内閣総理大臣が「2035年までにすべての新車販売を電気自動車(EV)やハイブリッド車をはじめとした電動車へ転換する。と明言すると、東京都は国よりも約5年前倒しして、2030年までに都内で販売される新車すべてを電動車に切り替えるという方針を示した。
これに呼応するかのように2020年は、国産車ではレクサス『UX300e』、ホンダ『ホンダe』が登場。さらに輸入車ではプジョー『e208』『e-2008』、DS『3クロスバック Eテンス』、アウディ『e-tronスポーツバック』そしてポルシェ『タイカン』が導入された。
このように見ると国内外問わずEVのラインアップ強化が行われているように見えるが、ユーザーの動きは鈍い。それはEVが総じて高価格であることと、そしてマンションなどの集合住宅では充電設備に懸念材料があるからだ。そこで、待ったなしで迫る電動化社会だが、現状のEVの中古車事情はどのようになっているのか検証してみる。
文/萩原文博
写真/NISSAN、TOYOTA、HONDA、編集部
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■EV購入は時期尚早!? 買取参考価格から見るEVの現実
新車の場合は、人気の高い車種でも納車までの期間が長くなるだけで、車両本体価格が高騰するということはない。しかし需要と供給のバランスで価格が決まる中古車の場合、新車時価格が同じで同じ走行距離、年式であっても車種の人気の有無によって買取や下取りの査定価格が変わってくるし、販売価格も変わってくる。
例えば、国産Lサイズミニバンのトヨタ『アルファード』と日産『エルグランド』の中古車相場を見れば一目瞭然だ。新車価格はほぼ変わらず、スペックもそれほど差はないがユーザーの人気は圧倒的にアルファードに軍配が上がるため中古車相場は大きな差が付いているのだ。
したがって、電動化社会に向かってEVの人気が高まっているのかどうかを買取や下取りの査定価格からまず検証してみることにした。査定価格は大手自動車メーカーの買取参考価格を引用している。
最近はテスラの陰に隠れて目立たないが、実用本格EVの元祖、日産『リーフ』。初代、2代目とも現在の買取価格の相場は新車価格の何%くらいなのだろうか?
買取参考価格を算出したのは、国産EVのパイオニアである日産『リーフ』。2010年に初代モデルが登場し、2代目となる現行モデルは2017年9月から販売開始されている。
調べたグレードは新車価格381万9200円の「X(40kWh)」と、新車価格499万8400円の「e+G(62kWh)」だ。リーフを新車で購入すると様々な補助金が適用されるので、諸費用を含めた乗り出し価格はかなり安くなるが、同クラスのガソリン車と比べると割高だ。
まずは2019年式の買取参考価格を調べてみると「X(40kWh)」は約175万円。そして「e+G(62kWh)」は約268万円。残価率はX(40kWh)が約45.8%、e+G(62kWh)は約53.6%と登録からわずか2年でグレードによっては査定価格が購入価格の半分以下となってしまうのだ。さらに、2021年に初めての車検を迎える2018年式のX(40kWh)は約152万円、残価率は約39.7%という驚きの結果となった(e+G(62kWh)は未発売)。
そして、初代リーフの2021年で2回目の車検サイクルとなる2016年式の買取価格は新車時価格372.1万円の「G(30kWh)」が約65万円、新車時価格337.8万円の「X(30kWh)」は約61万円で残価率は「G(30kWh)」が約17.4%、「X(30kWh)」は約18.1%となってしまうのだ。
初代リーフ。元々の搭載電池容量が少ない上、バッテリーの経年劣化もあり、一充電の航続距離が街乗り+α程度の実用性しか望めず、残念ながら買取価格は暴落中だ
この数字がどういうことを示しているのかを検証するために、ハイブリッド車のトヨタ『プリウス』の買取価格と比べてみる。新車価格335万9000円の「Aプレミアムツーリングセレクション」と282万6000円の「Sツーリングセレクション」を調べてみた。
2年落ちの2019年式はマイナーチェンジ後のモデルとなる。それを踏まえた買取価格はAプレミアムツーリングセレクションが約224万円、Sツーリングセレクションは約200万円となっている。
残価率はAプレミアムツーリングセレクションが約66.7%、Sツーリングセレクションは約70.7%となった。そして、2021年初の車検を迎える2018年式の買取価格では、Aプレミアムツーリングセレクションは約193万円、Sツーリングセレクションは約170万円で、残価率はAプレミアムツーリングセレクションが約57.4%、Sツーリングセレクションは約60.1%と高水準だ。
2回目の車検を迎える2016年式のAプレミアムツーリングセレクションは約164万円、Sツーリングセレクションは約150万円で、残価率はAプレミアムツーリングセレクションが約44.6%、Sツーリングセレクションは約53%と高水準だ。こうして見ると、プリウスは最上級グレードのAプレミアムツーリングセレクションよりSツーリングセレクションのほうがリセールバリューは高いということがわかる。
トヨタ『プリウス』。新車にかつての人気はないが、ハイブリッド車ならではの実用性の高さから、買取価格は安定している。買った後もさほど電池劣化におびえる事もないのも人気の理由か?
2016年式はリーフが先代モデル、プリウスが現行モデルという違いがあるので、ストレートに比較できないが、2019年式の残価率ではリーフが45.8~53.6%に対して、プリウスは66.7~70%。2018年式になるとリーフの39.7%に対して、プリウスの57.4~60.1%と差がさらに広がっている。
現行型プリウスは従来に比べると人気が落ちたと言われているが、この残価率を見ると人気車であることは一目瞭然。一方のEVのリーフは中古車となると、人気薄で割安感が目立つお買い得なモデルという図式がハッキリと表れた。この買取価格の差こそユーザーの人気を示すものであり、まだEVは時期尚早という感じは否めないのだ。
■割り切ることができればEVの中古車はなかなかお買い得
しかし、裏を返せばEVリーフの中古車は非常にお買い得となっているので、インフラや走行距離の問題をクリアできれば狙い目と言えるのだ。
リーフのもうひとつのウリ。家庭用蓄電池として数日分の容量を誇る。それでも長距離を安心して走行させるには心もとない。クルマを電気で走らせるには莫大なエネルギーを消費するのだ
現在リーフの中古車の流通台数は現行モデルが約560台、旧型モデルが約480台となっている。
現行型の平均価格は約266万円で、価格帯は約159万~約450万円。そして旧型の平均価格は約88万円で、中古車の価格帯は約23万~約186万円となっている。旧型リーフの中古車で100万円以下が約333台、50万円以下でも約65台も流通しているのだ。
50万円以下の初代リーフの中古車は走行距離が5万km以上と延びているし、バッテリーの容量も少ないので街乗り中心のセカンドカーと割り切りたい。しかし自宅に200Vの充電施設を作れるのであれば、ランニングコストはかなり抑えることができるのは魅力だ。
ただ搭載されているバッテリーは、急速充電の使用頻度が高いと性能の劣化が激しいのも事実。また年式が進んでいるにも関わらず走行距離が非常に少ないのもバッテリーを搭載しているEVとしてはあまりオススメできない。
リーフのモーターユニットと充電池。大きさの対比でみてもいかに電池が大きいかよくわかる。これだけの電池を搭載しても、長距離ドライブを安心してこなせる容量でないのがEVの現実
これはEVだけではなく、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も同じでオークション会場では嫌われる。しかし、50万円でEVを手に入れられるようになっているので、手軽に体験できるようになったのは喜ばしいことだと言える。これくらいの割り切りができないようであれば中古EVに手を出さないほうがいいだろう。
街乗りメインの使用法を前提とし、電池搭載量は少ないホンダ『ホンダe』。それでも数々の先進装備を搭載の結果、価格は約450万円~と超高額。数年後の買取価格はどうなるのだろうか?
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距離が走れないのに4年乗ったらリセール激安。
中古車はさらに短距離しか走れず、再買取りは値が付かない。
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