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開発者インタビュー 買い物も行けない、通院もできない、を改善する超小型モビリティ「トヨタC+pod」編

掲載 更新 1
開発者インタビュー 買い物も行けない、通院もできない、を改善する超小型モビリティ「トヨタC+pod」編

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第26回は電気自動車(EV)であり、新基準の超小型モビリティ型式指定車の第1号でもあるトヨタC+podです。トヨタ自動車株式会社 トヨタZEVファクトリー ZEV B&D Lab 主幹の倉知 晋士(くらち・しんじ)さんに話を伺いました。

実証実験のためでなく、一般ユーザーが使える超小型モビリティ

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島崎:このC+podのために、新しい基準ができたというお話ですが?

倉知さん:このクルマのためにではないかも知れませんが、少なくとも超小型モビリティ型式指定車の第1号です。

島崎:この新基準ができたのはいつでしたか?

倉知さん:2020年の9月です。

島崎:9月に新基準が出来て、C+podが12月の発表だったんですよね。

倉知さん:はい。ご説明しますと、軽自動車の中に“超小型モビリティの型式指定車”という基準ができました。それまで認定車がありましたが、こちらは実証実験でしか使えず、場所が限定されていたり、登録者も町長、市長といった方々の限定でした。型式指定車であればどなたでも登録ができ、全国を走れるところが新基準の特徴です。

島崎:要は一般ユーザー向けということですね。

倉知さん:はい。ただし衝突安全試験の破壊試験が義務づけられるなど厳しくなった面もあります。

島崎:開発はどのくらい前から立ち上がっていたのですか?

倉知さん:実証実験自体は10年くらい前からやっていました。ただ法規がなかなか出来ず、クルマを作る話もなくて、なかなか進まなかった経緯がありました。しかし今回、基準もできそうだ……ということで我々もクルマを開発していき、いいタイミングで国にも動いていただきました。

島崎:倉知さんは当初から関わってこられたのですか?

倉知さん:2012年くらいから関わってきました。

かつての原付ミニカーとは違って衝突安全基準もクリア

島崎:大昔になりますが、50ccの原付のエンジンを使ってFRPボディを架装したミニカーがありましたが、あれの延長線上……そんなイメージで考えていましたが、まったく世界とレベルが違うということですね。

倉知さん:原付扱いのミニカーと呼ばれる車両だったと思いますが、あれらは1人乗りしか許されていませんでしたが、新基準では最大4人まで許されています。ボディサイズは原付のミニカーと同じ(注:全長2.5mまで、全幅1.3mまで)です。衝突安全基準については、ミニカーはありませんが、超小型モビリティは衝突安全も必要ですし、当然、エアバッグ、ABS、VSCなど軽自動車に義務づけられている装備も必要になっています。

島崎:本格的というか、軽自動車と変わらないんですね。

倉知さん:さらにC+podではプリクラッシュブレーキ、パーキングサポートブレーキも標準装備としております。やはり短距離を移動するモビリティなのでご高齢のお客様も「ちょうどぴったりだ」とか「夫婦二人だから」と多く使っていただけそうです。そういう方にも安心して乗っていただけます。

島崎:電動の車椅子は1人用ですし、雨に濡れますから、そう考えるとかなりいいですね。

倉知さん:昨今、買い物難民などとよく言われますが、何かモビリティがないと、買い物も行けない、通院もできない。だから引きこもってしまう。こういう世界を少しでも改善できたらなぁという思いです。

島崎:買い物でも十分に積めますね。

倉知さん:ラゲッジスペースは、買い物カゴがぴったり載るサイズにしてあります。ティッシュペーパーや、24本入りの飲料の箱なども載るスペースを確保しています。

安めの軽自動車といい勝負になる価格

島崎:資料を拝見していたのですが、165万円という設定はなかなか魅力的ですね。EVでもあることを考えるとお安いくらいじゃないですか? TVショッピングのアシスタントのような物言いで恐縮ですが。

倉知さん:正直なところEVというところだけでもコストがかかりますし、これからの市場ということで台数もまだ少ないです。が、目一杯、頑張らせていただいています。

島崎:では台数次第でコストはさらに下げられそうでしょうか?

倉知さん:と思っております。現在、171万6,000円のGグレードで、補助金が個人の方で22万円ほど、シェアリング業者様などは32万円ほど、あと電気自動車ですのでエコカー減税とかグリーン化税制の適用もありますし、トータルのコストで考えると軽自動車の比較的安めのクルマといい勝負になる、といったところです。

島崎:これから個人向けの販売が始まれば、トヨタのディーラーで買えるのですか?

倉知さん:ええ、去年は法人、自治体限定で100台程度の販売を開始しました。来年からの一般販売は台数制約もありませんので、どなたでもお買い上げいただけます。取り扱い店舗はすべてではないかも知れませんが、全国での展開ですので、さほど遠くない店舗でお買い求めいただけるようになるはずです。

一晩の充電でだいたい1日は走り切れる

島崎:ディーラーさんの充電設備の条件や基準はあるのですか?

倉知さん:特段そういったことはなく、家庭用の100Vのコンセントでも充電できますし、200Vの充電設備は今はトヨタディーラーのほぼ全店に入っている状態です。

島崎:充電時間はどのくらいですか?

倉知さん:100Vで16時間です。またほとんどのご家庭でエアコン用の200Vが引ける状況にはありますので、200Vでお使いいただけば5時間になり、夜のうちに充電しておけば、朝には満充電になっているという使い方ができます。

島崎:手軽に扱えそうですね。

倉知さん:はい。1充電で150km走れますし、最高速度は60km/hに決められており高速道路には乗れないクルマなので、身の回りの一般道を走る使い方で、だいたい1日は走り切れる距離かなぁと考えています。

街中ではこれくらいでちょうどいい

島崎:先ほどABS、VSCが標準装備というお話がありましたが、ヴィークルダイナミクスの領域では何かチューニングの方向性、狙いはありますか?クルマとしての乗り味ですとか。

倉知さん:ショートホイールベース、ショートトレッドの中でどう安定させるかが難しいところでしたが、前後の重量バランスとか、バッテリーをできるだけ低く搭載するなどして重心を下げて、耐ロール性などはキープしています。

島崎:試乗してみましたが、最高速度60km/hということで、加速感は普通の軽などと較べると“ジンワリ”な感じに思いましたが、この加速感で妥当ですか?

倉知さん:普通の信号からの発進の流れには十分に乗れます。ただ目一杯アクセルを踏み込んでも決してパワーを出すようにはしていません。ご高齢の方のご家族からは「これぐらいの方が安心できる」とお声をいただいています。幹線道路ではなく街中ではこれくらいでちょうどいいかなと考えています。

身長145cmくらいの女性でも足が届くシートの高さ

島崎:シートの高さはどう決めたのですか?

倉知さん:はい、かがみ込みもせず高すぎず、背の低い軽自動車よりやや高めの設定です。

島崎:あと少し高めでもいいのではないですか?骨盤骨折を経験して以来、僕はそう思うようになりました。

倉知さん:身長145cmくらいの女性からすると足が届かないという声をいただき、開発の最後で少し下げた経緯があります。

島崎:シート自体は何かを活用しているのですか?

倉知さん:鋭いですね!完全流用ではありませんが、ハイエース系のフロント3人掛けの助手席側を採用しています。470mmの幅で日本人の体形でしたら十分に座れると判断しました。

島崎:最高速度は60km/hでしたよね。

倉知さん:メーター読みですと若干超えますし、急な下り坂などでもう少し出る場合もありますが、動力は60km/hでリミッターをかけています。

島崎:とにかく乗りやすかったです。

倉知さん:ありがとうございます。第1号としてようやく出せましたので、これから、従来の自動車ではない、モビリティ全体としてこういった乗り物もどんどん充実させていきたいと考えています。

島崎:楽しみにしています。お話をどうもありがとうございました。

(写真:島崎七生人)

※記事の内容は2021年11月時点の情報で制作しています。

※対象は、こちらのバナーから審査をしていただいた方で初回引き落としが確認取れた方。また、新規申込みの方(申込み期限は2021年12月31日まで)

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みんなのコメント

1件
  • 「200Vの充電設備は今はトヨタディーラーのほぼ全店に入っている状態」ディーラーで普通充電するってどれだけ暇人なんだ。
    イオンで買い物する間なら分かるが。
    開発主査が電気自動車を使っていないって事がはっきりする言葉。
    リーフでも自腹で買って数年乗って見ればそんな発想は出てこない。
    超コンパクト2人乗りiQの販売実績を踏まえて、BEV食わず嫌いの国内ユーザー相手に販売のトヨタのお手並み拝見だが、よく企画が通ったなあって驚きもある。
    最初は、トヨタの描く電気自動車の未来はこの程度のもので、FCVに掛けていますってアナウンス用かと思ったが、この車の企画~販売までの間に、トヨタの予想を超える世の中の変化だっがのかも知れない。提灯記事で持ち上げても買う人いるのだろうか。
    役所や傘下企業に押しつけるしかないかも。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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