現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なくなる前に乗っておきたいクルマ第1回──「大排気量ガソリンエンジン」

ここから本文です

なくなる前に乗っておきたいクルマ第1回──「大排気量ガソリンエンジン」

掲載 更新 14
なくなる前に乗っておきたいクルマ第1回──「大排気量ガソリンエンジン」

いつしか世の中から消えてなくなっていく物々、それはクルマに関連する物々も同様であろう。残された時間は(たぶん)わずかだからこそ、失われゆく物々を今のうちに、確実かつ濃厚に堪能したいもの。第1回は「大排気量ガソリンエンジン」、メルセデスAMGのC63 Sが搭載しているM177エンジンである。

ダウンサイズしてもまだまだ“4リッター”の大排気量

本家“クワトロ”の味をご所望の方に

「会社のデスクに灰皿を置き、ぷかぷかとタバコを吸う男性社員」「真っ黒で中が見えないゴミ袋」「練習中も水分を摂らせない運動部の顧問」。

そういった物々は、いつしか世の中から消えてなくなった。近ごろの若い人に「昔はそうだったんだよ」と言っても、おそらくは「いやまさか(笑)」と、信じてもらえないのではないかと思う。

そしておそらくはクルマに関連する物々についても近い将来──それが具体的に“いつ”かはわからないが──同様の現象が起こるだろう。

すなわち「左ハンドル」「大排気量エンジン」「マニュアルトランスミッション」、そしてそもそも「内燃機関」といったものの存在を若衆に説明しても、「いやまさか(笑)」と笑われるか、もしくは訝しがられる日がやってくるのだ。

そういった時代の変化に身をゆだねるというか、むしろ積極的に流れに乗り、テスラのEVなどをとっとと手に入れるのも一興ではある。

だが個人的には、残された時間が(たぶん)わずかだからこそ、そういった失われゆく物々を今のうちに、確実かつ濃厚に堪能したいと思っているのだ。

例えば「大排気量ガソリンエンジン」である。メルセデス ベンツAMGのC63 Sが搭載しているM177エンジンのような。

そもそもは独立チューナーとして活躍し、その後はメルセデスの1部門となったAMGは2007年、「排気量6.2リッターの自然吸気V8」という、未来人が聞いたら腰を抜かすか苦笑いすること間違いなしの大排気量ガソリンエンジンを搭載する、初代C63をリリースした。

初代C63が搭載したM156というV8エンジンは、「レーシングエンジンを市販車用にちょっとデチューンしただけ」ともいえる凄まじいモノだった。だがさすがにその後の時代の趨勢にはあらがえず、2015年5月に登場した現行型のメルセデスAMG C63およびC63 S(C63のさらなる高出力版)では、それまでの6.2リッター自然吸気V8から「4リッターV8ツインターボ」へと微妙なダウンサイジングが行われた。

しかしダウンサイジングされたとはいえ、まだまだ4リッターである。

同じメルセデスAMGでも、現行型のE53 4MATIC+というモデルのエンジンは3リター+マイルドハイブリッドという今どきの仕様になり、そしてCLA 45 S 4MATICという小ぶりなクーペのエンジンは2リッターの直列4気筒という可愛いサイズで、そこに最新のターボチャージャーを組み合わせることで、ひと昔前のフェラーリ製V8エンジン以上のパワーをひねり出している。

それらのような「小さなモノを効率的に爆発させることで、環境にも配慮しながらハイパワーを楽しむ」という優等生に比べれば、4リッターV8ツインターボの現行型C63 Sは──先代の6.2リッター自然吸気V8ほどではないにせよ──十分以上に「愛すべきお馬鹿さん」だ。

いくらハイパワーであっても「小さなモノが頑張って回っている」という感触はどうしたって伝わってくる1.5~3リッターほどのターボエンジンと違い、4リッターツインターボのM177エンジンを搭載するW205型メルセデスAMG C63 Sの感触を表現するには「豪快」との単語を使うのがふさわしい。

まずはそもそもの「音」が豪快だ。エンジン始動時、そして走行中のキックダウン時の咆哮は、ほとんど野獣あるいは怪獣の咆哮である。そしてひとたびアクセルペダルを踏み込めば、まるで背後から大怪獣に蹴っとばされたような、カタパルトから射出される航空機のような加速に、ドライバーは心地よいめまいを覚えることになる。

もちろんこの怪獣じみたパワーを適切に制御するため、現行型のメルセデスAMG C63 Sには9段階のきめ細かな調整が可能なトラクションコントロールや、十分なキャパシティを持つ可変ダンパーなどが準備されている。だがそれらハイテク分野についての話は今回の主題からは外れるため、まるっと割愛したい。とにかくこの4リッターエンジンに刮目したい! 買いたい! というのが本稿の主題である。

前期型の中古車なら500万円台からイケる

だが現行型のメルセデスAMG C63 Sというのは「買いたいぜ!」と思ったからといって、簡単に買えるクルマでもない。

端的に言って「けっこう高い」のである。

新車を買うとなると車両本体価格だけで1455万円であり、C63 Sにふさわしいオプション装備を付けていくと、諸費用込みの総額で1600万円ぐらいにはなってしまう。

「ならば中古車で! 」と思っても、スタビリティ性能が格段に上がったうえでトランスミッションが9速ATに進化した2018年7月以降の後期型は、おおむね1000万円から1200万円というのが相場。……依然、個人的にはキツい。

だが「前期型でも良し」と考えるなら、話は少々変わってくる。

2015年から2017年途中までの現行前期型C63 Sであれば、修復歴なしの走行2万km台までの個体でも500万円台から600万円台でイケるのだ。これぐらいであれば、筆者が今乗っている新型スバル レヴォーグSTIスポーツ(総額で約460万円)に毛が生えた程度……と、ちょっと顔をひきつらせながら言うこともできる。

ただし注意点は、前述のとおりスタビリティ性能が格段に向上した後期型と違って前期型C63 Sはかなりのじゃじゃ馬で、雨の日に運転するのはけっこう怖い──ということ。

しかしこれについても「じゃあ雨の日は乗らない!」と決めるだけで、いちおうは回避できる問題だ。

せっかく車庫にあるクルマに「雨だから乗れない」というのも業腹ではある(そもそも身体が濡れる雨の日こそ、クルマで移動したいものだ)。だがそれも「ある種の世界遺産を手に入れ、それを正しく維持運用するため」と思えば、おそらくは我慢もできるのではないか──と思うのである。

文・伊達軍曹 写真・ダイムラー AG. 編集・iconic

こんな記事も読まれています

「背の低いマツダ」ついに出た! 新「マツダ6」じゃないよ「EZ-6」中国で発表 “電動専用車”に
「背の低いマツダ」ついに出た! 新「マツダ6」じゃないよ「EZ-6」中国で発表 “電動専用車”に
乗りものニュース
マツダが新型「ロータリースポーツ」登場へ!? 美しすぎる「和製スポーツカー」のスペックは?価格は? 期待高まる「アイコニックSP」どうなるのか
マツダが新型「ロータリースポーツ」登場へ!? 美しすぎる「和製スポーツカー」のスペックは?価格は? 期待高まる「アイコニックSP」どうなるのか
くるまのニュース
SHOEI「GT-Air 3 SCENARIO」 “REALM”に続くグラフィックモデル登場
SHOEI「GT-Air 3 SCENARIO」 “REALM”に続くグラフィックモデル登場
バイクのニュース
フィアット500/500C、新グレード「ドルチェヴィータ」追加、ブルーカラーの限定車も発売
フィアット500/500C、新グレード「ドルチェヴィータ」追加、ブルーカラーの限定車も発売
レスポンス
ミツビシが新SUV時代を迎えるSCBに電撃復帰。ランサー以来の『エクリプスクロス』でトヨタ、シボレーに挑む
ミツビシが新SUV時代を迎えるSCBに電撃復帰。ランサー以来の『エクリプスクロス』でトヨタ、シボレーに挑む
AUTOSPORT web
ベントレーが家具の新コレクション発表「ミラノデザインウィーク2024」に出展して存在感をアピール
ベントレーが家具の新コレクション発表「ミラノデザインウィーク2024」に出展して存在感をアピール
Auto Messe Web
新ブランド「N」のバッジは半端じゃない! ヒョンデが持ち込んだ「IONIQ5 N」はサーキットも全開で走れる異次元のEVだった【動画】
新ブランド「N」のバッジは半端じゃない! ヒョンデが持ち込んだ「IONIQ5 N」はサーキットも全開で走れる異次元のEVだった【動画】
WEB CARTOP
【特集:最新SUV「絶対試乗!」主義(2)】「SV」を冠するレンジローバースポーツには、たぶん敵わない
【特集:最新SUV「絶対試乗!」主義(2)】「SV」を冠するレンジローバースポーツには、たぶん敵わない
Webモーターマガジン
三菱自、ルノー・キャプチャーベースの欧州向けSUV「ASX」を大幅改良
三菱自、ルノー・キャプチャーベースの欧州向けSUV「ASX」を大幅改良
日刊自動車新聞
MotoGPスペインFP1|母国戦のマルケス兄弟がワンツー体制でスタート! 弟アレックスが好調トップタイム
MotoGPスペインFP1|母国戦のマルケス兄弟がワンツー体制でスタート! 弟アレックスが好調トップタイム
motorsport.com 日本版
いすゞとUDトラックスが「ジャパントラックショー2024」に共同ブースを出展! いすゞグループの商品やソリューションを展示
いすゞとUDトラックスが「ジャパントラックショー2024」に共同ブースを出展! いすゞグループの商品やソリューションを展示
くるまのニュース
カワサキ、SBKワークス活動は終了「レース成功への情熱は今も変わらない。両メーカーのファンに活気を与えられると願う」と伊藤浩社長
カワサキ、SBKワークス活動は終了「レース成功への情熱は今も変わらない。両メーカーのファンに活気を与えられると願う」と伊藤浩社長
AUTOSPORT web
ホンダ・ヴェゼルがマイナーチェンジ。内外装を見直し、アウトドアテイストの新グレードを追加
ホンダ・ヴェゼルがマイナーチェンジ。内外装を見直し、アウトドアテイストの新グレードを追加
AUTOSPORT web
VW『ポロGTI』25周年、記念の限定車を日本で227台販売
VW『ポロGTI』25周年、記念の限定車を日本で227台販売
レスポンス
映画で見る「パトカーの体当たり」はガチで行われていた! 日本とは全然違うアメリカ警察の装備や行動
映画で見る「パトカーの体当たり」はガチで行われていた! 日本とは全然違うアメリカ警察の装備や行動
WEB CARTOP
人気女性D1ドライバー下田紗弥加プロデュース!! カーシャンプー「ドリシャン・サヤカエディション」がジャバから発売
人気女性D1ドライバー下田紗弥加プロデュース!! カーシャンプー「ドリシャン・サヤカエディション」がジャバから発売
carview!
【北京モーターショー2024】マツダの中国専用EV、PHEV 「EZ-6」と電動コンセプトカー「創ARATA」を初公開
【北京モーターショー2024】マツダの中国専用EV、PHEV 「EZ-6」と電動コンセプトカー「創ARATA」を初公開
Auto Prove
スーパーカーはもちろん実用車でも才気煥発! 鬼才ガンディーニがデザインした4台の傑作
スーパーカーはもちろん実用車でも才気煥発! 鬼才ガンディーニがデザインした4台の傑作
WEB CARTOP

みんなのコメント

14件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1116.01244.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

165.0740.0万円

中古車を検索
Cクラス セダンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1116.01244.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

165.0740.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村