自動車専門サイトを作っていると、「普通のクルマでいいんだけどな」という声をよく聞きます。流行りのクロスオーバーSUVでなくてもいいし、次世代技術車でなくてもいい。「普通」で「いいクルマ」ならそれで充分だ、と。
なるほど確かにそういう皆さんは多いはず。そこで集めてみました「普通」で「いいクルマ」。
もちろんクルマにどんな性能や特徴を求めるかは人それぞれ。ここでは7つの「重視したい条件」を挙げて、そのベスト「普通のクルマ」を渡辺陽一郎氏にチョイスしていただきました。対象は現行日本車。あなた好みのフツーのクルマが必ず見つかるはず。満足できるクルマ選びのご参考に!
文:渡辺陽一郎
ベストカー2017年10月10日号
■「ロングドライブで疲れない」スバル インプレッサG4
長距離の移動ではクルマの総合力が問われる。乗り心地が快適で高速道路では直進安定性が優れ、運転操作に対して車両が正確に反応することも大切だ。運転に違和感が伴うと疲労に繋がって安全性も下がる。疲れないクルマは安全に使えて「普通のクルマ」の価値も高い。この代表がインプレッサG4だ。ドライバーの操作に自然に反応して動き、セダンボディでもあるから乗り心地、走行安定性、シートの座り心地も優れている。アイサイトバージョン3には、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールが備わり、高速道路の巡航ではドライバーのペダル操作を軽減する。そして、先代型ほどではないが、後方を含めて視界もいいから、不案内な地域の街中を走る時でも運転がしやすく、それゆえに安全性も高まる。
■「リアシートに余裕がある」日産 シルフィ
シルフィは平凡なセダンで売れゆきは低調だが、リラックスして運転できる。全幅が1760mmの3ナンバー車だが、サイドウィンドウの下端を低く抑えて前後左右ともに視界がよく、最小回転半径も5.2mだから5ナンバー車のように運転できる。普通のいいクルマの典型だ。そして最も注目されるのが後席の居住性。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。これはLサイズセダン並みの余裕だ。しかもシルフィは全高が1495mmだからセダンではトップ水準の高さを備え、頭上にも充分なゆとりがある。床と座面の間隔も充分に確保されるから後席に座っても腰が落ち込まず、膝から先が手前に引き寄せられて足元の広々感がさらに増した。4名乗車時の快適性が極上のクルマだ。
■「クラスを超えた上質感がある」マツダ デミオ
この企画が扱う普通のクルマには、コンパクトカーからミドルセダンまで、複数のクラスに該当する車種が含まれる。クラスを超えた上質な車種も複数が用意されるが、なかでも最も注目されるのはデミオだ。コンパクトカーでも内装が上質で、特に13SとXDのツーリング、同Lパッケージは、インパネの下側にソフトパッドを備えた合成皮革のデコレーションパネルを装着した。価格は1.3Lのガソリンエンジンを搭載する13Sツーリングが170万6400円と少し高いが、緊急自動ブレーキやLEDヘッドランプも標準装着する。そして同じデザインのインパネを、もっと高価な230万~280万円が売れ筋のCX-3も採用した。デミオは後席と荷室が狭く、普通のクルマとして欠落した機能もあるが、上質感は相当高い。
■「コスパの高さがキラリと光る」ホンダ フィット
クルマのコストパフォーマンスは、出費に対していかに高い価値を得られるかで決まる。この1位はフィットだ。全長が4mを下回る運転のしやすいコンパクトカーで、全高も1550mm以下だから立体駐車場を使いやすい。そのいっぽうで燃料タンクを前席の下に搭載して荷室の床が低い。後席を床面へ落とし込むように畳むと外観からは想像できない大容量の荷室になる。さらに居住性も優れ、後席の足元空間はミドルサイズセダンと同等だ。先ごろの改良ではホンダセンシングを採用して、緊急自動ブレーキの性能を高め、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも装着した。高機能で装備を充実させながら、1.3Lエンジンを搭載する13G・Lホンダセンシングの価格は165万3480円と割安で、コスパ度No.1だ。
■「安全装備のレベルが高い」スバル インプレッサスポーツ&G4
「普通のいいクルマ」のあり方は、時代の流れに応じて変化する。最近注目されているのは、事故を避けたり衝突の被害を小さく抑える緊急自動ブレーキだ。昔から安全性はクルマにとって重要だが、最近は高齢ドライバーの増加もあって必要性をさらに高めた。緊急自動ブレーキの機能が乏しい車種は、もはや普通のいいクルマとはいえない。この点ではインプレッサが注目される。アイサイトバージョン3は、歩行者や自転車を含めて緊急自動ブレーキの性能が高い。2車線道路などで後方の死角に入る並走車両を知らせる機能も選べる。また、歩行者保護エアバッグも全車に装着した。歩行者との衝突を検知するとフロントウィンドウの下側からエアバッグが展開して、歩行者の頭部などを保護する。
■「運転のしやすさ重視!」トヨタ カローラアクシオ
視界と取り回し性は「普通のいいクルマ」の必須条件だ。特に後方視界は「普通に使えない」劣悪な車種が多い。バックモニターが普及したが、画面はインパネなどに装着され、前方を見ながら後退する。モニターの視野は狭いから、側方から接近する自転車などを見落としやすい。その意味でカローラアクシオは優秀。ウィンドウの下端が低い水平基調のボディだから、前後左右ともに直接確認できる。最小回転半径も4.9mで運転がしやすい。
■とにかく個性派に乗りたい」トヨタ ポルテ&スペイド
「普通に使える個性派」は矛盾のある表現に思えるが、ポルテ&スペイドは両方を備える。全高が1600mmを上回る背の高いコンパクトカーだから、4名乗車が快適で、混雑した街中でも普通に運転しやすい。そのいっぽうで左側には1枚のスライドドアが備わり、助手席部分の床面地上高は300mmと低い。助手席の乗降性は抜群で、福祉車両の性格を備える。助手席を前方に寄せると、スライドドアから自転車を積むことも可能だ。
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