この記事をまとめると
■1984年に発売されたランドクルーザー70シリーズ
60年前のランクル40にランクル70の中身で乗れる! トヨタ車体が奇跡の融合を実現した【東京オートサロン2023】
■トヨタは2014年にバンとピックアップのダブルキャブをそろえて復活させた
■今後も過去人気だったクルマが復活する可能性はあるのだろうか?
海外向けに長く生産を続けていることが条件になる
ランドクルーザー70シリーズは、40シリーズの後継車種として1984年に発売された。その後、1990年には乗用車感覚のランドクルーザープラドを加えるなど発展を図った。
そしてランドクルーザープラドは、1996年に2代目にフルモデルチェンジされたが、70シリーズのバン仕様は2004年まで生産を続けた。生産終了の理由には、NOx・PM法の抵触があった。規制をクリアしていないディーゼルエンジンは登録できず、当時の70シリーズはディーゼルだったから規制の対象になった。
このランドクルーザー70シリーズが、2014年にV型6気筒4リッターガソリンエンジンを搭載して突如復活した。近年では本格的な悪路向けのSUVが減り、ランドクルーザー70シリーズは貴重な存在になり、復活を望むユーザーも増えていたからだ。
しかもランドクルーザー70シリーズは、前述の通り1984年に発売されながら、オーストラリアやアフリカなどの海外向けには現時点でも生産されている。この背景には、車両が過酷な使われ方をする地域への対応がある。たとえ乗り心地や安全装備が大幅に向上しても、悪路走破力が少し下がれば、目的地に到着できない。その結果、乗員の生命に危険が生じることもある。「今の状態で十分だから、手を加えて悪路走破力を下げるリスクは避けて欲しい」という切実な願いがあるわけだ。
そこでトヨタは、ランドクルーザー70シリーズに走破力を妨げない細かな改良を加えることで、悪路向けSUVの完成形として守り続けている。トヨタはこのような商品も開発しているから「すべてを電気自動車にします」などとは絶対に言えないのだ。
以上の事情に基づいて、ランドクルーザー70シリーズは、バンとピックアップのダブルキャブをそろえて復活させた。ただし新しい基準には対応できず、2014年に復活して2015年には終了している。
消滅していた古いクルマが蘇るのは、ロマンを感じさせる話だ。2014年に行われた報道試乗会でランドクルーザー70を久しぶりに運転した時、私は意識せずに、ギヤチェンジの際にダブルクラッチを踏んでいた。それは1980年代に、少々疲労したランドクルーザー70シリーズを運転する時の乗り方だった。クルマと一緒に、私の運転スタイルまで蘇ったことに、胸が熱くなった。
しかしこのような例は稀だ。日本では販売を終了しながら、海外向けに長く生産を続けていることが条件になるからだ。たとえば日産パトロールは、1990年代に発売されたタイプが今でも生産されているが、ランドクルーザー70シリーズのように1980年代の前半までは遡らない。
仮にそのようなクルマが存在しても、保安基準などに対応できるかが問われる。さらに商品として成り立つのか、という課題もある。
その意味でユニークな例が、最近まで並行輸入車として日本でも販売されていたマルチ・スズキ・ジプシーだろう。1981年から1998年まで販売されていた2代目ジムニーの発展型で、4m少々のロングボディに直列4気筒1.3リッターエンジンを搭載する。インパネなどは、基本的に1981年当時と同じ形状だから、懐かしいクルマであった。
古いクルマを新車で買えるのは、魅力的なことだと思う。ユーザーになって運転すると、日本で現役として売られていた頃の気持ちまで蘇るからだ。ジジイになったからこそ味わえる、クルマの醍醐味だろう。
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