感じられたが、改良型ではかなり強力となり全く不満のない利きである。
次に、サドルを含めてサスペンションも改良されている。フロントはテレスコピックオレオ、リヤはスイングアームと変わりはないが、緩衝性能が一段と向上されてややソフトなものになっている。従来の堅めな設定も使用状況によっては重宝な面はあったものの、リヤとフロントともに堅めな乗り心地で、やや不満な点がなかったわけではない。だが、SGでは特に乗り心地の点を重視し、リヤもソフトながらも充分荷重に堪えうるものにし、フロントはストロークが大きくかなりソフトなものになっている。舗装路の継ぎ目などでは、ストロークの最初の部分が若干堅い印象をライダーに与えるが、ストローク一杯に緩衝する。荒れた路面、特に非舗装路では非常に良く、ダンピングの利いたクッションで申し分ない。
それと取付けにラバーを介した独特なサドルのクッションが非常に良く、たまたまボトムを突くような深い穴に落ちた場合でもサドルで充分吸収し、身体にショックを受けるような事もなく、実に良く緩衝し具合が良い。スポーツ型のように機敏な操作が望まれる車では、シートのクッションが良すぎると身体の固定がうまくいかないので堅めにするが、SGのような車種のライディングスタイルや用途を考えるとこれは適正で、クッション性は大幅に向上して、充分信頼できるものだと言える。
重めの車体だが、抜群の安定性
コンパクトなデザインが一般的な現在では、SGはかなり車格の大きいモーターサイクルである。数字上ではほんの僅かな差だが、泰然自若な風ぼうはまさにオーソドックスで味のある大らかさを感じさせる。この長年変わらぬ各部に余裕のある落ち着いたスタイルが、どこにでも手の入れやすい構造と相まって根強いファンをつかんでいるのだろう。
サイズは全長2050、全幅830、座高795、全高1055、軸距1360、最低地上高135(各mm)。車重は乾燥時165/整備175kgというメグロ特有の重さで、250ccクラスとしては頑丈だが重く感じられる。せめて乾燥時150kg台の重量が望ましく感じる。乗ってしまうと差程の重さではないが、押し転がしたりメーンスタンドを掛ける時にはやはり重いと感じる。
ただし、同じ重い車でも重心が高いと低速時にふらつく事があるが、SGは重心がかなり低いので、走行時はこの重さが非常に良い安定性として貢献している。メグロの安定性の良さは定評があるが、SGでは従来よりも軽い操縦性ながらも、良い安定性を発揮する。とにかく日常走行時の安定感は抜群で、ハンドルでバランス操作をする必要はほとんどない。ハンドルをつかんでいる手は、何時も軽く触っているのみで車は直進する。
60km/h位から制動に入っても、停止する瞬間まで身体で車体のバランスを調整する必要は皆無。だから、ほんの僅か停止する必要のある時など、いちいち足を接地させなくても静止していられる程だ。また、走行中に不意の凹みなどを避け切れずにショックを受けても、車に不安定な現象は見られない。
舗装路のみならず砂利道など、特に速度のあまり出せない山道を走る時なども走りやすい。余程の事がない限り足を出す事もないし、地上高も充分なクリアランスがあるので、荒れた路面では真価を発揮する。当然この種の車は、舗装路で軽く振り回すのには不向きだが、敏感なコーナリングの味を犠牲にしても、それを上回るどっしりとした安定の良さの方が必要である。この安定性には、重心位置、バランス、サスペンション等に一般の軽快車とは異なった特性が要求されるが、日常の使用に見合うこうした特性は、ライダーの神経や体力の消耗を低減するから、長距離の走行、使用の度重なる用途には充分向いている。
新設計OHV単気筒エンジンの変更点
SGのエンジンは、従来のものと全く違ったエンジンといってよい。根本的な4サイクル単気筒OHVという構造は変わらないが、性能の度合い、味という点では大きく変わっている。前傾単気筒はボア・ストローク66×72.6mmという伝統のロングストローク型で、排気量は248cc。
エンジン外観は、シリンダーフィンの幅が広くて鋳鉄の鈍い色で象徴されるゴツい感じから、フィンの細かいスマートな単気筒になった。遠くからエンジンを見ると、オーソドックスなメグロの中でも都会的な育ちを思わせる170ccのレンジャーやBSAの単気筒のようなスッキリした印象で、いかめしさは全くなくなっている。また従来の型では、シリンダー左側のクランクケースから円筒形のセルスターターが飛び出して目障りであったが、セルダイナモが採用されスッキリとした。
エンジンの始動はこのセルダイナモとキックの併用である。特に4サイクル単気筒の場合、吸・排気バルブの閉まっているときの始動はセルに多大の負荷が掛かるので、コンプレッションを抜くデコンプ(減圧装置)が排気バルブに取付けられている。このデコンプは小型のもので、シリンダーヘッド左側、タンクのすぐ下にあるから目立たない。デコンプは、ピストンが圧縮時にあるときスターターボタンを押すと自動的に排気バルブを押して減圧するが、セルはその場合軽く回り始動する。この装置はいずれの場合でも快調で、冷え切った状態でも何ら問題なく始動した。
エンジンは、セルダイナモ内蔵のためか、クランクケース幅が少し広い。機関寸法は長さ×幅×高さが458×428×522mmで、機関整備重量は58kg。キャブレターは三国VM24型、点火方式はバッテリーで、バッテリーは12V 18Ah。点火プラグNGK・B-6E、潤滑方式はウェットサンプでオイルパン容量1.5~2.0L。オイルポンプはトロコイド式で、シリンダー前方にフィンの付いた円筒状のオイルフィルターがある。このオイルフィルターは極めて手際よく取付けられ、オイルの冷却も兼ねているため、エンジンの冷却もよくなっている。寒いシーズンとはいうものの、長時間の走行後もオーバーヒート現象は皆無で、性能はもちろん耐久性の向上にも大きく役立っている。
クラッチは湿式多板式で、この扱いやすさは特筆に値する。というのは,最初はどこかおかしいのではないかと迷う位、軽さに驚いたのである。いかに大らかな操作で乗れる車といっても、強力なトルクを有するエンジンに不釣り合いな位軽い。操作する感じはまるで90cc位だが、これで充分役目を果たす。テスト中、故意に頻繁なクラッチ操作を試みたが、最初の軽さが変わる事はなく、ギヤチェンジはスムーズに行えた。
またSGではミッション全体も大きく変更されている。4段のギヤはロータリー式で変わらない。現在ではロータリーチェンジが一般的になったが、昔の話をすると、そもそもこのロータリーシステムはメグロが初めて採用したものである。初めはロータリーと言わず、グルグル回って止まるところのない事から、エンドレス式(Endress)式と呼ばれていた。
話を戻すと、ミッションの変更というのは操作方式のことで、メグロでは長年右足作動を採用し続け、周囲のどんな車が左チェンジになろうとイギリス式の右チェンジで通してきた。しかし、このSGになって現在の一般的な右ブレーキ、左チェンジになった。これは、SGを川崎で開発する際、多分議論の的となったのではないかと思うが、とにかく一大改革であろう。今更ここで右か左かと10年程前の論議を持ち出すつもりはないが、やはり時代の流れを感じる変更である。
そしてもうひとつミッションの変更で挙げられるのは、ギヤレシオが従来と比べてかなりクロースになったことである。ギヤボックス内のレシオは、1st2.98、2nd2.04、3rd1.43、4th1.00で、無理のない適切なレシオとなっている。
実用型に多い1st、2ndのような、ギヤレシオの大きさからくるぎこちなさは全くなく、スムーズに加速できる。特に1stレシオは充分引っ張りの利くもので、といってもエンジンに無理のかかるレシオではないから、リヤに荷重をかけても力強くダッシュする事ができる。
スタートから4thまで、気持ちよくギヤアップできるので非常に乗りやすい。この乗りやすさはギヤレシオの適切さ、クラッチレバーの軽さとともにチェンジレバーの扱いやすさも大いにプラスされている。レバーのストロークはスポーツ型とまではいかずとも、細かいもので歯切れのよい確実なタッチで変速できる。そして一次伝導はチェーンで、減速比は2.81。二次伝導はチェーン(密閉式)で、減速比2.47である。
低中トルクは維持し、スムーズさを増した回転感
SGのエンジン性能は、出力18ps/7000rpmと250ccクラスでは決して高い出力ではなく標準的であるが、最大トルクが5500rpmで2.0kgmと大きい。また圧縮比は8.7:1と、従来のメグロより高くなっている。出力も今までのと比べると高出力になっているが、性能も含めてエンジン全体はかなり変わっている。最高出力発生回転が7000rpmと高くなっているため、従来のメグロ特有のストン、ストンと爆発音がひとつひとつハッキリ手に取るような力強い感じから、小刻みに爆発する威勢のよい感じになった。アイドリングからの回転上昇は極めて速く、レスポンスの良さは従来のS系エンジンより非常に良い。
小刻みに回転するこの単気筒は、当然OHCのような鋭さはないが、4サイクルOHVらしい力強い感じを与える。高回転になったといっても、スロットルを開ければ7000rpmで上がるという事であって、けっしてメグロ独特の中、低速トルクを犠牲にしてしまったわけではない。トルクの強さは従来の定評通りのままで、その強さに回転のスムーズさをプラスした印象になっている。バイブレーションの少なさとスムーズさが向上した、別個の新しいエンジンである。
また急激な加速において、各ギヤでマキシマムに近い回転になっても不調は見られない。マキシマムまでの速度を通してバイブレーションを感じるのは僅かで、トップギヤ80km/h辺りでハンドルに若干来る程度である。バイブレーションについてはSGのみならず、カワサキ車は全般に細かい神経が配され、スムーズなエンジンと定評があり、4サイクルの特に単気筒OHVという構造において、これ程静かにしたのはさすがといえよう。若干のバイブレーションも常用速度に関係ないところへ逃し、この僅かな欠点もなおメーカーでは気にしている位だから、更に良くなるのではないか。
中、低速の強大なトルクによる扱いやすさは抜群である。トップの場合、40km/h以下でもスムーズに回り、その辺りからの加速はさすが排気量の強みでタッタッタと引っ張り、無理のない感じである。3rdにギヤダウンするなら10km/h辺りまでも落としてもエンジンが粘り、市街地などでトップに入れたら本当にまれにしかギヤダウンをせずに走行する事ができる。
山道などは特に楽で、曲がりくねった道をほとんどトップ、3rdで走ってしまい、別にスナッチを気にしながらではないから疲れる事を知らない程だ。追越し加速のみならず発進加速もこの種の車では不足のないもので、例え数値的に1秒程遅くとも、高度なテクニックを必要とせず、力強い加速力が満足させてくれる。
以上のようにこのカワサキ250メグロSGは多くの特徴を有した堅実な実用車で、従来のメグロファンのみならず多くの実用車を望む人にも喜ばれるものと思う。長い伝統を誇るオーソドックスなスタイルに、1965年型の機構を備えたのがこの車である。
カワサキ250メグロSG仕様諸元表
車名:カワサキ250メグロSG
製作会社名:川崎航空機工業株式会社 所在地:明石市和坂字大坪100番地
寸法(mm):全長2050 全幅830 全高1055 座高795 軸距1360 最低地上高135
車両重量(kg):165(乾) 175(整備)
分布重量(kg):前73(整備80) 後92(整備95)
乗車定員:1
性能:最小回転半径2200mm 最高速度125km/h 登坂能力23度 制動距離5.6m(35km/h) 燃料消費量(30km/hにて)60km/立
フレーム材質及び型:単管クレードル サドル型式:鞍型
エンジン及び附属品型式:カワサキSGE 4サイクル・自然空冷単気筒・前傾 内径×行程66×72.6mm 総排気量248cc 圧縮比8.7:1 最高出力18ps/7000rpm 最大トルク2.0kgm/5500rpm 全負荷時の最少燃費230g/PS/h rpm
機関寸法(変速機を含む):450×428×522mm 機関整備重量58kg
点火方式:バッテリー 始動方式:セル・キック
気化器名称型式:三国VM24
充電機型名:国産BAO3 蓄電池型式容量:GS12V18AH
点火プラグ名及び寸法:NGK B-6E 点火コイル:ダイヤモンドTU-21(M5)
燃料タンク容量:12L 潤滑油容量:1.5~2.0L
潤滑ポンプ型式:トロコイド潤滑方式・湿式
伝導装置クラッチ型式及び材質:湿式多板コルク
変速機型式:常時噛合 操作方式:ロータリー 変速比1─2.98 2─2.04 3─1.43 4─1.00
機関から変速機までの機構:チェン
一次減速比:2.81 二次減速比:2.47
走行装置ハンドル寸法:725mm かじ取角度:左38度 右38度
キャスター:63度 トレール:84mm
タイヤ寸法:(前)2.75-18 (後)3.00-18
制動装置:内部拡張式 (前)右手動 (後)右足動 ドラム径180mm
懸架:(前)テレスコピックオレオ (後)スイングアームオレオ
照明及び速度計前照灯名称型式:電球式12V 35/35W 個数1 減光または照射方向変更装置あり
尾灯その他:12V 5/18W
価格:18万2000円(1965年当時)
ツーリング型の派生車もあった「カワサキ 250メグロSGT」
スタンダードのSGのほか当時の試乗テスト記事では、同時発売のツーリング型、SGTにも短時間試乗し、以下のように短くレポートしている。
SGTのほうは、ツーリング型といっても車の特徴は根本的には変わらない。性能も重量が若干軽くなった事から最高速度がやや高くなった以外、出力、トルク、機構すべて変更はない。しかし、同一フレームでありながら、全く別個の車と見間違える程、あか抜けのしたデザインで、タンクはニーグリップ部分の大きく凹んだ精悍なスタイルで、これにWシートの組合せで、カットされた浅い前後フェンダーの銀色、ハーフチェーンケースとダイナミックなハンドル等、本格的なデザインである。
SGTはSGと同様に直立のライディングスタイルとなるが、Wシートとタンクのお陰で任意のポジションが取れるため、スポーツ的な乗り方をする場合に最適な姿勢が取りやすい。それに加えて、SGと同じく余裕のあるライディングポジションは長距離のツーリングには格好である。SGTはあくまでもツーリングと称するが如く、性能本位のスポーツ型ではないが、こちらのモデルのほうがヨーロッパの一般的なモーターサイクルと同様なタイプだと感じられる。
エンジンには何の新しい試みがなされていないが、ツーリング型のフレームに乗せても、何ら不足のない性能は奥深いこの4サイクル単気筒の味を示すものだろう。そして、かなりスポーティな乗り方を試してみたが、重量のある独特な味を楽しむことができた。
決してモータースポーツに使うような車ではないかもしれないが、SGと共通の高い安定性を利したダイナミックな走法が楽しめ、用途の広いモーターサイクルであることがわかった。SGTはただ単に高い最高速度、加速性を狙ったものではないが、新型のエンジンをはじめその操縦性から、モータースポーツとは違った意味のスポーツ性でマニアの目に止まる車だと思う。
試乗レポート●大久保 力 写真●八重洲出版 編集●阪本一史
*当記事は『モーターサイクリスト1965年4月号』の誌面を再構成したものです。
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みんなのコメント
親父からは名前だけは聞いてた
地元に看板残してる店もあったような