9世代続いた日産のファミリーセダン
もしも今でもサニーが続いていれば初代の誕生から56年、最終型の終了からもすでに18年。サニーが現役だったどれかの世代のころに「サニーは北米市場ではセントラと言い……」などと原稿に書いた覚えもあるが、日産のベーシックカーだったサニーは、知られているようにトヨタ・カローラとは宿命のライバルとして販売台数を競い合ったクルマだった。今回はやや渋めながら「セダン」にテーマを絞り、時代の空気を反映した歴代モデルを振り返ってみたい。
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初代(B10型/1966年):「活動派の車(アクティブ・カー)」
車名が公募で決められた初代は、「ダットサン・サニー」として登場。この時代の510ブルーバード、初代ローレルなどと同様の欧州調のシンプルなスタイルが特徴だった。写真は日産の総合パンフレットの1ページだが「活動派の車(アクティブ・カー)」と紹介され、国産初の3速ATなども写真入りで紹介されている。この世代のサスペンションは前後ともリーフスプリングだった。
2代目(B110型/1970年):「おとなりのクルマが小さく見える」
宿敵カローラがサニーよりも100cc大きい1100ccで登場したのを受け、1200ccエンジンを搭載し「ほうら! おとなりのクルマが小さく見える」とやったのがこの2代目。プレーンだった初代に対し、少し肩を張ったようなスタイルが特徴だった。カタログには「2まわり豊かで2まわり豪華」のタイトルも。サスペンションはフロントがストラット式に進化した。
3代目(B210型/1973年):「ますます好評、サニーの低燃費」
2代目よりもホイールベースを40mm伸ばし、ふくよかなスタイリングに一変したのがこの3代目。イメージキャラクターに俳優の関口 宏・西田佐知子夫妻を起用し、カタログでは夫妻がサニーのドアを開けたりシートに収まっていたりするカットが載せられている。「ますます好評、サニーの低燃費」とあり、1200cc全車と1400ccの5速車の60km/h定地走行燃費21km/Lの大きな表記も。
4代目(B310型/1977年):「ひろびろサニー」
3代目から打って変わって、2代目を思わす直線基調のスタイリングに戻ったのがこの4代目。「ひろびろサニー」のコピーや、「全車53年排出ガス規制適合」「60km/h定地走行テスト値24.0km/L」の文字や「車体幅は45mmも広く。室内幅はいっきに70mmもワイドに」や「窓の面積も17%広がり」といった、実質重視のアピールが目立つ。水晶発振式の時計が紹介されているのもこの時代。
5代目(B11型/1981年):「魅力フルサイズ」
この世代の大きなトピックは、駆動方式がFRからFFに切り替わったこと。また車名も、それまでのダットサン・サニーが、この代から日産サニーに。カタログにはなんと若かりしころの松阪慶子と時任三郎が起用されている。写真のカタログは1982年9月のもので、ターボ、ディーゼルの登場や、クーペのターボルプリの紹介も。「クオリティセダン」、「ナイスフィーリング」などイメージ寄りの見出しが展開された。
6代目(B12型/1985年):「TRAD SUNNY」
ふたたび直線基調のスタイリングとなって登場したのがこの6代目だった。「TRAD SUNNY」は有名なキャッチコピーで、サブで「質感が、あったかいね。つくりが、ていねいだね。カタチが、キレイだね。」などとも書かれている。実車はボディ剛性、サスペンション性能などに、VWサンタナのノックダウン生産のいい影響を感じた仕上がりだった。4WDモデルも設定された。
7代目(B13型/1990年):「わかった人が乗っている」
6代目のカドを丸くしたようなスタイリングに一新されたのがこの7世代目。このころに前後して登場した日産車にはS13シルビア、P10プリメーラなど名車が多いが、このサニーもそうした流れを感じさせる、誠実に基本性能を磨いたクルマになっていた。白地にスマートに写真を配置、イメージカラーをライトグリーンにするなど、まるでS13シルビアを倣ったかのようなカタログだった。
8代目(B14型/1993年):「12マイルズサニー」
「12miles SUNNY」と銘打ったこの8代目はそれまでのクッキリとした3ボックススタイルからやや趣を変えて、パッケージングのよさが目でも分かるスタイルに一新された。全高は7代目に対して10mmだけ高い1385mmに。「いっぱい心地よい」「いっぱい走ろう」「いっぱい安心」「いっぱい楽しい」と、ややクールに見えるクルマに親しみを覚えてもらおう……そんな意図を感じる見出しの数々が並ぶ。
9代目(B15型/1998年):「完成度という理想へ」
「完成度という理想へ、新サニー誕生」と、カタログを開くとこの世代で日本市場でのサニーが最終となることを予言しているかのようなコピーが目に入ってくる。新世代プラットフォームを採用し、新フロアパネル+新エンジン&ミッション、新サスペンションなどの紹介も。クルマとしては落ち着いた大人の雰囲気を出していたが、現実的にもユーザーの年齢層も高まりをみせていた……。
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