モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、1997年の全日本GT選手権を戦った『カストロール・トムス・スープラ』です。
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『エッソウルトラフロースープラ(2002年)』名機“3S”の最後を有終の美で飾ったスープラ【忘れがたき銘車たち】
1994年から2005年までの12シーズンに渡り、全日本GT選手権(JGTC)~SUPER GTを戦い続けたトヨタ・スープラ。その歴史において、印象に強く残っている、個人的に好きというカラーリングは、各々にあることだろう。だがその歴史のなかで、もっとも有名なカラーといえば“カストロール カラー”なのではないだろうか。
今回は、そんなカストロールカラーで唯一、そしてスープラに初のタイトルをもたらした1997年の『カストロール・トムス・スープラ』を紹介しよう。
1994年の参戦当初、グループCカーから多くの部品を流用してマシンが作られていたTRD製のJGTC用スープラだったが、1995年以降は年を追うごとにJGTC専用マシンとしての純度を高めていった。そして、1997年には、そのひとつの集大成とも呼ぶべきマシンへと進化を遂げた。
まず、ボディ内部に構成されるロールケージの開発には、FEM解析と呼ばれるトヨタのスーパーコンピュータを使ったシステムが使われるようになった。それまでロールケージは、実物を使って改良を重ねていくことが多かったが、設計の段階からコンピュータを使うことによって、より速く、そして緻密にボディ剛性を高められるロールケージを作れるようになったのだ。
サスペンションもTRDの「レーシングカーのサスペンションは、こうあるべきである」という考えを盛り込み、設計されていた。
搭載されるエンジンも大きく改良が加えられた。1996年より世界ラリー選手権(WRC)のセリカ向けに開発された661Eと呼ばれる3S-Gベースのエンジンをターボチャージャーを変更するなどして、JGTC専用に仕立てたユニットを使い始めていたのだが、1997年仕様ではさらにモディファイ。
エンジン自体をフレームの一部として使えるように高剛性化が図られたほか、吸気系の総長を短くして耐ノッキング性を上げ、圧縮比を向上させることにも成功していた。
このエンジンに組み合わされるトランスミッションは、1996年車では5速のHパターンだったが、この1997年車では6速のシーケンシャルへと改められた。
このようなさまざまなモディファイが重ねられた1997年モデルのスープラは、シーズン当初から快進撃を見せ、最終的には開幕戦こそ勝ちを落としたものの、6戦が行われたシリーズ戦のうち5勝をマークし、シリーズを席巻することになった。
そのスープラ勢のなかでも、『カストロール・トムス・スープラ』はミハエル・クルム、ペドロ・デ・ラ・ロサ組の36号車と関谷正徳、鈴木利男組の37号車という2台がシーズンを戦っていた(ちなみにこの年は、セルモが走らせる38号車もカストロールカラーであった)。
36号車は、開幕戦こそトラブルでノーポイントとなったものの、第2戦から第5戦までに2勝と2位1回、3位1回と完走したすべてのレースで表彰台に登壇する強さを見せ、最終戦を前にランキングトップにつけていた。
一方の37号車は勝利こそなかったものの、開幕戦から第5戦までのすべてのレースでポイントを獲得したほか、4度の3位表彰台を得る安定感でランキング3位につけ、逆転チャンピオンも狙える位置につけていた。
そして迎えたスポーツランドSUGOが舞台の最終戦。決勝レースは、あいにくのウエットコンディションのなか行われた。レース序盤にランキングトップの36号車とランキング2位のデンソーサードスープラが接触。これで36号車のタイトル獲得は難しい状況になってしまったかに思われた。しかし、レースは悪コンディションでスピンする車両が続出し、順位が次々と入れかわる目まぐるしい展開になる。
そんななか37号車やデンソー、ニッサン勢のZEXELスカイラインにもチャンピオン獲得のチャンスは巡ってきたが、最終的にはどの車両も36号車のポイントを上回ることができなかった。結果、序盤の接触で大きく遅れながらも修復してレースを続け、24周遅れながら完走した36号車にチャンピオンが転がりこんできた。
1994年のデビューから4シーズン目、スープラにとって初であり、そしてスカイラインGT-R以外の国産車が初めてGT500クラスの王座に輝いた瞬間だった。
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