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電気自動車の価格はどこまで下がるのか? どこまで下げれば普及するのか??

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電気自動車の価格はどこまで下がるのか? どこまで下げれば普及するのか??

 2023年6月8日、トヨタは次世代のバッテリーEV(以下BEV)開発における最新状況について、メディア向けに技術説明会をおこなった。その中で、2026年から2028年ごろの市場投入を目指している、開発中の4種の新バッテリー技術を公開。ハイパフォーマンス版から廉価な普及版まで、様々なアプローチのバッテリーの開発を進めており(もちろん全個体電池も進行中)、ユーザーの多様な需要に対し、選択肢を用意するという。

 今回の説明のなかで注目したいのが、コストを抑えた普及版として紹介された「バイポーラ構造のリン酸鉄リチウム電池」だ。計画通りに登場すれば、現状のハイブリッド車並みの価格でBEVを提供できるようになるとのことだが、はたして、これが実現すれば日本でもBEVが普及するのか!?? 

電気自動車の価格はどこまで下がるのか? どこまで下げれば普及するのか??

文:吉川賢一
写真:TOYOTA

現行bZ4X比で航続距離20%向上、コストは40%減!!

 次世代のバッテリーとして、もっとも期待されているのは、全個体電池だ。安全性が高く、急速充電時の熱耐性が高く、寿命が長いという特性をもつ全個体電池は、非常に期待されているのだが、なかなか市販車に搭載されてこなかった。

 自動車用途とした場合の電池の耐久性に課題があったため、実現できなかったようだが、トヨタは今回の発表の中で、「電池の耐久性を克服する技術的ブレイクスルーを発見した」とし、BEV用電池としての全個体電池について、2027-2028年に実用化できるようチャレンジするとしている。ただ、現在も量産に向けた工法を開発中とのことで、クルマに搭載するバッテリーとしての全個体電池の実用化には、まだハードルがあるようだ。

 そこで現実解となるのが、トヨタが「次世代電池」とする「パフォーマンス版」と「普及版」の2種類の新電池と、その「さらなる進化版」のハイパフォーマンス電池だ。

 このうち、パフォーマンス版電池は、2026年に市販車へ導入する計画とのこと。電池のエネルギー密度を高めながら、空力や軽量化なども駆使して「航続距離1000km」を達成、急速充電時間は20分以下(SOC=10-80%)を目指しているという。普及版電池は、良品廉価で提供できるよう、ハイブリッド車で適用実績のあるバイポーラ構造の電池を採用。材料は、安価で手に入るリン酸鉄リチウム(LFP)を採用して大幅にコストダウンし、2026-2027年の実用化にチャレンジするという。ちなみに、現行bZ4X比で航続距離20%向上、コストは40%減、急速充電時間は30分以下。普通価格帯のBEVへの搭載を目指しているそうだ。

2023年6月13日にトヨタが説明した、次世代電池戦略の概略図(さらに全個体電池も開発中)。ベースとなるbZ4X用のバッテリーに対し、EV走行距離の延長や、大幅なコスト低減を示唆した

クラウンクロスオーバーのバイポーラ型ニッケル水素電池は、従来型のニッケル水素電池と比べ、コンパクト化が可能なことと通電面積が広くシンプルな構造なので、電池内抵抗が低減され、出力が向上する

普及させるのならば、「ハイブリッド車並み」ではなく、「ガソリン車並み」にまで必要がある

 「ハイパフォーマンス版」といわれる「さらなる進化」の電池は、対外アピール用としてごく一部のBEVにしか搭載されないはずなのでさておき、この2種類の次世代電池のうち、BEV普及のカギとなるのは「普及版」だろう。バッテリーコストが40%削減されると、ハリアーハイブリッド(「Z」税込462万円)と近しい価格で、bZ4X(「Z」税込600万円)が買えるようになると考えてよいと思われ、いまよりはBEVが現実的になる。

 ただ、従来のハイブリッド車と同等の価格となっても、BEVが爆売れするようなことはないだろう。すでにBEVを所有している人や、過去に所有していた人(筆者も過去に2年ほど日産リーフを所有していた)は、メリットもデメリットもよく理解されているだろうが、クルマを使っての移動の際の時間の使い方がガラッと変わる。「待つ」ことが増え、どこで充電をしてその間何をして待つか、というのを常に考えておく必要があるのだ。

 もちろん、近所の買い物に使ったり、通勤で毎日往復40km~50kmのほど乗るクルマであれば、自宅での充電で十分であり、そんな心配もないのだろうが、休日に遠方へドライブや旅行に出かけることの多い場合は、BEVでは苦しくなる。たまにならよいが、毎回だと徐々にストレスに感じてきてしまうのだ。

 不便に感じる(かもしれない)ものに乗り換えるのだから、それを普及させるには、ハイブリッド車よりもさらに下、ガソリン車並み(ハリアーだと「ガソリンZ」403万円)の価格帯を狙わなければ難しく、そこからさらに、国や自治体からの補助金が用意されて、320~340万円ほどでbZ4XクラスのBEVが手に入るとなって、やっと購入検討する人が一気に増える、といったところではないだろうか。

2023年4月の上海国際モーターショーで世界初披露された「bZ Sport Crossover Concept」と「bZ FlexSpace Concept」。これらを普及させるには、クルマを磨くのと同時に、充電ポイントと充電スピードの改善が急務

充電環境のさらなる充実も必要

 また、車両価格と同じくらい、自宅以外でいつでも空いている充電ポイントの数と、充電スピードの改善がなされることも必要。1000kmなんていう航続距離よりも、車両価格の低減と充電環境のさらなる充実こそが、BEV普及の鍵なのではないだろうか。

 その点で、今回のトヨタの発表は、まだまだ道半ばではあるものの、BEV普及へ一歩近づいたように思う。次世代バッテリーを搭載したBEVの登場を、期待して待ちたい。

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  • EVに魅力があれば補助金なんかいらないし高くても売れる。
  • (できれば交換式の)ポストリチウムイオン電池を開発して、交換費用も1000円以下にすることです。すると、現在のEV価格が200万円~300万円安くなり、維持費が軽自動車よりも安くなります。そして、リソースを安全性やデザインの開発に集中します。そうなれば、EVの普及が本格化します、その日を待ちます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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