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周囲と「違うモノ」を選びたい気持ち ジャガーXF 250PSでラストラン(2) 孤立を恐れない知的な雰囲気

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周囲と「違うモノ」を選びたい気持ち ジャガーXF 250PSでラストラン(2) 孤立を恐れない知的な雰囲気

現代の基準ではしっとりした乗り心地

筆者が乗るジャガーXF 250PSを走らせるのは、2.0L 4気筒ガソリンターボ。XJ時代に載っていた、大排気量の6気筒エンジンにパワーでは敵わない。

【画像】孤立を恐れない知的な雰囲気 ジャガーXF 内燃エンジン時代のサルーン、XEとXJも 全102枚

それでも、動的な特徴はしっかり受け継いでいる。最高出力は250psで、最大トルクは37.1kg-mと充分。0-100km/h加速を6.5秒でこなす。

乗り心地は、XJ並みにしなやかというわけではないが、現代の基準でいえばしっとり。テレビドラマ、「ロンドン特捜隊スウィーニー」でジャガーのサルーンを選んだ犯人も、気に入ってくれるだろう。

不足なく速く、後輪駆動。スタビリティ・コントロールの効きを選べ、ステアリングもクイック。パトライトを光らせたフォードのサルーンが追いかけてきても、倉庫街をすばしっこく駆け抜け、逃亡できるかもしれない。

しかし、サウスオール・ガスワークス・エリアも昔とは違っていた。グリーン・クォーターという名前で再開発が進み、高級住宅が並んでいる。条件の良い物件は、39万9000ポンド(7980万円)以上。警備員が配備され、子どもや犬が遊べる広い公園もある。

運河が近く、おしゃれなカフェも探さずに見つかる。この付近にも、ジャガー製サルーンのオーナーは見当たらないようだ。

もちろん、ラグジュアリーなXFは場違いに見えない。だが、電動スクーターや電動クロスオーバーなら、もっと映えるだろう。配送業者のバンも、良く馴染むが。

ステアリングは正確 シャシーは敏捷

ジャガーのサルーンが見つかりそうな場所を、もう一度考える。古い筆者の記憶は、あてにならないかもしれないが。

秘密情報部、MI6の職員は乗っているかも。体制的な組織だから、その重役なら可能性はある。テムズ川沿いに東へ進み、ロンドン中心部のミルバンクへ。ここには、SISビルと呼ばれる、英国の秘密情報部(SIS)の本部がある。本物の。

女優のジュディ・デンチ氏演じる「M」は、ジャガーに乗っていた。もちろん架空の人物で、リアシートに座っていたけれど。2012年の「007スカイフォール」では、ジェームズ・ボンドとMが、ジャガーからアストン マーティンへ乗り換えるシーンがあった。

フォード傘下だった時代には、ジャガーとアストン マーティンは近い距離にあるブランドだった。今日の筆者は、XFから乗り換えるつもりはないが。

法と民主主義の中心地に存在する、巨大な秘密組織。居心地が悪くなり、筆者は高速道路のM40号線へ入る。北西へ進み、一般道へ。カーブが連続する道を運転していると、XFが愛おしく感じる理由が見えてくる。

明らかに、グレートブリテン島特有の道路を中心に開発されたサルーンだからだ。全長は4962mm、全幅は1890mmという大柄だが、ステアリングは正確で、シャシーは敏捷。実際には、数字ほど大きく感じることはない。

数年前に英国価格は改められ、試乗車は4万1265ポンド(825万円)。サイズ的に競合するのはBMW 5シリーズでも、予算では3シリーズへ近い。コストパフォーマンスも素晴らしい。

周囲とは違うものを選びたいという気持ち

フロントに載るのは、軽い4気筒エンジン。バッテリーEVだけでなく、内燃エンジンのSUVでも達成が難しい、まとまりとバランスの良さを獲得している。純粋な運転の楽しさを味わえる。

とはいえ、時代は違う方向へ流れている。いまスポーティなサルーンに乗ることは、同調圧力へ抵抗するという気持ちも、多少は含まれているように思う。

そんな考えを持つ人物として、テレビドラマ「主任警部モース」に登場する、モース警部の現場を尋ねてみよう。この役を演じたのは、ジョン・ソウ氏。初放映は1987年だったが、彼は1959年に発売されたジャガーMkIIを運転していた。

30年後、テムズ・バレー・エリアを舞台にしたドラマの主役が乗る愛車として、XFは登場するだろうか。クーペのFタイプなら可能性はある。2050年に、主任警部モースの復活を検討する企画陣が、フォルクスワーゲン・ティグアンを選ぶとは考えにくい。

ジャガーのオーナーには、周囲とは違うものを選びたいという気持ちがあるように思う。少しの気難しさや、妥協を許さないような気質も。それは、ジャガーというクルマにも表れているだろう。

この記事を通じて、犯罪者や偏屈な人物が乗るようなクルマだと伝えたいわけではない。誤解しないで欲しい。特にXFは、ジャガーが訴求力の高いサルーンを切望していた時期に生み出された、素晴らしいモデルだ。

BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスと比較され、高く評価されてきた。ジャガーの歴史に、XFは刻まれることだろう。

優雅で大胆 孤立を恐れない知的な雰囲気

ライバルほどのデジタル技術は備わらず、多様なバリエーション展開はされなかったかもしれない。それでも完成度は高く、スポーティなRは、圧倒的な動的能力でクラスをリードする水準にあった。

端正なスタイリングは、多くのデザイン賞も勝ち取った。JDパワーによる市場調査では、顧客満足度トップに輝いたこともある。

ジャガーは、「速く、美しいクルマ」というキャッチコピーを掲げていた時期があったが、XFはまさしくそんなモデルだった。XKやFタイプと同様に。

XFはブランドを救えなかったとしても、SUVのFペイスを生み出し、新しいXJを生み出すための基盤を作った。ひと回り小さいXEを導き、ステーションワゴンのスポーツブレイクも際立つ存在になった。

ジャガーのサルーンは優雅で大胆で、周囲に流されない選択肢になってきた。孤立を恐れない、知的な雰囲気を放ってきた。次の時代のジャガーにも、これらの特徴は受け継がれるはずだ。

ジャガーXF インジニウム2.0 250PS(英国仕様)のスペック

英国価格:4万1265ポンド(約825万円)
全長:4962mm
全幅:1890mm
全高:1456mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:6.5秒
燃費:12.3km/L
CO2排出量:186g/km
車両重量:1735kg
パワートレイン:直列4気筒1998cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:250ps/5500rpm
最大トルク:37.1kg-m/1300-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

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