もくじ
ー 上品に しかし思い切り飛ばしたい
ー 「美人コンテストでは1位」
ー 紳士の直列6気筒
ー アストン マーティンDB7のスペック
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上品に しかし思い切り飛ばしたい
ホットハッチ、高性能サルーン、スーパーカーが多くの見出しを飾った1980年代初めから90年代には、GTの時代はデイトナやギブリで終わったと考えるひともいた。
しかし、エンスージァストの厳しい視線が注がれるこの市場で、今でも高級車メーカーは戦いを繰り広げている。そのターゲットは今も昔と同じ。つまり、趣味の良い上品なクルマに乗って、思い切り飛ばしたい超富裕層だ。
リムジンでは仰々しすぎて、ハイエンドサルーンでは少しソフトすぎるとしたら、スポーティクーペを選ぶしかない。しかし、どのメーカーを選べば良いのだろう?
個性ではアストン マーティンとマセラティが激しく競り合っている。フェラーリはミドエンジンに拘りすぎたし、かといってドイツ車では成り上がりだと思われる。幸いなことに、1990年代にはテクノロジー志向のニューモデルが一斉に登場した。
予算が1万ポンド(130万円)であろうと10万ポンドであろうと、またイタリア、ドイツ、それとも控え目な英国が好みであろうと、今回採り上げた90年代のグランツーリスモは、魅力に溢れ、誰もが憧れる。
印象的なデザインや息をのむような高性能、この上ない快適さが、かつての販売価格の数分の一で手に入る。それではバトルを始めよう。
「美人コンテストでは1位」
かつて「オールドアストン」と陰口を叩かれたDB7は、確実に値上がり傾向にある。例えイアン・カラムのしなやかなラインがなかったとしても、そうなっていたのだろう。なぜなら一時は不評だったDBSも、結局は受け入れられるようになったのだから。
DB7をほかのGTと比べてみると、果たしてどんな結果になるだろうか。
荒々しい外見のV8モデルを経て、アストン マーティンがかつて1950年代、60年代にDBで築いた栄光の日々をDB7は蘇らせた。1994年にMotor Sport誌は、「美人コンテストでアストン マーティンを負かすクルマはいないだろう」と記している。今でもそれは変わらない。
DB7の4年後にはマセラティ3200GTが登場するが、この2台のうち、美しいクルマとして認められたのはDB7の方だ。DB7はアストン マーティンを救い、このモデルのお陰でアストンは新世紀へと突き進み、それまで数十年間続いた財政難をひとまず棚上げにすることができたのだ。
筋肉質なフロントエンドはスーパーレッジェーラ世代のモデルを思い起こさせ、マツダ323Fのテールライトを装備したリアはやや迫力に欠けるにしても、華麗なラインがそんな弱点を忘れさせる。
キャビンはバールウォールナットで仕上げられ、シートはコノリーレザー張り、カーペットはウィルトン織りだ。£78,500(1020万円)を気前良く使う初代オーナーも納得の仕上がりだろう。ジャガーXJSをベースにするため、圧迫感もなく、贅沢さで包み込むような快適性を味わえる。
紳士の直列6気筒
エンジンをスタートさせても、ほかの2台のイタリア車のように酔わせるサウンドを響かせはしないが、トム・ウォーキンショー・レーシングの3.2ℓユニットはDBの伝統を確実に受け継いでいる。正に紳士の直列6気筒だが、この1台にはイートン製M90スーパーチャージャーが装備されている。
そのお陰でスロットルレスポンスは実に鋭敏。49.8kg-mのトルクが徐々に伝達されると、ブロワーが唸るようなサウンドが聞こえてくる。それは決して耳障りではないし、5500rpmでピークパワーに達する時には大きな満足感を与えてくれる。
ステアリングのアシストは強すぎることもなく、ブレーキの制動力は揺るぎないものだ。スムーズな4速オートマティックと、田舎道でも穏やかな乗り心地については、このクルマのスポーティなイメージを損ねるかもしれない。しかしストレートでは、最高に寛げるツアラーといえるだろう。
1999年にV12ヴァンテージがその座を奪うまで、DB7はアストン マーティン史上最高のセールスを記録した。今では6気筒モデルは希少だが、この方が維持費も安く、アストンの世界に入門しやすいことになる(フェラーリにそんなモデルはない)。
DB7には、アストン マーティンに相応しいメンテが必要であり、それなりの費用も掛かる。それでもドアミラーからリアフェンダーの膨らみを見返るたびに、このクルマを買って良かったと思うだろう。
アストン マーティンDB7のスペック
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