今買える新車のセダンはわずか18車種
レジェンドが2022年3月をもって生産中止、日本を代表する伝統ブランドであるクラウンのジャンル変え、スカイラインの生産終了が噂されるなど、減少傾向に拍車がかかっているセダン。
「シーマ」「アリスト」「センティア」! バブル全盛期を謳歌した憧れの「とっぽい」セダン5選
ファミリーカーの座もミニバンやハッチバックに譲り、現在新車で購入できる国産セダンはわずかに18車種。5ナンバーセダンに至ってはカローラ・アクシオのみと、自動車の王道というべきカテゴリーがこの状況とは寂しい限りだ。 今回はセダンがマーケットの主役だった1990年代前半をプレイバック。ファミリーカーとして多くの人に愛用された車種を紹介しよう!
年間販売台数で王者カローラ越えを果たしたバブル&ハイソカーの申し子
6代目マークII(X80系)
1990年代のファミリーセダンの筆頭といえば6代目マークII。1988年にデビューし、1992年まで生産(セダンは1995年まで生産)。兄弟車のチェイサー/クレスタとともに時代を席捲、スーパーホワイトのボディカラーが街中に溢れかえっていた。 ハイソカーブームの立役者である5代目の勢いとバブル景気が上り調子の時期と相まって、エレクトロニックディスプレイ(デジタルメーター)、オートドライブ(クルーズコントローラー)、アームレスト付きマルチアジャスタブルパワーシート、後席液晶カラーテレビなど上級のクラウンに負けず劣らない豪華装備がふんだんに用意された。
エンジンもガソリン車はオールDOHC化。当時の自主規制いっぱいの280㎰を絞り出す2.5Lツインターボを筆頭に、2L直6DOHCターボ/スーパーチャージャー、自然吸気は3L/2.5L/2L/1.8L、さらに2.4Lディーゼルターボ/NAとワイドバリエーションを誇った。 シャーシは先代からのキャリーオーバーながら、リヤサスをセミトレ―リングアームからダブルウイッシュボーンに変更し、ハンドリング性能を底上げ。エンジンとトランスミッションの統合制御を行うことで、高級車に相応しい滑らかな走りも手に入れている。 キープコンセプトな手堅い作りで見た目に新しさは少なかったが、全体的な走りのポテンシャルアップ、質感の向上、幅広いグレード展開などトヨタらしい痒いところに手が届く配慮によって、幅広い層から支持された。
1990年には年間生産台数が30万台をオーバーし、カローラ越えを達成。アッパーミドルサルーンだけでなく、日本の頂点に立つなど、一時代を築いたことは間違いない。
小さくても恥ずかしくない! 大衆車のレベルを超えたハイクオリティセダン
8代目カローラ(E100系)
ハイソカーブームの高級路線の影響を受け、「クラスを超えた世界のハイクオリティセダン」をテーマに開発された7代目90系。それを超える歴代でもっとも豪華でお金のかかったカローラが、1991年に登場した100系だ。当時のフラッシップであったセルシオの影響を受けたと思える、威風堂々かつスタイリッシュなデザインは小さな高級車のような佇まいがあった。 エンジンは1.5Lを軸に1.3L、高効率なハイメカツインカムと高性能なDOHC5バルブという革新の1.6L、2Lディーゼルとワイド化なのは当時のトヨタの流れ。サスペンションは全車独立懸架(前後ストラット)。初の4WDを追加するなど、降雪地域でも人気を高めた。 インテリアもシートは新開発の立体型凹面シートを採用し、トリム類はソフトパット化。オートエアコンや電動格納式ドアミラー、車速感応式ドアロックなど上級車に採用された装備が選択可能になるなど、走り、質感、完成度を含めて大衆車を超え、次世代の基準を目指した意欲的なクルマであったのだ。小さいことが恥ずかしくない大衆セダンとして高い人気を集めた。
3ナンバー専用ボディをいち早く投入! 高級志向のユーザーを虜に
初代ディアマンテ(F10/F20)
庶民が手にできる高級車としてバブル期後半に登場し、スマッシュヒットしたFF/4WDのアッパーミドルセダンが三菱ディアマンテ。きっかけは1989年の消費税導入とともに行われた自動車税の改定。それまで高額だった2000cc以上の金額が大幅に引き下げられたことと、バブル景気という強烈な追い風により、3ナンバー車が売れ始めた。 ディアマンテはそのタイミングを見計らったようにデビュー。アッパー、ミドルを含めた当時のセダンの多くが、5ナンバーボディに2Lオーバーのエンジンを搭載した。付け焼刃のように3ナンバー化していたのに対して、ディアマンテは最初から3ナンバー専用設計のワイドボディを採用している。
人気のクラウンやマークIIを上まわる迫力あるボディと個性を持ち合わせながら、価格はリーズナブルという点が、高級志向かつ人とは違うクルマを求めるユーザーニーズと合致した。エンジンは2L、2.5L、3Lという3種類のV6エンジンを新開発し搭載する。
サスはストラット/マルチリンクを採用。マルチビジョンや三菱インテリジェントコクピットシステムの豪華装備はもちろん、電子制御サスペンション、4WSのハイテクシステムを搭載するなど、新時代のハイオーナーカーとして様々な世代から受け入れられた。日本のミディアムカーの歴史を変えた1台として、1990~1991年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。
日産の新時代到来の先陣を切ったハイメカ搭載のスタイリッシュスポーツ4WD
8代目ブルーバード(U12)
1980年代に日産の社内活動として動き出した「901活動」。1990年代までに動的性能で世界一を実現する」ことを目指したもので、実際に花開くのは1989年以降である。だが、その前段階としてほかのモデルも空力を重視したスタイリングや新技術がなどが次々と投入され、新世代到来を感じさせた。 その先陣を切ったのが、1987~1991年まで生産された8代目ブルーバード(U12 )。シャーシやパワートレインは先代のU11を踏襲した(前期はCA18エンジンが中心だが、後半は新しいSR20エンジンに置き換えられた)が、スタイリングはそれまでの直線基調の男らしいフォルムから全体に丸みを帯び、バンパーやトランクは緩やかに傾斜。 サイドビューはフラッシュサーフェス化されるなど、BMWの3シリーズのようなスマートな雰囲気に大変身! 4ドアH/Tだけでなく、セダンもリフィスティケートされ、パッケージに新しい時代の到来を感じさせた。
運動性の向上も著しく、ビスカップリングを使った新世代のフルタイム4WDシステムである「アテーサ」、後輪操舵の4WS機構の「スーパー・トー・コントロールリヤサス」を採用し、高い旋回性と走行安定性を実現した。
また、ニスモ×オーテックジャパン×日産工機の3社が製造に参画したモータースポーツ参戦ベース車両「SSS-R」も用意される。スポーツ性能を前面に押し出しつつ、十分な居住性も確保する高性能セダンとして年間販売台数でもトップ10に食い込むなど高い人気を誇った。
日本より欧州で高く評価。世界のジウジアーロが認めたスタイリッシュな1台
番外編・ユーノス500
日本では高い評価を得られなかったが、日本での生産中止後、約3年にわたって販売された。カーデザインの巨匠であるジョルジェット・ジウジアーロ氏に「世界でもっとも美しいサルーン」と評された1990年代随一のスタイリッシュサルーンが「ユーノス500(欧州名:クセドス6)」。
レビューもそうだが、当時のマツダのデザインは日本よりヨーロッパで高く評価されていた(イギリスではBTCCにも参戦するなど認知度も高かった)。 上質で斬新なキャラクターのクルマを販売する、マツダの新チャンネルとして誕生した「ユーノス」の軸となるサルーンとして1992年に登場。「いつまでも色褪せぬ価値」をテーマとしたユーノス500は、ランチアを彷彿させる前衛的デザインを採用。古典的なプロポーションながら、豊かな曲面で構成されたスタイリングは多くの自動車評論家を唸らせた。
また、美しさを保つために全モデルに高機能ハイレフコート塗装を採用したのも話題となった。室内もラウンディッシュな広がり感ある柔らかな雰囲気で、これまでの日本車とは異なる高品質、高級感を演出していた。
エンジンは可変共鳴過給システムを搭載する、1.8Lと2LのV6の2種類(後期には1.8L直4も追加)を設定。四輪ストラットの足まわりも専用チューニングが施され、欧州テイストの高速ツアラーとしての資質を高めていた。 ただ、走りを含めてクルマとしての評価は高かったが、時代と逆行するコンパクトなボディ、主張が強すぎるデザインは日本人には最後まで受け入れらなかった。今、同様のテイストをまとったクルマが見られることを考えると、時代が早すぎたのかもしれない。
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