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ヤリスクロスGRスポーツで見えるトヨタのBセグ戦略【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

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ヤリスクロスGRスポーツで見えるトヨタのBセグ戦略【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

新車試乗レポート [2023.02.10 UP]


ヤリスクロスGRスポーツで見えるトヨタのBセグ戦略【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●トヨタ

新車値引き実例!ヤリスクロス/ホンダフリードが驚きの価格に!

 トヨタは2022年8月に好調のヤリスクロスを一部改良し、同時に「GRスポーツ」グレードを追加した。長引く部品不足で生産が進まなかったせいで、年末になってようやく広報車が入った。ただし期間限定の広報車である。GRから「是非乗って欲しい」とわざわざ連絡があり、それではと1月の終わりに借り出したのだった。

 地域によって多少差があるものの、GRスポーツに限らず、現在ヤリスクロスは、グレードによっては受注が止まっている場合もある。そうでなくとも長納期。ということで、記事にしたところで、読者がすぐに買える状態ではないのだが、足元の生産は回復基調にあるので、多分そのうち受注が再開されると思う。なのでどんなクルマなのかという話を、トヨタのBセグメント戦略とともに解説してみたい。

 結論から言えば、ヤリスクロスGRスポーツは、なかなか説得力のあるクルマに仕上がっていた。その話を説明するために、まずは、ヤリスファミリー全体の構造から書いていこう。


ヤリスファミリー
 まずは、ベースになっている5ドアのヤリスがあり、これとは別にモータースポーツ由来の3ドア系ヤリスがある。で、5ドア版のヤリスには、兄弟車としてSUV仕立てのヤリスクロスがある。

 それぞれ性格も異なっている。最も辛口なのがGRMNヤリスを頂点とする3ドア系モデル。決して乗り心地に閉口するほどではなく、むしろホットハッチとしては乗り心地が望外に良いとも言えるが、ホット成分をそもそも評価してくれない奥方を助手席に乗せると苦情が出ることはあるかもしれない。

 それに比べれば5ドア系のヤリスは、だいぶ安全である。多分これで怒られることはあるまい。しかしながら製品としての5ドアヤリスは、欧州においてフォルクスワーゲンのポロ対抗の役割をになっているので、性格としてはスポーティに振ってある。小気味よく曲がる身ごなしこそが信条である。

 一方で、SUVのヤリスクロスは、5ドアに比べても、クルマの挙動がだいぶマイルドになっている。乗って見るとそれは見事な見識で、例えば東京から名古屋までのロングドライブを前提に5ドアヤリスとヤリスクロスのどちらを選ぶかと言えば、ヤリスクロスを選びたくなる。のんびりゆったり気分の時は、キビキビが邪魔になることもあるのだ。ヤリスクロスはそれだけ落ち着きがあるということだ。ついでに言えば、そういう落ち着き系が好みだけれど、かと言ってSUVは要らないという人にはちゃんとアクアが用意されている。

 トヨタはそういう風にクルマの性格を意図的に作り分けたのだが、世の中には色々な人がいる。ヤリスみたいなキビキビした走りで、ヤリスクロスのカッコのヤツがどうしても欲しい。つまり穏やか系じゃなくキビキビ系のSUVを希望する人もいるのだ。


ヤリスクロスGRスポーツ
 そこに向けて用意されたのがヤリスクロスGRスポーツである。魅力は何かと言えば、SUVのアイポイントの高さとラゲッジユーティリティを持ちつつ、クルマをドライバーの支配下に置いてコントロールしきる楽しみが両立されている点である。しかも、ハーシュ系の乗り心地については、一切の妥協がない。

 そのために、ヤリスクロスGRスポーツは、まずボディを補強した。センタートンネルの2箇所に、補強のブレースを入れた。さらにボディ後端、バンパーの位置にも補強材が追加してある。これによってボディ剛性が向上した。

 サスペンションにも手は入っている。車高を10mm下げ、ばね、ダンパー、ブッシュ、電動パワステをチューニングすることで、レスポンスの周期を早める仕立てが行われている。

 もうひとつそこまでやるかと思うのは、パワートレインの制御を専用に開発し、加減速のレスポンスを向上させた。さらにモーターのレスポンスをよりダイレクトにするためにドライブシャフトのねじり剛性までも高めてある。まあ、GRチームの仕事なので、最初から疑ってはいないが、走りは見事なもので、キビキビ志向の人であれば、かなり満足が行くレベルにあると思う。

 でもお高いんでしょ? と思って価格を見たら、282.7万円。GRスポーツでないヤリスクロスのハイブリッドFFモデルが、228.4~270.5万円ということを考えると、なんだかとても安く思える。

 トヨタは今、Bセグメントの商品ポートフォリオを1ミリの隙間もないほど、埋め尽くそうとしているように見える。トヨタを見ているとそうは思えないのだが、それは本当は大変なことだと思う。商品群のカバー範囲を緻密に分析し、そこでカバーされていない顧客の数を掴み、ビジネスになるかどうかを検討した上で、その顧客の欲しい商品をピンポイントで企画して、Bセグのコスト制約の中で着実にリリースしていくわけだ。

 筆者はヤリスクロスGRスポーツに乗って、クルマの仕上がりを素晴らしいと思う以上に、この精緻なビジネス構築に舌を巻いたのであった。

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