■コンパクトカー市場は変革の時を迎えるか
日本の自動車市場は、平成に入ってからミニバン、コンパクトカー、軽自動車、SUV(RV)とさまざまなカテゴリが人気となります。
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そのなかで、本格RV車はSUVに、ファミリー層の色が強かったミニバンは高級化、軽自動車はハイスペック化するなど、時代の流れに合わせて変化を遂げてきました。
しかし、コンパクトカーは長い歴史のなかでも大きな変化をせず、いまに至ります。この先のコンパクトカーはどうなるのでしょうか。
日本自動車販売協会連合会が発表した2018年度(2018年4月から2019年3月)の新車販売台数ランキング(軽自動車・海外ブランドは除く)において、1位を獲得したのはコンパクトカーの日産「ノート」です。1年間で13万1760台を販売しました。
2位にもトヨタのコンパクトカー「アクア」(12万7899台)がランクインしているほか、トップ10のうち半数をコンパクトカーが占めていることからも、コンパクトカーは依然として人気のカテゴリーです。
ほかのカテゴリーは時代が求めるニーズに合わせて仕様や機能を追加してきました。一方で、コンパクトカーは先進安全機能や運転支援システムは、随時採用されていますが、コンパクトカーの方向性自体は大きく変わっていません。
コンパクトカーの立ち位置について、大手自動車メーカーの広報担当者は次のように話します。
「クルマにはそれぞれの使用用途が大まかに定まっています。たとえば、SUVは元々悪路走破性が重要視され、その性能を持ったまま都市部でも走れるクルマとして進化しました。
また、軽自動車はコンパクトカー同様に当初は個人使用や近所の買い物用といった気軽な使いやすさが求められていましたが、最近では普通車と同じように使えて安全な乗り物としてのニーズが高まっているため、スライドドアや背が高い居住性を意識したモデルが多くなっているのです。
一方で、基本的にコンパクトカーは、個人使用を前提として開発されています。もちろん、軽自動車と似ている部分はありますが、スペックや税制面で区別されています。
逆に上のカテゴリーにはセダンやミニバン、SUVと控えているため、軽自動車より裾野を広くしすぎることもなく、上のカテゴリーまで性能や高級感を求めることも必要ないちょうど良い立ち位置なので、大きな変化がないのかもしれません」
■変化しなくてもコンパクトカーが売れる理由とは
すべてのコンパクトカーが変化をしないでも売れている訳ではありません。販売が振るわないコンパクトカーもあります。
例として、日産「マーチ」、トヨタ「パッソ」、ダイハツ「ブーン」が挙げられます。前述の年間新車販売台数ランキングは、マーチが44位(1万1557台)、ブーンのOEM車であるパッソが20位(4万7183台)、そして本家モデルのブーンが46位(1万768台)という結果です。
これら3車種の特徴として「普通車としては群を抜いて安い価格」と「3.7メートルから3.8メートル前後の全長」のふたつを兼ね備えている点があります。
まずマーチのエントリーモデルの価格を見ると、117万2600円から(消費税込:以下同様)と普通車のなかではトップクラスに安い価格設定となっています。
パッソとブーンのエントリーモデルも119万9000円からと安価で、近年高価格化が進んだ軽自動車とは対照的です。
また全長に関しては、マーチは3825mm(NISMOグレード・ボレログレードを除く)、パッソは3650mmから3680mmとなっています。
これは、コンパクトカーの売れ筋モデルに多い約4メートルと、軽自動車規格である3.4メートルの間に位置する全長です。
一見すると、価格と軽自動車と普通車の特徴を兼ね備えたクルマのように見えますが、なぜ販売台数が伸びないのでしょうか。
人気のコンパクトカーについて、前出の大手自動車メーカーの広報担当者は、次のように話します。
「コンパクトカー自体に大きな変化はありませんが、時代に合わせてさまざまな部分の改良や進化は当然しています。もちろん、売れるクルマを作らなければいけないために商品の価値を高める施策は日々おこなわれているのです。
そのなかで、最近のクルマに共通してハイブリッド仕様の設定があります。『ちょうど良い立ち位置』のコンパクトカーにハイブリッドという高付加価値がつくことで、必然的に売れるモデルになっているといえます」
※ ※ ※
実際に、前述の新車販売台数ランキングはのトップ10に入ったコンパクトカー5車種のうち半数以上にハイブリッド仕様の設定があり、2位のアクアに関してはハイブリッド専用車です。
そして1位のノートには、エンジンで発電した電力を用いてモーターで走る「e-POWER」というパワートレインが採用されています。
日産の販売店スタッフも「ノートは元々販売実績が良かったのですが、『e-POWER』の登場によって『売れているクルマ』の常連となりました」とコメントしていることから、人気のクルマとなるためにはプラスアルファの要素が求められているようです。
コンパクトカーは大きな変化をすることなく個々の機能を進化させる道に進んでいるといえるかもしれません。
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