非の打ち所のない最上級グランドツアラー
大きなボディのラグジュアリー・クーペには、逆らえない魅力がある。上級4ドアサルーンをベースとしたモデルの場合は特に。
【画像】これぞ高級クーペ CLクラス Sクラスと現行のSクラス・クーペ 最新のAMG SLも 全91枚
クーペというクルマは、少なからず実用性が犠牲にされている。優雅なスタイリングのために、より多くの金額を支払えるオーナーが運転するためのモデルだ。そんな存在感が、われわれを誘惑するのだろう。
ゴージャスなメルセデス・ベンツCLも、まさにそんな1台。Sクラスよりドアが2枚少なく、低くて短い。当時最先端の技術が満載された、非の打ち所のない最上級のグランドツアラーといえる。
メルセデス・ベンツのCLクラスは、1996年から2014年までに、Sクラスのクーペとして3世代が作られている。そのなかで今回は、2006年にリリースされた3代目をご紹介したいと思う。
C216型と呼ばれるこのモデルは、2代目のC215型と同じくらいハンサムだった。大きくカーブを描くルーフラインと、しっかり折り目のついたフェンダーラインは、ドラマチックですらある。
2010年にフェイスリフトを受け、容姿には更に磨きが掛けられた。現在でも、その圧の高い存在感は弱まっていないと思う。
上質な乗り心地 驚くほど機敏な操縦性
英国市場の場合、388psを発揮する5.5L V8ツインターボのCL 500、517psの5.5L V12ツインターボを積んたCL 600という2種類のほか、職人によるハンドビルドの5.5L V8ツインターボが525psを発揮するCL 63 AMGがラインナップされていた。
さらにCL 63でAMGパフォーマンス・パッケージを追加すると、最高出力は571psへ上昇。0-100km/h加速4.4秒のダッシュ力と、299km/hでリミッターが掛かる最高速度を獲得することもできた。
まだ不満というドライバーのために、メルセデス・ベンツはCL 65 AMGも用意。6.0L V12ツインターボが612psを発揮する、モンスター・クーペだ。2010年にマイナーチェンジを受け、5.5L V8は環境に若干優しい4.7L V8へ置き換わっている。
CLほど幅広い能力を備えたモデルは、なかなか存在しない。乗り心地は上質で、柔らかい枕に乗っているかのよう。それでいて、操縦性は驚くほど機敏。油圧制御のアクティブ・ボディコントロールを採用し、ハードコーナリング時も車内は水平が保たれる。
可変レシオのパワーステアリング、ダイレクト・ステアと、7速ATのダイレクト・セレクトという、新技術も目玉だった。
ヘッドライトはフロントタイヤと一緒に向きを変えるバイキセノンで、5段階の照射が可能。フォグライトはLEDで、ブラインドスポット・モニター、ドライバー監視、車線維持支援、ナイトビジョンなど、現代モデルに引けを取らない機能も装備する。
住みたいと思えるほど豪奢な内装
インテリアは、車内に住みたいと思えるほど豪奢。大人4名が、ゆったりくつろぐことができる。上級のCL 600には、エア圧で硬さを変えられるランバーサポート、マッサージ、ヒーターとベンチレーション内臓の電動スポーツシートが搭載されている。
インフォテインメントは、メルセデス・ベンツ独自のコマンドシステムを実装。ハーマン・カードン社のサラウンド・システムも、オプションで選択できた。
ダッシュボード中央のモニターは、運転席と助手席側で別々の情報を表示できる、スピリットビューもパッケージとして選択が可能だった。Sクラスのクーペとして、まったく不足はない。
メルセデス・ベンツCLクラスは、極めて豪華で重く、燃費は悪い。2022年に目指すべき精神には若干反する。しかし運転すれば、その豊満な印象に心が奪われるはず。
近年の中古車価格は、驚くほどお手頃。筆者も思わず1台を、と考えてしまう。
新車時代のAUTOCARの評価は
圧倒的な存在感に、シルキーな乗り心地。豪華絢爛なインテリア。Sクラスとして不足ないすべてが、このクーペに惜しみなく盛り込まれている。
CLクラスは、富の象徴として君臨している。4.7L V8エンジンが生み出すパワーも際立つ。しかも、これほど大きなボディからは想像できないほど、落ち着き払ってカーブを滑らかに抜けていく。
CL 63の信じられないような動力性能にも驚かされる。AMGの魅力に、惹き込まれないことの方が難しい。(2007年2月28日)
購入時に気をつけたいポイント
電気系統
この時期のSクラスと同じ不具合に悩まされがち。電気系統の修理には数千ポンド(数十万円)掛かることも珍しくない。ステレオ・アンプやエアーで調整するランバーサポート、キーレスエントリー・システムの故障などは想定内といえる。
バッテリー上がりは電気系統に大きなエラーを生む可能性があるため、長期間乗らない場合はトリクル充電器で電圧を保ちたい。バッテリーが劣化すると、ECUにエラーコードが残る。
エンジン
ウオーターポンプとオルターネーターは、駆動するベルトと同じタイミングで故障しがち。異音が出ていないか、聞き耳を立てたい。どちらもエンジンにダメージを与えることに繋がり、放置するほど修理費用も高く付く。
バランサーシャフトの、タイミングチェーン・スプロケットという部品の摩耗にも注意。
トランスミッション
ATフルードは、6万5000kmごとに交換しておきたい。試乗時は、滑らかに変速できるかどうか確認も忘れずに。
一部のオーナーは、シフトダウンできなかったり、リバースに入らないという不具合を報告している。専門店でソフトウエアの確認ができればベターだ。
サスペンション
パルセーション・ダンパーと呼ばれる、圧力調整ダンパーに不具合が起きることがある。交換後でも、硬い乗り心地が解消されない場合もあるという。正規ディーラーでシステム・リセットする必要がある。アクティブ・ボディ・コントロール用ポンプも弱点。
ボディ
内部の雨水経路がつまり、フロアへ流れ込むことがある。ECUも足元にあるため、水の侵入は電気的な不具合を招きがち。ドレイン・エアボックス内のラバー・グロメットが原因で、カーペットが湿ることも。ヒーターなどにも悪影響を与える。
ボディは意外に錆びる。サイドシルやホイールアーチをよく観察したい。可能なら専門家と一緒に、事前にしっかり確認した方が良いだろう。
専門家の意見を聞いてみる
アントン・モンタルバーノ氏:TMモーター社
「想像通り、信じられないほど快適で滑らかな走りを楽しめます。ただし、注意も必要。初期のV8ではアイドラー・ホイールが摩耗しやすく、交換はエンジンを降ろす必要があります。またV12では2つのイグニッションコイルが弱点。とても高価です」
「サスペンションも不具合を持ちがち。ショックアブソーバーやアクティブ・ボディ・コントロール用ポンプは、安く交換できません。徐々に経年劣化もしていきます」
「シートは、サポート用のエア漏れが珍しくありません。オーディオも弱点で、アンプの故障は想像以上に修理費が掛かりますね」
知っておくべきこと
高額な修理のリスクを避けるには、過去のメンテナンス記録の確認が有効。すべての電子的な装備が正常に機能し、定期的な整備点検を受けてきたかチェックしたい。
試乗可能なら、サスペンションの調子を確かめる。コーナリング時にボディがロールするようなら、新しいアクティブ・ボディ・コントロール用ポンプが必要かもしれない。
メルセデス・ベンツのコマンド・ナビゲーション・システムは、英国では正規ディーラーでソフトウエアのアップデートが可能だ。
英国ではいくら払うべき?
8000ポンド(約133万円)~1万2999ポンド(約216万円)
個人売買の3代目CLを英国では狙える価格帯。初期型で、走行距離は16万kmを超えるものが中心。もし探しているクルマが出てきたら、専門家と一緒に状態を確かめたい。
1万3000ポンド(約217万円)~1万9999ポンド(約333万円)
走行距離が短めで、正規ディーラーが販売するようなCLを選べる。それでも、エンジンとサスペンションの状態は良く確かめたいところ。
2万ポンド(約334万円)以上
整備記録が整った、走行距離の短い、状態の良いCLを英国では購入できる。多くの場合は、メルセデス・ベンツに詳しい専門店が扱っている。
英国で掘り出し物を発見
メルセデス・ベンツCL 500(英国仕様) 登録:2009年 走行距離:11万7400km 価格:9000ポンド(約150万円)
4オーナーで完璧な状態の3代目CL。整備記録がすべて残っており、車検も付く。ベンチレーション機能付きのシートにデジタルラジオ、熱線入りステアリングホイール、ハーマン・カードン・オーディオなど装備も充実している。
アルミホイールは18インチの5スポーク。シルバーというボディカラーも悪くない。
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