■新型「プレリュード」は“現代のデートカー”
ホンダから懐かしい名前“プレリュード”が復活します。ジャパンモビリティショー2023でそのコンセプトモデルとなる新型「プレリュードコンセプト」が発表されましたので、開発責任者のインタビューを交えながら紹介します。このクルマのキーワードは「デートカー」です。
【画像】超カッコいい! ”美しすぎる”ホンダ「次期プレリュード」を画像で見る(43枚)
1978年11月、「個性化時代の要請」に応えて、スポーティタイプの小型乗用車として初代プレリュードはデビューしました。
そのボディタイプはスポーティタイプの2ドアフィックストクーペ…つまりはクーペタイプとして歩みを始めたのです。また、新たにスペシャリティ―カーやRV車(のちのSUVなど)をメインとするベルノ店という新系列のディーラーができ、その専売としてラインナップしたのです。
そして2代目は1982年11月にFFスペシャルティカーとして登場。リトラクタブルヘッドライトやフロントにダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用するなど、当時のホンダとしては最先端の仕様でした。
世はまさにバブルに向けて盛り上がりを見せ、さらに、1983年からホンダがF1に復帰するなどでホンダは一気に階段を駆け上がる勢いだった時代です。
1987年4月、まさにバブル真っただ中に3代目プレリュードはデビューします。世界初の舵角応動タイプのホンダ4輪操舵システム(4WS)や、4輪ダブルウイッシュボーンサスペンション、新4輪アンチロックブレーキなど、ホンダ独自の数々の新技術を導入。
F1においてはコンストラクターズタイトルやドライバーズタイトルも獲得するなど破竹の勢いを見せていた時代ですから、当然乗用車市場も活況を見せ、プレリュードも2ドアクーペというボディタイプから若い男女のデートカーとして大ヒット。そのイメージも着実に手に入れていきました。
3ナンバー専用ボディとなった4代目プレリュードは1991年9月に市場に投入されました。排気量もそれに合わせて2.2リッターとなり、ボディ自体も車幅を拡大するなどで堂々とした印象に生まれ変わったのです。
そして1996年11月、5代目にして最後のプレリュードが誕生しました。大人っぽくなったデザインをまとい、Type Sには吸気抵抗の低減をはじめとする高出力化技術により、2次バランサー搭載エンジンとして初のリッター当たり100馬力、最高出力220PSを誇る専用エンジンを新開発するなど、高性能もアピールしていました。
しかし、バブルがはじけるなど時代は変わり、ミニバンの市場が拡大していくとともに徐々に2ドアクーペ市場は衰退していきます。その結果として各社とも2ドアクーペの生産を終了。プレリュードも2000年9月をもって23年という歴史に幕を下ろしたのです。
プレリュードが初代から一貫して変わらなかったことは、2ドアクーペであること、そして最新技術をまとい、走りを徹底的に磨き込んだスペシャリティカーだったことでした。
■プレリュードの市販化は確実!? そのコンセプトの意義とは
そんなプレリュードの歴史が再び動き出したのです。ジャパンモビリティショーのプレスカンファレンスで三部社長自ら新型プレリュードコンセプトに対し「現在、鋭意開発を進めています。ぜひ、ご期待ください」とコメントするように、市販化は確実で、かつそれほど遠くはなさそうな印象でした。
今回はハイブリッドとしか発表されず、ダイナミクス性能に関してはお楽しみにということでしたので、そのコンセプトやデザインについて開発責任者の山上智行さんに聞いてみました。
そのテーマは「二人の特別な時間」。まさにスペシャリティカーそのものです。
この二人というのは夫婦でグランドツーリングに行くというシーンだけでないと山上さんはいいます。
「お嬢さんがゴルフに行くときにお父さんが送っていく、お母さんと娘さんがお茶に行くなどのシーンを想像していくと、それはいまの時代のデートなんじゃないかと思ったわけです。
昔、プレリュードはデートカーともいわれましたので、現代のデートを楽しんでもらうような新たな価値観もあるのではないかと考えました」
ここにたどり着くまでにはある背景がありました。それは開発に際してのコンセプト…ホンダではグランドコンセプトについて次のように説明します。
「いまの社会ニーズだけでなく、お客様の潜在的なニーズがあると私は思っています。同時にホンダのモジュールや最新技術、そして当然この後向かうべき道を考えて、グランドコンセプト“アンリミテッドグライド”と定めたのです。これをベースにデザインやダイナミクス性能を練り上げていきました。
“いまのニーズ”で意識したのは、ジェネレーションXです。私もそうなのですが、自分だったらどうだろうというところから話がスタートしました。プレリュードは所有してはいませんが、プレリュードが全盛だった当時を振り返ると既に30年近く経っているんですよね。
そうすると世の中も変わりますし、自分も家族が増え、当然子どもがクルマに乗る世代になっています。つまりジェネレーションXとZが交錯、交流しているんです。ですからジェネレーションXのプレリュード世代はヘリテージなんですが、Zの世代ではプレリュードなんか知らないわけです。
しかし、親世代から昔のキラキラした思い出を聞いたり、ジェネレーションXの親子世代は子どもたちが世の中でやっていることを真似したり勉強したりする。こういう交錯した時代なんですね。
そして、この先の電動化時代への先駆け、すなわちプレリュードという名前が先駆けという意味ですし、前奏曲という意味もありますので、まさにホンダがこれから向かうべき道の序章になる。そこで再び現代に降りてきたのが、このプレリュードコンセプトなんです」
こういったところから、2ドアクーペというボディタイプや名前が決まっていったのでしょう。
■デザインのイメージは“グライダー”?
当然2ドアクーペであるからにはデザインはより重要です。そのインスピレーションはグライダーだそうで、「スムーズでクリーンなイメージ、大空を滑空するイメージ」から生まれました。
グライダーは機能の塊であり、空気の流れを計算しつくしています。そうしたところから、「ゴテゴテした加飾もないですが、シンプルという言葉で片付けるにはちょっと違う印象になっているでしょう」と山上さん。特にサイドビューのフロントからリアに向けて2本のキャラクターラインは空気の流れを表しているようにも見えます。
「実は“スポーツ”という当初のコンセプトワードから、デザイナーはサーキットを走るようなクルマとか、戦闘機をイメージする人もいました」とのこと。しかし、前述の社会環境などを踏まえていくと、戦闘機ではなくグライダーに変わっていったそうです。
そのグライダーですが、スムーズに滑空するイメージが強いのですが、スタント飛行もできます。つまり、プレリュードコンセプトの走りを表現するにもぴったりだったそうで、そこからイメージは広がっていったようです。
ですから、今回はダイナミクス分野の話はなしだったのですが、そういうところから、「想像して、楽しみにお待ちください」と少し嬉しそうに教えてくれました。
最後に山上さんは、以下のように語ってくれました。
「本当に私自身、心から欲しいと思いますし、社内でも予約リストができるくらいです。
この手のクルマは事業を考えると台数も多くは見込めませんが、想定しているお客様は多くいらっしゃることを期待しています。発売日は必ず来ますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います」
プレリュードの完成度にはかなりの自信がありそうでした。
2ドアクーペ市場はかなり厳しい状況にあるのは事実です。しかし、そこにプレリュードという新風が吹き込むことで、再び活性化されるのでしょうか。発売を楽しみに待ちたいと思います。
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