ハイパワーFF車にとって駆動にも操舵にも妥協は許されない。結果、導き出された答えはホイール幅のサイズアップ。市販が前提となるためその改良は簡単なものではなかったが
“12.7mm増”は、想定どおりのメリットをチーム&ドライバーにもたらした。
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ホンダ・レーシングのシビック・タイプR CNF-Rが2024年もS耐に参戦。毎戦ごとに異なるドライバーを起用へ
「自動車」を形作る各要素は複雑に関連しあう。路面からの入力ひとつとっても、タイヤからホイール、ホイールからハブやアップライト、そしてサスペンションを経由して車体に伝わる。
さらに細かく言えば、タイヤ内のエア、ハブに用いられるベアリング、サスペンション内のオイルなども媒介していて、おそらくすべての関連性を数字として正確に紐解くことは不可能だろう。
そしてレースでは、その各要素を極限の状態で使いつつ、バランスさせて運用することが求められる。
昨年、スーパー耐久のST‐2クラスで、最終戦に大逆転の末チャンピオンを獲得したホンダR&Dチャレンジだが、ライバルの躍進により2024年に向けては危機感を強く持っていた。
ハイパワーFFで4輪駆動勢にも対峙しなければならないため、タイヤをさらに適切に使うことが必要とされたのだ。
第2戦富士24時間からはタイヤがブリヂストンに変更になったこともあり、チームは車両のセッティングに加え、バランス向上のため使用するホイール「RI‐A」の仕様変更をBBSに相談をする。年末に打診し、今年3月31日にSUGOで行なわれたテストに試作品が届いた。
■違いをもたらす半Jアップ
「コーナーへのターンインから、旋回中のリヤの踏ん張りまで、すぐに違いが分かりました。旋回速度も上がりましたね。タイヤの剛性感にも影響して、これまでと異なり路面に引っかかってグリップが増すようなイメージです」と語るのは、同チームのCドライバー木立純一だ。
Aドライバーの石垣博基も同様の意見を述べる。「ブリヂストンのタイヤに対してこれまではリム幅が少々狭すぎました。新型シビックを投入するにあたって、ホイールのリム幅についてはそこまで攻めきれなかったんです」
「テストではこれまでのホイールの延長線上でリム幅を拡大したものと、幅のアップに加え剛性も高めたものを試し、結果的には後者を選択しています。ダイレクト感が増し、タイヤの状況がつかみやすくなりました」
ホイールはリム幅をST‐2クラスの規定上限となる10Jに変更。それまでの9.5Jと比べると12.7mm増となったが、これが操縦性にもタイヤの保ちにもポジティブな効果をもたらすことがテストで確認できた。
実はリム幅の決定には、レースだけを意識したものとできない理由があった。スーパー耐久で使用されるRI‐Aそのものが市販化もされるため、攻めたサイズ設定とすることが難しかったのだ。
しかし、レースでの使用でボディやサスペンションとの干渉など、まったく問題ないことが確認されたためリム幅のサイズアップに踏み込んだ。
BBSジャパン開発本部の村上貴志氏はこう語る。
「軽さを追求して20年、30年とやってきましたが、今は『剛性』と、ホイールの粘り強さを示す『靭性』の二面の強さをどう持たせるかが重要になっています。そして、ホイールが車体のバランスを崩してもいけません」
「近年はその取り組みが特に重要となっていますが、現代のクルマは電子制御なども含めて複雑に成り立っていますので、そこが我々開発陣にとっては難しくあり、面白くもあるところです」
ホイールの開発において、データやタイヤの状況を見て、ひとつの答えを導き出すことは可能だというが、レーシングカーは常々進化を続ける。チームやドライバーとの密なディスカッションは欠かせない。
「いかに勝負している方たちのフォローをできるか。サスペンションなどと異なり、レース現場でどうこうできるパーツではないですからね。チーム側と常々キャッチボールさせていただけている状況はありがたいです」
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■参戦初年度から使用するHonda R&DのBBSへの信頼度
Honda R&D Challengeでは、先代のFK8シビックでの参戦時からBBSを使用。「タイヤの重要性はもちろんですが、その次に大事なパーツがホイールだと思っています。タイプRは300馬力を超えるFFというある意味特殊な車両なので、いまだに我々も勉強していますし、性能向上について何かやれることがないかと考えたときに、相談して生まれたのが今回のホイールです」と木立。BBSとは共闘というかたちで課題解決に取り組む。
BBS Japan https://bbs-japan.co.jp
2024年6月29日発売 autosport No.1598より転載
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みんなのコメント
これでもう対等以上かもね。