■ランボルギーニのV12を積んだミニバン「ジェネシス」
世界有数のスポーツカーメーカーであるランボルギーニ。50歳以上の「スーパーカー世代」には、カウンタックやミウラなどのスーパーカーが記憶に刷り込まれている人も少なくないでしょう。
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そんなランボルギーニも、V12エンジンをミッドシップレイアウトで搭載した「チータ」、その系譜を継ぎV12エンジンをフロントに載せた市販モデル「LM002」といったオフロード4WD車を製作・販売していたことがあります。
そして2018年には、4リッターV8ツインターボエンジンにより最高出力650psオーバーをマークする高性能SUV「ウルス」を発売。2023年には同社年間販売台数の約6割に相当する6000台以上を記録し、いまやランボルギーニの主力とも呼べるクルマになりました。
このように、ランボルギーニはスポーツカー以外にもユーティリティを重視したクルマがコンセプトカー・市販を含めていくつか存在します。とはいえ、ピープルムーバー(多人数乗車モデル)の雰囲気がないのも確かです。
そんなランボルギーニですが、とんでもないコンセプトとデザインなのに、5名の乗員が快適に移動でき、実用性が高い“ミニバン”を作ったことがありました。それが、ランボルギーニのためにイタリアの名門カロッツェリア「ベルトーネ」が製作したデザインスタディのジェネシスです。ランボルギーニ ジェネシスと呼ばれることもあるようです。
ジェネシスの登場は、1988年のトリノショー。極端に長いフロントオーバーハング、これまた極端に短いリアオーバーハングのワンモーションフォルム、広大なフロントウインドウ、二段式のサイドウィンドウなど、その未来的なディティール、特徴を述べたら枚挙にいとまがありません。
しかし、さらに驚きなのは、フロントドアに「ガルウィングドア」が採用されていたことです。
カウンタックなど、一連のランボルギーニ製スポーツカーのように真上に開く「跳ね上げ式」ではありませんが、横に開かないドアはまさにランボルギーニの象徴。開いた際の雰囲気は、どことなく甲虫類の硬い翅(はね)を思わせました。
■車内も奇抜!でも快適な移動ができそう?
車内には奇妙な形状のシートが2+1+2で配置されており、2列目以降に乗り込むには、車体センターのスライドドアを用いました。
通常、3列目に座るには2列目を前に移動したり、背もたれを前方に倒す必要がありますが、ジェネシスでは2列目をセンター1座にするという斬新な発想で、3列目へのアクセスを容易にしています。
そのため3列目の足元は広く確保されていました。なお助手席と2列目シートは、後方に向けることも可能でした。
窓の開閉は、二段式の窓の下段のみ可能で、後部にも小さなラゲッジスペースとリアゲートを設けていました。
ランボルギーニといえば気になるのがエンジンですが、ジェネシスにはなんと455psを発生する、カウンタック・クワトロバルボーレ用5.2リッターV12が選ばれていました。
搭載位置はミッドシップではなくフロントで、前席の乗員はエンジンの上に座るようなレイアウトを強いられました。そのため前席に乗り込むためには、フロントタイヤのタイヤハウスを乗り越える必要がありました。
巨大で重いV12エンジンを積んだ、全長約4.5m、全幅約2mの車体重量は1.8トンもあったといいます。
しかもエンジンに組み合わされるトランスミッションは、エンジンの性能と合わないクライスラー製3速ATだったこともあり、実際に走らせると、見た目や馬力のイメージほど速くはなかったそうです。
しかしそれでもV12エンジンを積んだランボルギーニのミニバン……というだけで、充分すぎる以上の凄みが感じられます。
※ ※ ※
コンセプトカーならではの「ぶっとび感」はありますが、それでもどこか現実的な提案もある不思議な“ランボルギーニのミニバン”ことジェネシス。さすがにこのままの未来的な姿や、フロントにV12を積むことはなさそうですが、ランボルギーニがジェネシスのような弩級のスーパーミニバンを発売したら、大きな話題を呼ぶのではないでしょうか。
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