現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 新型ホンダ・ステップワゴンの取捨選択とは

ここから本文です

新型ホンダ・ステップワゴンの取捨選択とは

掲載 140
新型ホンダ・ステップワゴンの取捨選択とは

フルモデルチェンジしたホンダの新型「ステップワゴン」のテールゲートには、5代目で採用された「わくわくゲート」が廃止された。なぜか? 実車を見た今尾直樹が考えた。

奇想天外な「わくわくゲート」

最良の選択かもしれない──新型メルセデス・ベンツC220d試乗記

先頃、スタイリングが公開されたホンダの新型ステップワゴンは、5代目の目玉機構である「わくわくゲート」を採用しなかった。独創のホンダらしかったのに……と、惜しむ声が世間にはあるらしい。

わくわくゲートは、上ヒンジでタテに開くドアのなかに、ヨコに開くサブ・ドアがあるという、世にも複雑なリア・ゲートのことだ。現行5代目ステップワゴンの開発陣が、とあるショッピング・モールの駐車場で、後ろの壁との距離が狭くてリア・ゲートが開けられないミニバン・ユーザーや、高速道路のサービス・エリアで、3列目シートにお孫さんが乗り込むのを、クルマの外で待つ、おじいちゃん、おばあちゃんの姿を目撃したことから生まれたという。

リアにサブ・ドアがあれば、小さな荷物の出し入れや、ひとの乗り降りにも使えて、狭い駐車場で、あ、リア・ゲートが開かないではないか。仕方がない。ちょっと前に出そう。というような面倒が解消され、おじいちゃん、おばあちゃんが、外で、あー、暑い、もしくは、おー、寒い、と我慢を強いられることもなくなる。ホンダのミニバンはより使い勝手がよくなる!

そう考えた開発スタッフは、奇想天外なこのアイディアを実現するため、知恵を絞って安全性をクリアし、見事に世界初のサブ・ドア付きリア・ゲートの量産化に成功した。

歴代ステップワゴンのユニーク装備

それでも、売れなかった。♪風のなかのスバル~。

新型ステップワゴンのプロジェクトXは、競合に押されている現状を改善し、ホンダの国内営業の柱として育てていくことにあった。

開発責任者の蟻坂篤史氏は、現行(5代目)/歴代ステップワゴンのPDCAによって、「若干、プロダクト・アウトの傾向があった」という反省の弁を、昨年末に都内で開かれた事前説明会で述べている。

「PDCA」とは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act/Action(改善)の4段階を繰り返すことで継続的に改善する手法を、「プロダクト・アウト(product out)」とは、つくり手がいいと思ったものをつくるという考え方を、それぞれ意味するマーケティング用語である。老婆心ながら。って、筆者が知らなかったのですけれど。

プロダクト・アウトの対義語はマーケット・インで、顧客が望むものをつくる、という考え方だ。してみると、一概にはいえないにしても、トヨタはマーケット・イン、ホンダはプロダクト・アウトの会社だといえるだろう。

そのホンダのエンジニアが、「ユニーク装備に注力した反面、ミニバン基本価値が損なわれていた」と、PDCAで自己評価を下し、歴代ステップワゴンのユニーク装備の具体例として、わくわくゲートのほかに「フローリングフロア」「障子ルーフ」「ターボエンジン」等をあげたのだから、ホンダの危機感たるや、いかばかり。このままでは、オデッセイ同様、ステップワゴンの次期型の開発もままならなくなるかもしれない。

いずれの装備もホンダならではだった。しかし、売れなかった。♪風のなかのスバル~。

“素敵な暮らし”の定義

新型ステップワゴンのターゲット・ユーザーは、30~40代の子育て家族で、年収400~800万円とされた。彼らの特徴は、「小さい頃からミニバンがあって、ミニバンに慣れ親しんだ、ミニバン・ネイティブ」である、と蟻坂さんは定義している。

彼らはミニバンを「家族と一緒にいつでも・どこへでも、あらゆる用途に気兼ねなく使え、家族の幸せを表現するクルマ」、「自分と家族の様々な目的に対応でき、生活をより豊かにできるアイテム」だと考えている。ここで、“クルマ”を“アイテム”に置き換えていることに、われわれは注目しなければならない。

そして、新型ステップワゴンで掲げられた開発グランド・コンセプトの“素敵な暮らし”の中身について、われわれはいま一度検討する必要がある。

ミニバン・ネイティブのひとたちというのはおそらく、筆者の勝手な想像ですけれど、わくわくゲートなんてなくても、ミニバンのおかげで幸せな幼少期を送ったのだ。ショッピング・モールに家族で行って、リアのゲートから買ったものを積み込む際、あ、ゲートを開けるスペースがない、といってブツクサいいながら父親がクルマをちょっと前に出す。それを母親が、もうちょっと前、もうちょっと、とかいいながら後ろを見ている。もちろん母親がドライバーのケースもあるだろうし、子どもが見守っていたこともあるだろう。

あるいは、高速のサービス・エリアで、孫たちが乗り込むのをクルマの外で待っているおじいちゃん、おばあちゃんは、「寒っ」とかいいながら、孫たちが元気に3列目に着席する姿を見て喜んでいたのではあるまいか。

もしかしたら、わくわくゲートは、家族にとって、じつは楽しい時間をパスしてしまう装置であったのかもしれない。

もちろん、リア・ゲートの真ん中あたりにピラーを必要とするわくわくゲートは、いかにピラーの位置と形状を工夫しても、ピラーが必要なことに変わりはないから、後方視界が妨げられるし、後ろから見たときに冷蔵庫みたいでパッとしない、というようなことも、これまた筆者の想像ですけれど、あったかもしれない。

そもそも、ミニバンの購入意向者がわくわくゲートにたどり着く前に、スタイリングの面でトヨタ・ノア/ヴォクシーと日産セレナに負けていた。ミニバン・マーケットの主役は、いわゆるマイルド・ヤンキーと呼ばれるマインドの若者たちであり、彼らが求めているのは“オラオラ・デザイン”であって、冷蔵庫ではない。クルマが好きなわけでもない。必要だから買う、“素敵な暮らし”を実現するためのアイテムなのである。

わくわくゲートが廃止されたことを独創のホンダの終わりの始まりだ、と嘆いている人々に筆者は問いたい。

いま、子育て期の30~40代のミニバン・ネイティブが想い描く“素敵な暮らし”の中身をあなたはどう考えるのか? と。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)、Honda

文:GQ JAPAN 今尾直樹
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

右肩上がりのデリカD:5が改良新型でさらに魅力アップ!
右肩上がりのデリカD:5が改良新型でさらに魅力アップ!
グーネット
日産「セレナ」オーテックモデルもマイチェン! 収納性特化モデルをラインナップ追加
日産「セレナ」オーテックモデルもマイチェン! 収納性特化モデルをラインナップ追加
グーネット
最高出力1360ps!? メルセデスベンツ コンセプトAMG GT XXがモンスターマシンすぎる件
最高出力1360ps!? メルセデスベンツ コンセプトAMG GT XXがモンスターマシンすぎる件
ベストカーWeb
日野、北海道・東北・関東の直営販社5社を台湾の和泰汽車に売却
日野、北海道・東北・関東の直営販社5社を台湾の和泰汽車に売却
日刊自動車新聞
スズキ新型「コンパクトSUV」まもなく発売に反響殺到! 「“87万円オトク”なら購入検討したい」「内装が想像以上に豪華」「四駆だし雪道で強そう」の声も! 装備充実の「eビターラ」最高級モデルに注目!
スズキ新型「コンパクトSUV」まもなく発売に反響殺到! 「“87万円オトク”なら購入検討したい」「内装が想像以上に豪華」「四駆だし雪道で強そう」の声も! 装備充実の「eビターラ」最高級モデルに注目!
くるまのニュース
スーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストでオーバーテイクを促進する“P2Pシステム”を将来に向けた検討としてテスト
スーパーフォーミュラ・ライツ鈴鹿合同テストでオーバーテイクを促進する“P2Pシステム”を将来に向けた検討としてテスト
AUTOSPORT web
シンプルでカッコよく 快適な乗り心地を実現! ヤマハが開発した“電動アシスト自転車”「パスクレイグアリー」ってどんなモデル?
シンプルでカッコよく 快適な乗り心地を実現! ヤマハが開発した“電動アシスト自転車”「パスクレイグアリー」ってどんなモデル?
VAGUE
ロロ・ピアーナのオーバーコート──クラシックな定番アイテムから『GQ』が選ぶベスト・オブ・ベスト
ロロ・ピアーナのオーバーコート──クラシックな定番アイテムから『GQ』が選ぶベスト・オブ・ベスト
GQ JAPAN
やっぱスーパーカー世代のヒーローは「ミウラ」だよね! 半世紀以上前に登場した「黄色いランボ」がオークション登場 どこから見ても美しい“後期型”の価値とは
やっぱスーパーカー世代のヒーローは「ミウラ」だよね! 半世紀以上前に登場した「黄色いランボ」がオークション登場 どこから見ても美しい“後期型”の価値とは
VAGUE
大幅刷新の三菱「新型デリカD:5」正式発表! 斬新「4枚刃」グリルを「卒業」!? 精悍「黒マスク」で超カッコいい! 唯一無二の「SUVミニバン」どう変わったのか
大幅刷新の三菱「新型デリカD:5」正式発表! 斬新「4枚刃」グリルを「卒業」!? 精悍「黒マスク」で超カッコいい! 唯一無二の「SUVミニバン」どう変わったのか
くるまのニュース
驚くほど広がる後方視界、ホンダ「Nシリーズ」専用「リアビューミラー&カバー」が発売
驚くほど広がる後方視界、ホンダ「Nシリーズ」専用「リアビューミラー&カバー」が発売
レスポンス
日産 パトロールはどれくらいランクルを意識しているのか!? 日本導入を前にズバリ聞いてみた!!
日産 パトロールはどれくらいランクルを意識しているのか!? 日本導入を前にズバリ聞いてみた!!
ベストカーWeb
ホンダ旧横型ミニ系「北米専用」モデル「SL70」フルレストア フレームをパウダーコーティングでオールペイント!!
ホンダ旧横型ミニ系「北米専用」モデル「SL70」フルレストア フレームをパウダーコーティングでオールペイント!!
バイクのニュース
トヨタの新スーパーカー「GR GT」はなぜ“カーボンモノコック”ではなく“アルミ骨格”を選んだのか? LFAの悔しさが生んだ“新生フラッグシップ”のねらいとは
トヨタの新スーパーカー「GR GT」はなぜ“カーボンモノコック”ではなく“アルミ骨格”を選んだのか? LFAの悔しさが生んだ“新生フラッグシップ”のねらいとは
VAGUE
NISMO渾身のコンセプトモデルにマイナーチェンジの「Z」や北米人気の「ROCK CREEK」のカスタマイズ車両など豪華絢爛! 日産の「東京オートサロン2026」の展示車両から目がはなせない
NISMO渾身のコンセプトモデルにマイナーチェンジの「Z」や北米人気の「ROCK CREEK」のカスタマイズ車両など豪華絢爛! 日産の「東京オートサロン2026」の展示車両から目がはなせない
WEB CARTOP
日産「セレナ」待望のマイナーチェンジ! 魅力アップの「ルキシオン」に注目
日産「セレナ」待望のマイナーチェンジ! 魅力アップの「ルキシオン」に注目
グーネット
日産『セレナ』改良新型、「LUXION」「ハイウェイスターV」が新グリルで表情一新…278万5200円から
日産『セレナ』改良新型、「LUXION」「ハイウェイスターV」が新グリルで表情一新…278万5200円から
レスポンス
老舗のヤナセがついに軽EVを売る! 「ヤナセEVスクエア」がBYDとディーラー契約し2026年夏横浜に店舗をオープン
老舗のヤナセがついに軽EVを売る! 「ヤナセEVスクエア」がBYDとディーラー契約し2026年夏横浜に店舗をオープン
THE EV TIMES

みんなのコメント

140件
  • そうですか。わたしはそれが良くて現行車を契約しました。
  • 現行型ユーザーです。
    確かに左右非対称のデザインはあまり好みではないです。
    しかし使ってみると非常に便利。
    MC後で復活ORオプションで選択出来る様になれば・・・。
    わくわくゲート搭載でリア扉中央の支柱が視界の邪魔になる問題は
    デジタルインナーミラーを活用すれば良いので。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

334 . 8万円 396 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9 . 8万円 640 . 6万円

中古車を検索
ホンダ ステップワゴンの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

334 . 8万円 396 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9 . 8万円 640 . 6万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村