自動車関連サプライヤーでは安心・安全な移動を実現するためのセンサー技術の開発に力を入れている。安心・安全の観点からは自動運転技術に目が向くが、運転者や同乗者が安全で快適に移動するための技術開発も進んでいる。運転者の視線や脈拍、呼吸などをリアルタイムで監視し安全運転を促すなど、技術開発に各社がしのぎを削っており、「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」では最新技術が披露された。
会場では運転者モニタリングシステムを多くの企業が展示。京セラは、非接触のドライバー兆候モニタリングシステムで運転者の疲労や眠気などを速やかに検知し、事故防止につなげる仕組みを提案した。高精度のミリ波心拍センサーと自律神経の分析を組み合わせることで、高精度で運転者の状態を監視できるようにした。
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東海理化は、疲労や眠気、感情を推定するステアリングシステムを開発した。ハンドルに接触式センサーを内蔵して心電波形を測定するもので、疲労や眠気、感情を推定する。眠気や感情の動きに合わせて休憩を促したり、外部にSNSで通知したりもできる。「2025年の実用化に向け提案を進めており、快適な運転を支援できるようにしていきたい」(東海理化)。この仕組みは後付けのハンドルカバーでも実現できるとしている。
スウェーデンのスマートアイは、運転者の視線移動などを検知するモニタリングシステムを持ち込んだ。すでにボルボや日産自動車でも採用されており、後付けで設置できるモデルもある。「電源を取って簡単な設定をするだけで運転者モニタリングができるようになる。日本語対応もしている」(スマートアイ本社担当)という。
さらに同社は「インテリアセンシング」にも幅を広げ、運転者だけでなく同乗者やペットなど車室内の状態をモニタリングすることで安全性だけでなく快適性の実現にも取り組んでいる。
においに着目した技術も注目されている。クルマにはいろいろな人が乗り、飲食をする場合もある。車内のにおいが気になったという経験のある人も多いのではないだろうか。ここに目を向けたトヨタ紡織は「ニオイ検知システム」を開発中で、車室内のにおいを可視化し脱臭する仕組みなどを提案する。
センサーはアロマビット(東京都中央区)のニオイ可視化センサーを活用しており、あらかじめシステムに学習させたにおいをセンサーが検知した際にアラートが出せるようになる。このセンサーを自動車に搭載することを目指しており「シェアリング車両やロボタクシーなど、不特定多数の人が乗車する車両への実装などに向けて提案している」(トヨタ紡織)という。においを検知すると自動で脱臭するシステムなども作れるため、においから快適性を追求していく考えだ。
聴覚の観点から安全性や快適性にアプローチする技術開発も始まっている。東芝情報システムは、音の聴こえ方を自由に変えられるソフトウエアを開発した。開発した「サウンディメンション音像デザイン」は、スピーカーから出る音を自在に制御するもの。スピーカーの場所に関係なく任意の方向から音がしているかのように感じさせる「仮想音像」と、スピーカーの音を聴こえやすい場所と聴こえにくい場所に分ける「音場制御」の二つを実現した。
仮想音像では、前方スピーカーからの音を360度どこからでも聴こえるように制御できる。これらの技術を使えば、運転者や同乗者に合わせた音を出せるようになる。「エンターテインメントの領域で引き合いが増えているほか、カーナビゲーションの音声案内を運転者のみ聴こえるようにできるため提案していきたい」(東芝情報システム)という。
移動を快適にする技術開発は、カーエレクトロニクスメーカー各社も進めている。デジタル技術を活用して車室内を快適にしていく取り組みは、ますます熱を帯びそうだ。
(日刊電波新聞)
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