毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 セフィーロ(1988-2003)をご紹介します。
【画像ギャラリー】比べてみるとよく分かる 歴代 日産セフィーロの“変遷”をギャラリーでチェック!!!
文:伊達軍曹/写真:NISSAN
■「落ち着きすぎず 若すぎず」で新しいセダンのイメージを作った初代
初代は、比較的若い層をターゲットとした「今までにないスタイリッシュなセダン」として誕生。
その後の2代目、3代目はオーソドックスなセダンスタイルへと軌道修正し、商業的にはまずまず成功を収める。
しかしブランドとしての「決定打」には欠けていたため、結局は車種統合の憂き目にあって消滅したセダン。それが、日産 セフィーロです。
ミュージシャンの井上陽水が走行中に助手席側の窓を開け、カメラに向かって「みなさんお元気ですか? 失礼します」と言う、妙にインパクトのあるテレビCMで話題となった初代セフィーロが登場したのは、バブル絶頂期の1988年9月。
初代セフィーロは同時期のローレルおよびスカイラインと基本コンポーネンツを共用する姉妹車でしたが、今で言う4ドアクーペのようなフォルムと斬新なフロントマスクは他の何にも似ておらず、斬新なCMと併せ、「何か新しいことが始まったのかも?」という好意的な予感を、当時の20代から30代の男性に強く抱かせました。
スタイリッシュなイメージを与える初代。車名のセフィーロはスペイン語で「西風」「そよ風、優しい風」といった意味を持つ。購入時にユーザーがエンジン・サスペンションなど細かい部分までオーダーできる「セフィーロ・コーディネーション」が特徴的だった
当初用意されたエンジンは2L直6が3種類で(SOHCとDOHC、DOHCターボ)、トランスミッションは4速ATと5MT。
エンジンとサスペンション、トランスミッション、内装生地、内外装カラーなどを好みに応じた組み合わせで注文できる「セフィーロ・コーディネーション」という販売方式も話題を呼びました。
1990年8月のマイナーチェンジで「セフィーロ・コーディネーション」を廃止し、1992年5月のマイナーチェンジでは2.5L直6を追加するとともに、全車が5ATに進化。
しかしいろいろな点で初代セフィーロは斬新すぎたのか、人々に強烈な印象は与えたものの、実際の販売台数はさほど伸びず、1994年7月に生産終了となりました。
そして同年8月、初代と入れ替わる形で登場した2代目セフィーロは、ラージFFセダンとして国内外で販売されていたマキシマと統合され、スタイリッシュで斬新なFRセダンから「普通のFFラージセダン」へとその基本を大きく変えました。
そしてデザインも、言ってはなんですが普通というか、もっとハッキリ言えばちょっとおやじくさい造形に変更されました。
2代目。大型化しぐっと「セダンらしく」なったセフィーロ。とくに全高は初代の1375mから1410mmへとアップし、初代のシャープなイメージはなりを潜めた。駆動方式もFFからFRへと変更されている
しかし、FFのおやじセダンとなった2代目セフィーロは後席の居住性が良好で、立派なサイズではありますが「しかし意外と高くはない」という絶妙な価格設定により、商業的には成功といえる結果を残しました。
1998年12月には3代目へのフルモデルチェンジが行われ、基本路線は2代目を踏襲。すなわち「大柄でちょっと高級なFFセダン(にしては、そこそこ手頃なプライス)」という路線です。
この3代目もセールス的にはさほど悪くなかったのですが、2003年初頭にはローレルと統合されて生産と販売を終了。「セフィーロ」という車名はここで消滅し、実質的な後継統合モデルは「ティアナ」という車名を名乗ることになりました。
■セフィーロの不沈に見る「ブランドを継続させる難しさ」
ティアナが実質的な後継モデルにはなったわけですが、それでもとにかく「セフィーロ」というブランドが3代限りで消滅してしまった理由。
それは、根本的には「セダンが売れない時代になったから」という、いつもの理由なのでしょう。
老いも若きも「車といえばとりあえずセダン!」という時代は確かにありました。
しかしそれが終わってしまったならば、似たようなセダンを何種類もラインナップしておく理由はありません。車種を統合して整理するというのが、経営的には当然の判断となります。
しかし今回、痛感したのは「ブランドを継続させることの難しさ」についてでした。
さまざまな“ブランド”が各自動車メーカーから登場し、そして消滅していますが、今現在、健全な形でそこそこ長続きしているブランドは、果たしていくつあるでしょうか?
日産の「スカイライン」やトヨタの「カローラ」はかなり長く続いていますが、それは決して健全な形ではなく、「メーカーが無理やり名前を残している」という気がしないでもありません。
自然な形でそこそこ長く続き、なおかつ常に人気車種であり続けているのは、日産でいうと「エクストレイル」、トヨタなら「ハリアー」、スバルは「インプレッサ」、スズキだと「スイフト」ぐらいでしょうか?
もちろん他にもあるかもしれませんが、話が長くなるのでそこは深追いしません。
上記で挙げたような「長続きするブランド」と、「割とすぐに無くなってしまうブランド」の違いはどこにあるのでしょうか?
その答えは――といっても筆者が考えた仮説にすぎませんが――下記の式で表すことができるはずです。
・ブランド存続=(良ハード+エモさ)×継続
「ハードウェアの出来が良い」というのはブランドが存続するための必要条件ですが、絶対条件ではありません。
その証拠に、2代目、3代目の日産セフィーロは後席居住空間が改善され、走行安定性も向上しましたが、今となっては「ほとんどの人が覚えてすらいない車」と化しています。
ハードの出来が良いことに加え、人間のエモーション(感情、興奮、喜怒哀楽)をかきたてる要素も備えたときに初めて、その車は人の心を引きつける存在になります。2代目、3代目のセフィーロは、ここが大きく欠けていました。
ただ、これでもまだ十分ではありません。その証拠に、日産セフィーロは初代においてエモーション面では大成功し、ハードウェアも決して悪いモノではありませんでしたが、それでも、初代から数えて2世代後には消滅しています。
結局は、「ハードウェアが良い+エモーション成分も高い」というステキな融合体を数世代(最低でも3世代?)にわたって継続できたときに初めて、作り手からもユーザーからも「捨てがたい」「失くしてはならない」「次はさらに愛される存在に育てたい」と本気で思われる“ブランド”が、この世に誕生するのでしょう。
3代目。全長×全幅×全高はさらに4785×1780×1440mmにアップ。もし仮に初代のコンセプトのまま、セフィーロが代を重ねることができていたら、いまも日産のラインナップに名を連ねることができていただろうか?
日産セフィーロは「継続」という部分に難があったためブランドにはなり得ず、その名前はアッサリ捨てられました。
しかしそれを責めるのは――つまり、2代目でセフィーロをFFのおやじセダンに転向させたことについて日産を非難するのは、筋違いというものでしょう。ビジネスのため、売上のためには、仕方のない話だったはずです。
というか、そもそも「ブランドを作る」というのは非常に難しい作業です。「ブランド構築なんてできなくて当たり前」「車名なんてコロコロ変わるのが当然」ぐらいに考えておくのが、もしかしたら現実的なのかもしれません。
■日産 セフィーロ(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4690mm×1695mm×1375mm
・ホイールベース:2670mm
・車重:1320kg
・エンジン:直列6気筒DOHC、1998cc
・最高出力:155ps/6400rpm
・最大トルク:18.8kg-m/5200rpm
・燃費:8.3km/L(10モード)
・価格:236万2000円(88年式スポーツツーリング 4AT)
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みんなのコメント
しかも基本的な事実誤認や誤字も多すぎて酷い。