クルマにはモデルチェンジと呼ばれる概念が非常に多くある。
まったくの新型になる「フルモデルチェンジ」をはじめ、小改良を指す「マイナーチェンジ」、エンジン変更など大きな変更を指す「ビッグマイナーチェンジ」などさまざま。
近年はマイナーチェンジの回数が減少傾向にはあるものの、果たして商品力が向上しているのか疑問符がつくマイナーチェンジも多い。
逆に一部車種では毎年のようにマイナーチェンジを繰り返し、モデルを熟成していく傾向もある。しかしそれには多くの開発費も必要で、果たしてそれで本当に元が取れるのだろうか。
マイナーチェンジのなぞに迫ります。
文:遠藤徹/写真:ベストカー編集部
ベストカー2018年12月26日号
■どういうマイチェンなら売り上げが伸びるのか?
「マイナーチェンジ」とひと言で言っても内容は多岐に渡る。外装パーツの変更のみもマイナーチェンジ、新開発エンジンの装備もマイナーチェンジ、4WDの設定もマイナーチェンジ。
そう考えるとどんなマイナーチェンジなら販売台数は伸びる傾向にあるのだろうか。毎月200店のディーラーを巡るという遠藤徹さんに聞いてみた。
【当然ながらマーケットのニーズにいかに応えるかがカギ】
TEXT:遠藤徹
ひと目見て外観デザインを変える、違った仕様のグレードを設定、新開発エンジンの追加や性能向上、安全対策の充実強化など、よりマーケットニーズの高い改良内容だと伸びる確率が高くなります。
最近の成功例だとトヨタのシエンタ、日産セレナ、マツダのデミオなど。シエンタは2列シートを加え、トヨタセーフティセンスを充実させました。
大きく手を入れたマイチェンとして、セレナはe-POWER車の設定、デミオはガソリン1.3Lに替え1.5Lを加えています。
逆に内外装をほとんど変えないパターンはマイチェンの効果が持続しにくい傾向あります。例えば新グレードやボディカラーの設定。
またはエンジンの静粛性向上、燃費改良、安全対策に数点の新デバイスを加えただけ、など小幅の改良にとどめているケースは販売が伸びにくい。
大半のマイチェンがこのパターンですね。売れゆきが回復しても短期間で元どおりになってしまいます。
■昔はもっと頻繁にマイチェンしていなかった!?
最近は特定のメーカーやモデルを除き、マイナーチェンジの間隔が少し長いような気がする。2年に1回くらいはマイナーチェンジがされ、内装色やボディ色が増減したりライトの造形が変わったりなんてことも多かった。
例えばデリカD:5は2007年1月の発売開始。最初にマイナーチェンジを受けたのは2008年5月。その次のマイナーチェンジは2008年12月、さらに2009年11月には4WD車がマイナーチェンジと忙しい。
しかし今やマイナーチェンジの回数は一般的なモデルライフの車種ならそこまで多くない。なぜマイナーチェンジの間隔は伸びてしまったのだろうか?
【フルモデルチェンジサイクルが伸びたのが要因】
TEXT:遠藤徹
量販モデルは4~5年でフルモデルチェンジし、その中間の2~2.5年にマイナーチェンジを実施していました。
最近は5~6年のフルモデルチェンジサイクルで、その中間にマイナーチェンジ、さらにその途中で一部改良とフルモデルチェンジと同様にマイナーチェンジも延びる傾向にあります。
昔のマイナーチェンジは内外装のデザイン変更、新グレード、ボディカラーの変更など、内容が一律の傾向が強く、現代とは事情が異なっています。
■最近のマイチェンの傾向は"安全志向"?
最近マイナーチェンジしているクルマたちを見ていると傾向が見えるような、見えないような、正直「どこをマイナーチェンジしたの?」というクルマもある。
かと思えば予防安全装備を拡充させたり、エンジン排気量の変更などおよそ「マイナー」と呼ぶのが憚られるような大規模チェンジもある。
最近の傾向はいったいどのようなものだろう?
【予防安全装備に重点を置く傾向にある】
TEXT:遠藤徹
モデルによって改良内容が細分化している。技術的には燃費重視だったここ数年から比較すると、被害軽減ブレーキなど予防安全対策に重点が大きく変わりつつあるのが最近の傾向。
フルモデルチェンジ間隔の延長によって、モデルライフの中間で実施するマイナーチェンジが極めて重要な要素となり、大幅に改良をするモデルが増えつつあります。
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