現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 電気自動車で話題のキーワード「全固体電池」ってそもそも何? 実用化されるとユーザーにどんなメリットがあるのか

ここから本文です

電気自動車で話題のキーワード「全固体電池」ってそもそも何? 実用化されるとユーザーにどんなメリットがあるのか

掲載 22
電気自動車で話題のキーワード「全固体電池」ってそもそも何? 実用化されるとユーザーにどんなメリットがあるのか

 この記事をまとめると

■EVの発展のために全固体電池の実用化に大きな期待が寄せられている

エアレスタイヤと非接触充電! いま実現が期待される「革命レベル」のクルマの技術はこの2つ!!

■じつは全固体電池とリチウムイオン電池は電解質が固体か液体かという違いしかない

■全固体電池の実用化が実現してもコストがかかりすぎるようでは意味がない

 全固体電池の実現でEVは大幅な進化を果たす

 全固体電池への期待は高く、これが実現することにより、バッテリー容量が少なくても、長距離移動が可能になるといわれる。電力量という実用性を満たしながら、バッテリー車載容量を少なくできれば、昨今取りざたされている「電気自動車(EV)のタイヤ摩耗は車両重量の増加によって早まる」との懸念も薄れていくかもしれない。

 一方で、果たして全固体電池が適切な原価で量産できるのかといった点は、発売されてみないとわからない。既存のリチウムイオン電池より原価が高くなるなら、EVの身近さが遠のく恐れもある。

 リチウムイオン電池と全固体電池は、あたかも別のバッテリーと思われがちだが、じつはそうではない。どちらも仕組みは同じで、充電や放電に必要な電解質が、液体であるか固体であるかの違いしかない。

 既存のリチウムイオン電池は電解質が液体だ。液体といっても、水のような液状だけでなく、ゼリー状の電解質を使う場合も電解質が液体という枠組みに入れられている。現在のリチウムイオン電池の多くは、そのゼリー状の電解質を使っていると考えられる。

 その電解質を、固体にする意味はどこにあるのかというと、プラスとマイナスの電極により面が接触しやすくなり、1セル(バッテリーの最小単位)の性能が上がると期待されている。

 1セルの性能が高まれば、全体のセル数を少なくしても、バッテリーとして十分な性能が得られ、つまりは、少ないバッテリー容量で適切な性能が手に入るので、EVの車両重量を軽くでき、積載量が少なければ安上がりとなって、さらに車両重量が軽くなれば電力消費が抑えられ、燃費に通じる電費を改善でき、懸念されているタイヤの摩耗も抑えられるなど、利用者にとっての利点がさまざまに語られることになる。

 一方、電解質と電極の双方が固体となると、微細に見れば、接触面が適切に接するためには、面の精度を高めなければならない。微細な目で見たとき、表面に凹凸があってザラザラした状態だと、互いの出っ張った部分だけの接触となって、結局は電極と電解質の接触面積は減ることになる。つまり、製造精度が極めて高くなければ全固体であることの期待値は得られないことになる。

 どのような工業製品でも、表面が鏡のように滑らかな品質を大量生産で保持することは容易でない。高度な生産技術が求められ、そこには原価がかかる。つまり、たとえ全固体電池が完成しても、試作と同様の性能を量産品質で実現できるかは未知数なのだ。

 生産面で原価が上がるなら、すでに大量生産で品質が保たれ、また耐久信頼性も高まっている既存のリチウムイオン電池で十分という考え方もある。

 また、リチウムイオン電池は、プラスとマイナスの電極間をイオンが移動することで充放電を行うが、イオンの移動という体積変化を、すべて固体のバッテリーで補えるのかという技術的懸念もある。

 EVについてよく耳にするのは、すでに完成した技術は話題にならないが、完成の目途が立たない技術は話題になるという論だ。全固体電池も、量産されて信頼耐久性が高まれば、期待のバッテリーとなりうるが、試作段階では海のものとも山のものともわからず、ならば既存のリチウムイオン電池の原価を下げ、普及させるほうがEV普及の現実解という考え方も根強い。

関連タグ

こんな記事も読まれています

部品点数も製造工程も数十分の一! クルマ作りの超革新的技術「ギガキャスト」の多大なるメリットと意外と知らないデメリット
部品点数も製造工程も数十分の一! クルマ作りの超革新的技術「ギガキャスト」の多大なるメリットと意外と知らないデメリット
WEB CARTOP
ハイブリッドやEVの「回生」はムダに捨ててたエネルギーを拾う行為! 燃費や電費が伸びる仕組みを改めて解説する
ハイブリッドやEVの「回生」はムダに捨ててたエネルギーを拾う行為! 燃費や電費が伸びる仕組みを改めて解説する
WEB CARTOP
日産 次世代生産技術と全固体電池のブレークスルー解説 
日産 次世代生産技術と全固体電池のブレークスルー解説 
Auto Prove
環境のために世界的にEVが重要なのはわかる! でもEVに乗ると「どんないいこと」があるのか?
環境のために世界的にEVが重要なのはわかる! でもEVに乗ると「どんないいこと」があるのか?
WEB CARTOP
BEVが世界的に失速したわけじゃなくハイブリッドがより絶好調なだけ! これを機に地球環境とクルマについて世界規模で考えるべき!!
BEVが世界的に失速したわけじゃなくハイブリッドがより絶好調なだけ! これを機に地球環境とクルマについて世界規模で考えるべき!!
WEB CARTOP
ウクライナのケミカルメーカー! エンジン内部の傷を修復する「XADO」の気になる商品たち【大阪オートメッセ2024】
ウクライナのケミカルメーカー! エンジン内部の傷を修復する「XADO」の気になる商品たち【大阪オートメッセ2024】
WEB CARTOP
タイではピックアップトラックが激戦区! 意外にも中国メーカーがBEVじゃなく「ハイブリッド」を投入するワケ
タイではピックアップトラックが激戦区! 意外にも中国メーカーがBEVじゃなく「ハイブリッド」を投入するワケ
WEB CARTOP
数字だけ高スペックでも実際の充電は遅い! EVの進化についていけない急速充電器の現状
数字だけ高スペックでも実際の充電は遅い! EVの進化についていけない急速充電器の現状
THE EV TIMES
BEV化が急速に進むタイに押し寄せる中国メーカー! 普及にブレーキがかかりそうな要素も見え隠れする危うい戦略
BEV化が急速に進むタイに押し寄せる中国メーカー! 普及にブレーキがかかりそうな要素も見え隠れする危うい戦略
WEB CARTOP
EVシフト一服の中、日産の最新EVに試乗 エンジン好きが感じたEVの魅力と難しさ
EVシフト一服の中、日産の最新EVに試乗 エンジン好きが感じたEVの魅力と難しさ
日刊自動車新聞
柔らかければ乗り心地がいい……とは限らない! 固いからって安定するともいい切れない! クルマのサスペンションはあまりに奥深い世界だった
柔らかければ乗り心地がいい……とは限らない! 固いからって安定するともいい切れない! クルマのサスペンションはあまりに奥深い世界だった
WEB CARTOP
やっぱりクルマのタッチパネルは美しいけど使いづらい! 欧州で評価機関が「物理スイッチ」採用を評価項目に加えることを決定
やっぱりクルマのタッチパネルは美しいけど使いづらい! 欧州で評価機関が「物理スイッチ」採用を評価項目に加えることを決定
WEB CARTOP
【試乗】このご時世にガソリンエンジンの魅力が味わえるクーペを導入! メルセデス・ベンツCLE200はクルマ好きのハートをくすぐる一台
【試乗】このご時世にガソリンエンジンの魅力が味わえるクーペを導入! メルセデス・ベンツCLE200はクルマ好きのハートをくすぐる一台
WEB CARTOP
ルーマニアの「ダチア」が欧州でバカ売れ! インド製のWR-Vも乗ったら最高! クルマは「いいものを安く」がいかに大切かを思い知らされた
ルーマニアの「ダチア」が欧州でバカ売れ! インド製のWR-Vも乗ったら最高! クルマは「いいものを安く」がいかに大切かを思い知らされた
WEB CARTOP
クルマと同様にバイクもEV普及を目的とした補助金を受け取ることが出来る
クルマと同様にバイクもEV普及を目的とした補助金を受け取ることが出来る
バイクのニュース
テスラ・モデルYに600km走れるRWD登場も日本導入はナシの予想! 日本は「ジュニパー」の登場に期待
テスラ・モデルYに600km走れるRWD登場も日本導入はナシの予想! 日本は「ジュニパー」の登場に期待
THE EV TIMES
「輸入車は維持費が高いからなぁ……」って噂は本当? 実際の金額を国産車と輸入車で比較シミュレーションしてみた!
「輸入車は維持費が高いからなぁ……」って噂は本当? 実際の金額を国産車と輸入車で比較シミュレーションしてみた!
WEB CARTOP
5速MTの3ドアハッチ! アルミボンネットに薄板軽量ガラス! スポーツモデルのような謳い文句が並ぶ超マニアックな「エコカー」の正体とは?
5速MTの3ドアハッチ! アルミボンネットに薄板軽量ガラス! スポーツモデルのような謳い文句が並ぶ超マニアックな「エコカー」の正体とは?
WEB CARTOP

みんなのコメント

22件
  • gin********
    ガソリン車に比べEVの重量が重いのであれば重量税を上げようよ。
  • ban********
    残念ながら記事を書かれた方はあまりお詳しくなさそうですね。
    全固体電池は現行のリチウムイオン電池に比べて安全性が違います。
    記事ではゼリーという表現がありましたが、リチウムイオンはゼリー状のため液漏れの心配もあれば、有名な発火もあります。
    全固体は漏れる液もなければ、発火のリスクも低い。
    安全性があがれば、対策費用も不要になりますし、電池の搭載場所さえ自由になります。
    全固体電池のコストは現時点では分かりませんが、
    全体的に見れば多少の電池単体のコスト以上の効果が得られます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村