■もくじ
どんなクルマ?
ーアイオニック、「トリ」はPHEV
ー1.6ℓ直4+モーター 目玉は6段DCT
まったくもって復活を期待しないクルマ7選 あなたは何台知っている?
どんな感じ?
ー基本EVだがエンジン介入過多 燃費良好
ーアイオニックPHEV 燃費や静粛性は?
「買い」か?
ー3種のなかで最良 ただゴルフGTEがベター
■どんなクルマ?
アイオニック、「トリ」はPHEV
ヒュンダイ・アイオニック第3の、そしてトリを飾るバリエーションが、このプラグインハイブリッドだ。
アイオニックがトヨタ・プリウスに挑むつもりなら、このPHEV仕様が最大の武器になるのは確実。通常のハイブリッドよりパフォーマンスに優れ、EVのように航続距離を心配する必要もない。3タイプの中で、スイートスポットと言えるのがこのバリエーションだ。
このアイオニック・プラグインに初めて乗ったのは、今年の5月、路面のスムーズさで知られるドイツの公道でのことだった。
今回は、もっと荒れてバンピーな英国の路上で、重いバッテリーを積んだこのクルマのサスペンションが試されるというわけだ。
スペック表を見るに、燃費は驚異の87.4km/ℓ、CO2排出量はたったの26g/km、ということになっている。これならば、ロンドン中心部乗り入れ時の課金が免除される。
ドライブトレインは、どのようなものだろう?
1.6ℓ直4+モーター 目玉は6段DCT
ドライブトレインは、基本的に通常のハイブリッドと同じもので、エンジンは105psの1.6ℓ直4。
しかし、フロントフェンダーにはタイプII規格の急速充電器用ソケットが設置され、8.9kWに拡大されたバッテリーと60psの電気モーターを用いたEV走行の使用範囲が拡大されている。
この拡大された電気システムは、16Aのウォールボックスを用いれば2時間15分で満充電でき、より長い期間にわたりドライブラインにトルクを送り続けることができる。
141ps/27.0kg-mのアウトプットはハイブリッド仕様と全くの同数値で、車輛重量は125kg増加しているのだが、0-100km/hの公称タイムは0.2秒削った10.6秒となった。
プリウスに用いられるCVTによる回転感が好きになれないユーザーにうれしいのは、6段DCTの採用だろう。ステアリングホイールの裏側には、シフトパドルも備わる。駆動輪は前輪だ。
PHEV仕様は、全車に7.0インチのタッチパネルを用いるHDグラフィックのインフォテインメントシステムを装備。Apple CarPlayとAndroid Autoもプリインストールされている。
試乗車は最高グレードのプレミアムSEで、シートとステアリングホイール、シフトノブはレザー、ダッシュボード上面はソフトタッチのプラスティックで覆われる。
■どんな感じ?
基本EVだがエンジン介入過多 燃費良好
PHEVと聞いて想像する通り、これは熱い走りを楽しむクルマではない。走り始めから感じられるのは、アイオニックの他バリエーションと同じキャラクターだ。
すなわち、リラックス気味で静かだが、全開加速にだけは驚かされるといった類のスタイルである。しかし、そうしたくつろいだ物腰となったのは偶然ではなく、このセグメントの顧客が電動パワートレインに望むものを検討した結果だ。
フル充電してあれば、デフォルトはEVモードで、モーター走行をメインに、激しい加速の際にのみエンジンがアシストする。残念なのは、エンジンの介入が必要以上に早く、モーターだけで走行できる距離が思ったほど長くないことだ。
それでも、燃費系の表示限界である99.9mpg(約35.4km/ℓ)を容易に超える。ヒュンダイによれば、EVモード時のバッテリーのみでの航続距離は60km強だというが、われわれが市街地でテストした際には50km弱しか走らなかった。
HEVモードに切り替えれば、発進時はモーターがフルに働き、それからエンジンが緩やかに介入し速度を2桁へと上げていく。スロットルを穏やかに操作すれば、一連のプロセスはシームレスに続く。
しかし、モアパワーを望むと、エンジンは突如として目を覚まし、ショックと唸りを伴い加速する。
スロットルペダルを踏み続けると、決して変速がクイックではないDCTが、加速を明らかに途切れさせ、中断なく前進するプリウスPHVに比べるとありふれたクルマに感じられるようになる。市街地の交通の流れに乗って走れば、燃費は19.5km/ℓといったところだ。
シフトセレクターをスポーツモードに入れると、デジタル表示の計器盤は赤く光り、メイン項目が速度からエンジン回転へと切り替わる。その際、車速は下の方に小さく表示されるのみとなる。
それではペースをあげてみよう。
アイオニックPHEV 燃費や静粛性は?
モーターならではの素早いレスポンスは、0-100km/hの公称値以上にこのクルマを速く感じさせるが、ある程度の速度に達したのちは一定して走るのみとなる。ボテッとしたタッチのサスペンションもあって、路面不整による振動は絶えず、エコカーらしさを強調している。
予測できることだろうが、ドライビングの満足感はハイブリッド・パワートレインをめいっぱい働かせることより、燃費や航続距離を延ばすことで得られる。
デジタルメーターには、回生システムによる充電状況や加速時の電力消費といった、エネルギーの流れが常に表示されている。
試乗中には、下り坂での20秒の惰性運転により目盛りひとつ分の充電がされることもわかったが、そうしてどのような走り方がエコドライブに効果的かを知ることもできるわけだ。
高速道路、とくにコンクリート舗装ではかなりのロードノイズが耳に届くが、これはドライブトレインの静粛性が高いために気になるという側面もある。
アダプティブ・クルーズコントロールやレーンキープ・アシストの装備で、ドライバーの負担は軽減されており、走行車線のペースをキープすれば、燃費は28km/ℓ以上をマークする。
同乗者のスペースに不足はなく、後席のレッグスペースも十分にある。ただし、これはプリウスPHVでも同様だが、後席中央は狭い。
■「買い」か?
3種のなかで最良 ただゴルフGTEがベター
アイオニック3兄弟の中では、最も完成度が高く、内燃機関から電動パワーソースへの過渡期である現在には最適の選択と言える。
プリウスPHVに対しては、価格面のアドバンテージはあるが、燃費面のコストはかつての試乗したプリウスの方が勝っている。
しかし、このクラスをリードするのはフォルクスワーゲン・ゴルフGTEだ。£30,635(438万円)とやや割高で、標準装備の内容もヒュンダイほど充実していないので、あくまでも金銭面が最重要項目だというなら、アイオニックを選びたくなるかもしれないが、このセグメントの最も円熟したプラグインハイブリッド車を手に入れたいなら、ゴルフGTEをおすすめする。
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