パーツや作業の進化をユーザーも意識するようになる
空冷Zに現代のハイグリップラジアルタイヤを履いて楽しめるようにと2000年に現れたコンプリートカスタム、RCM(Real Complete Machine。現在はRadical Construction Manufactureに名称変更)。
今までに550台超が作られ、その9割近くが空冷Z系だ。この車両はRCM-533というシリアルナンバーの付いたモデルで、RCM自体にどんな変化が出てきているかを知るにも好適な近作だ。同店・中村さんに聞いた。
「オリジナルのST-IIフレーム補強やワイドタイヤ化にともなうチェーンライン軌道確保、それから精密内燃機加工や充実したパーツによるエンジン等はRCM製作の基本メニューです。その上でこの車両は、最初からアップグレードパーツを使った内容としているのが特徴になります。
RCMメニューには前述の作業以外にも基準があって、質や性能がコンプリートカスタムとしてふさわしくなるようなパーツを使うようになっています。その上で、オーナーさんの好みを反映させていくという具合。その中でも、より高質を目指したのがアップグレードだと考えてもらっていいです。
例えばRCMの基本にあるTMRキャブレターをMJN仕様やデュアルスタックファンネル仕様にする、マフラーを手間のかかったウエルドクラフトチタンにする。エンジン本体もハイプレッシャーオイルポンプやクランクケースのポンピングロス加工など、新しいメニューが入っていきます。
フロントキャリパーもブレンボ4Pですが、アキシャル(横置き)/キャストでなくラジアルマウントにする。しかもブリッジレイアウトのGP4 RX、さらにニッケルコート仕様……と、お客さんの方が先取り的に選んでくる感じです。
RCMの登場当初からも時間が経ち、当初使っていたZRX流用ホイールやアキシャルキャリパーも、時代的に古いと感じられるようになったんでしょう。実際にアキシャルキャリパーはリペアパーツも含めて廃番の方向に進んでいますから、お勧めしていいのか? という思いも出ています。
このように進化型パーツや作業が初めから織り込まれるのが今の車両の特徴にもなっています」
そう言われて車両の各部を見ると、確かに変化がある。中村さんの言葉にあるように、RCMという17インチ・オーダーコンプリートカスタムの基本は踏襲しつつ、製作時にアップグレード化も図られる。火の玉・丸タンクの全体感はそのままに、パーツも作業内容も最先端を走る。
単純にパーツだけを取っても、少し前にはなかった、あるいはZには似合わないと思われてきたようなものが、しっかりと取り込まれている。その取り込みの元には、RCM自体の進化もあった。両者がミックスして、さらにZカスタムの世界は先に進むという解釈をしていいだろう。
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Detailed Description 詳細説明
メーターはノーマルでヨシムラ・プログレスメーターを追加。ハンドルバーはPOSHスーパーロー、左右マスターはブレンボRCS。ステムはスカルプチャーSPステムキットTYPE-1でフォークオフセットは60mmから35mmとして前後17インチ化に必要なトレール量を確保する。
ひと目でZ1と分かる火の玉カラーはエンゼルが塗装。シートはデイトナRCMコンセプトシートでポジションを適正化、リペア時も安心だ。
エンジンは2mmオーバーサイズのピスタル製φ68mmピストンで[純正値:903→]958cc仕様に。バルブはHFバルブに換えバルブガイドは入れ替えて、バルブシートカット加工等も行う。クランクケースはポンピングロス加工、ミッションはドッグクリアランスシム調整、クラッチハウジングはPAMSでオイルポンプもオリジナルのトロコイド式など、ここまでのRCM製作等で積み上げられた内容がしっかり投入される。
キャブレターはTMR-MJNφ38mmのヨシムラ・デュアルスタックファンネル仕様で、電装はASウオタニに変更済み。信頼性も特性も安定させているのだ。
フロントはオーリンズRWUフォーク+ナイトロレーシング天吊りフェンダーのセット。ホイールはオーナーの好みでマルケジーニM10Sコンペエボ(前後3.50-17/5.50-17サイズ)。フロントブレーキはブレンボGP4 RXキャリパー/サンスターRCMコンセプトφ320mmディスクをチョイスする。
リヤサスまわりはスカルプチャーR.C.M.専用ワイドスイングアーム&オーリンズ・レジェンドツインショック。リヤブレーキはブレンボCNC・2ピストンキャリパー+サンスターφ250mmディスク。ブレーキラインは前後ともアレーグリ・ショルトシステムで、長さなどもこの車両用に専用化されているのだ。
取材協力:ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店)
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
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