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チャンピオンになっても、茨の道は続く。川合孝汰、目論んだGT500昇格は果たせず「『結果を出せば話が来る』と思っていたけど、甘くはなかった」

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チャンピオンになっても、茨の道は続く。川合孝汰、目論んだGT500昇格は果たせず「『結果を出せば話が来る』と思っていたけど、甘くはなかった」

 2024年シーズンのスーパーGTがまもなく開幕を迎えるが、今季はディフェンディングチャンピオンがふたり不在のシーズンとなる。ひとりは、TGR TEAM au TOM'Sで坪井翔と共にGT500王座に輝き、今年はFIA F2などの海外カテゴリーに挑戦する宮田莉朋。そしてもうひとりが、埼玉トヨペット Green Braveで吉田広樹と共にGT300タイトルを勝ち取った川合孝汰だ。ただ川合に関しては、3月になっても今季のレース活動に関する話が表に出てこず、動向に注目が集まっていた。

 そんな中で川合が公の場に姿を見せたのは、レーシングドライバーではなく、“監督”としてだった。4月2日に行なわれた記者会見で、TVアニメと連動したレーシングチーム『HIGHSPEED Étoile Racing』の総監督に就任し、KYOJO CUP等に参戦することが明らかにされたのだった。会見の中では海外レースに挑戦する意向も口にしていた川合だが、彼は今後レーシングドライバーとしてどのような道を歩もうとしているのか? 話を聞いた。

■TVアニメ『HIGHSPEED Étoile』とコラボしたレーシングチームが誕生! 川合孝汰監督のもと女性ドライバー2名が挑戦

「自分は元々F1に乗りたくてこの世界に入っているので、海外志向なんです」

「フォーミュラカー志向も強いです。今は時代の流れもあってフォーミュラEなどといったカテゴリーもありますが、ああいった世界に行きたいと思っています」

 そう語った川合。実は本人としては、GT300でのチャンピオン獲得という結果を足がかりに、GT500クラスへステップアップすることを目指していたという。それも、自らが目指す“海外”へのチャンスに繋げるためだ。

 川合自身、GT300のシートが向こう10年安泰だとも考えていなかった。多くのチームが3年ほどのスパンでドライバーを入れ替えていると感じた川合は、Green Braveでの3年目となった2022年シーズンにスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)に参戦。資金的な問題でスポット参戦となったが、ポールポジションを獲得するなど光る速さを見せた。

 そしてGreen Braveでの4年目のシートを得た2023年には、ついにGT300チャンピオンに。満を持してGT500へのステップアップを目指したが、同年のオフシーズンはドライバーマーケットの動きが早かった上、そもそもメーカーの育成ドライバーではない川合がシートを掴むのは容易ではなく、目論見は外れた。Green Braveとの契約も、チーム方針もあってこの年限りということになった。

「実際のところ、GT300でチャンピオンを獲ってGT500に上がりたかったというのが本音です」

「そして、そこからメーカーのサポートの下で海外に行く方が、自分の家庭状況などを考えても可能性があると思っていました。チャンピオンを獲ったし、何かに繋がると思っていましたが、そんなに甘くなかったのが正直なところです」

「僕はプライベーターで、メーカー育成ドライバーではありません。(かつて川合が所属した)ル・ボーセが撤退する時にたまたま埼玉トヨペットさんに拾っていただき、そこからの4年間の活動があってこそ今があるので、感謝しかありません。運良くこの世界に残していただき、デビュー戦で優勝したり、そこそこ目立てたと思っていましたが、そこから何かに繋がることはありませんでした。SFライツをやってポールを獲ったりもしましたが、そこから繋がることもなく……」

 チャンピオン獲得から一転、トップカテゴリーでのシートを失うことになった川合だが、決して下を向いているわけではなく、海外でのレース参戦に向け動いている。具体的にはニュルブルクリンク耐久シリーズへの参戦を計画しており、最初はライセンス講習も兼ねた形での参加になるようだが、ゆくゆくはトップカテゴリーからのニュルブルクリンク24時間参戦に繋げ、その実績から海外チームとのパイプを広げたい構えだ。

 もちろん、その先には成功が約束されているわけではなく、茨の道が続くのは確かだろう。まず大前提として、メーカーの後ろ盾のないドライバーが国内最高峰カテゴリーにステップアップすること自体難しいのが昨今の国内レース事情。ただその中でも、“非メーカー系”ながらチャンスを掴んだドライバーがいないわけでもない。

 そういったチャンスを掴む上で、これさえあれば自分の未来は変わっていたかもしれない……今になってそう思うような要素はあるかと問いかけると、川合は次のように答えた。

「僕としては“繋がり”だと思っています」

「その辺りをうまく立ち回っているドライバーも多いと思いますが、僕はそういうのが苦手でした。色々な方には『そういうのは早めに動いた方がいい』とアドバイスをいただいていたんですけどね」

「というのも、僕は元々チーム移籍をしたことがありませんでした。カートもひとつのチームでやってきて、ル・ボーセから埼玉さんに行ったのも、移籍ではなくてチームの撤退によるものでした。どこかのチームに所属している時に、別のチームと話をしたことがそもそもありませんでした。『そのチームにお世話になっているから、他チームには動かないようにしよう』といった考えもル・ボーセ時代からありました」

「そういった理由で『結果があれば話が来るだろう』と思ってしまっていたのは事実です。だからこそチャンピオンを獲ることだけに必死になっていました。そこで何かに繋がらず、『やっぱり違うじゃん』と気付いたわけですが、もっと早く気付けていれば、もっと幅広く活動ができていたのかもしれません」

 ル・ボーセでのF4時代から、メーカー育成のドライバーに割って入ってシリーズ3位になるなど、存在感を見せていた川合。思い描いた形でのステップアップは果たせていないが、これまで勝ち得てきた確かな実績を携えて、2024年は“活動の幅を広げる”という新たなチャレンジに足を踏み入れようとしている。

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