造形の自由度が高い樹脂製のヘッドライトのケース部分や、ヘッドライトの光源に小型かつ明るいLEDが普及したこともあり、近年は個性的なヘッドライトを持つモデルが増えている。
その中でも特に個性的なのがヘッドライトを含めたフロントのランプ類が上下に分かれた二段になったものである。どっちがヘッドライト? というクルマも少なくない。
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当記事では二段に分かれたヘッドライトを持つクルマたちを、ヘッドライトのタイプ分けを行い部分ごとの役割も交えながら紹介する。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MITSUBISHI、SUZUKI
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非常に個性の強いランプで独立型の上下分割
代表例:日産ジューク、シトロエンC3
デビュー時に上と下のどっちがヘッドライトなのか話題になったジューク。ここまで強烈に個性を主張するフロントマスクも珍しい。上がポジションで下の丸灯がヘッドライトとなっている
個性的なフロントマスクのクルマはいろいろあるが、その典型がこのタイプ。
スペシャリティなSUVとして登場したジュークはランプ類も非常に個性的だ。登場時はランプ類も含め批判も多かったこのフロントマスクだが、時間が経って意外に受け入れられていることにも驚く。
ジュークは海外向けがすでに次期モデルとなっているものの、残念ながら次期モデルは日本では販売されないようだ。しかし上下分割のランプは現行モデルほど個性的ではないものの、シッカリ受け継がれている。
新型ジュークは初代を踏襲するダブルアイとでもいうフロントマスクを採用しているが、Vモーショングリルと同化しているため、初代ほど個性的ではない
いっぽうジュークの影響を受けているようにも見えるのがC3に代表される現行のシトロエン各車だ。
個性的なメーカーであるシトロエンにはランプを含め似合ったフロントマスクに感じるのと同時に日本車のデザインが海外に影響を与えたというのも、よく考えるとちょっとすごいことである。
【2台の部分ごとの役割】
●ジューク
上部:ウインカー(外側)/ポジションランプ(内側)
下部 ヘッドライト
ポジションランプでウィンカーを包むように配置されていて、ポジション、ヘッドライト、フォグを同時点灯するとこのようになる
●C3
上部:ポジションランプ(外側)/ウインカー(内側)
下部:ヘッドライト
シトロエンC3の3連LEDのポジションランプはどことなく薄型ヘッドライトっぽく見えるが、下側の楕円形のものがヘッドライトとなっている
横長のもの×2で上下二段
代表例:トヨタヴェルファイア、トヨタヴォクシー
兄弟車があるトヨタのミニバンの中でアグレッシブなイメージを持つこの2台がシャープな造形の上下2段のランプを使うというのは、実に理にかなった選択と言える。
なお記憶に残っている人は少ないかもしれないが、ヴォクシーは2001年登場の初代モデルと2007年登場の2代目モデルもそれほどシャープな造形ではなかったものの二段式のランプを採用。
2001年にノアの兄弟車としてデビューしたヴォクシーは当時から上下2段に分割されたヘッドライトを採用。これはヴォクシーのアイデンティティとなっている
ヴェルファイアも2008年登場の初代モデルから二段式のランプとなっており、特にヴォクシーは二段式ランプの先駆車だった。
【2台の部分ごとの役割】
●ヴェルファイア
上段:薄暮灯(上部)/ヘッドライト(下部)
下段:ポジションランプ(上部)/ウインカー(下部)
すべてが横基調のラインで構成されているヴェルファイアのフロントマスクにあって、上下ダブルのヘッドライトの果たす役割は大きい
●ヴォクシー
上段:ポジションランプ
下段:ウインカー(外側)/ヘッドライト(内側)
単純に上下2分割されていた初代と比べるとデザインに凝っているのがわかる現行ヴォクシーのヘッドライト。LEDが手軽になったことで実現可能となった
なおこのグループにはプチバンのソリオバンディッドもあり、今後下のクラスのカスタム系にもこのタイプのランプが増えていくのかもしれない。
上部横長+下部縦長で二段
代表例:三菱デリカD:5、三菱eKクロス
三菱車のフロントマスクのアイデンティティであるダイナミックシールドに上部横長+下部縦長の二段ランプの組み合わせは、パッと見こそ受け入れられにくいかもしれない。
しかしすぐに見慣れることもあり、メーカーの規模などを考えれば個性が重要な三菱自動車が、特に三菱自動車らしさの濃いデリカD:5とeKクロスにこのフロントマスク全体を採用したのは勇気ある英断だった。
【2台の部分ごとの役割】
●デリカD:5
上部:ポジションライト
下部:ヘッドライト
独立した下側:ウインカー
この写真では見えにくいが、ヘッドライトの下に独立してウィンカーが装着されている。この大胆なフロントマスクも慣れるとカッコよく見える
●eKクロス
上部:ポジションライト
下部:ヘッドライト(上側)/ウインカー(下側)
ダイナミックシールドの採用によりミニデリカとでもいった感じのデザインに仕上げられている
eKクロス
なおそう遠くないうちに東京モーターショーにも出展された現在のeKスペースの後継車にもeKクロスに準じたモデルが設定される(車名はeKスペースクロス?)。
こちらのランプは形こそeKクロスに似ているものの、ランプの役割はeKクロスと異なる構成となるかもしれない。
eKスペースクロスという車名? の新型スーパーハイトワゴン軽自動車は、eKクロスよりもさらに精悍なフロントマスクに仕上げられている要注目車だ
よく見ると上下二段になっているセミ上下二段
代表例:トヨタアルファード、トヨタエスクァイア、トヨタノア、日産セレナ、ホンダN-BOXカスタム、ホンダシャトル
シルバーのガーニッシュなどがあって分かりにくいけど、上下二段になったフロントのランプを持つクルマにおいて、地味ながら勢力を拡大しているのがこのグループだ。
ほどよく個性をアピールできるこのタイプは、特にラグジュアリーなアルファードとエスクァイア、ファミリー向けのノアというキャラクターを持つトヨタのミニバンにおいては、ヴェルファイアとヴォクシーとの差別化にはよく合っている。
歴代モデルともワイルドなヴォクシーに対し落ち着いた顔に仕上げられているノアだが、よく見るとヘッドライトは上下に分割されている
しかし2020年5月からトヨタのディーラーが一本化されるといずれは兄弟車もなくなるため、ランプ類も含めたフロントマスクの個性が減る傾向となるのはちょっと寂しいところだ。
【各車の部分ごとの役割】
●アルファード
上部:ヘッドライト
下部:ウインカー(外側)/ポジションランプ(内側)
巨大なフロントグリルによる押し出しが好評のアルファードだが、ヘッドライトもかなり凝ったデザインになっている
●エスクァイア、ノア
上部:ポジションランプ(上側)/ヘッドライト(下側)
下部 ウインカー
ノアの上下タイプのヘッドライトは派手さはないが、ライン上に入ったアクセサリーランプがおしゃれな雰囲気を醸し出している
●セレナ(LEDヘッドライトの場合)
上部:ポジションランプ(上側)/ウインカー(下側)
下部:ヘッドライト
セレナもライバルミニバンに負けじと上下分割タイプのヘッドライトで精悍さをアピールすることに成功している
●N-BOXカスタム
上部から下部にかけての、助手席側ならコの字になる部分:ポジションランプ上部:ウインカー
下部:ヘッドライト
ヘッドライトを囲むように配置されたポジションランプにより嫌みのない高級感を好演出。ヘッドライトデザインにもこだわりを見せるN-BOX
●シャトル
上部:ウインカー
下部:ポジションランプ(外側)/ヘッドライト(内側)
シャトルもマイチェンでヘッドライトデザインを変更。精悍になったフロントマスクはユーザーにも好評だ
番外編 ひとつのライトの中に三分割
代表例:ワゴンRスティングレー
上下3分割されたワゴンRスティングレーのヘッドライトユニット。ウィンカーを真ん中に配置することで独特の表情に仕上げている
ワゴンRスティングレーのヘッドライトはひとつで大きなものながら、上からポジションランプ、ウインカー、ヘッドライトという3つに分かれている。部品点数を増やさずに個性も加えられるという面では面白いアイデアだ。
なおワゴンRは標準モデルの上級グレードとなるハイブリッドFZでは、横長のもの×2というタイプの上下二段ランプとなっており、軽自動車ながら芸が細かい。
現行ワゴンRは2タイプ顔が用意されていて(スティングレーと合わせると3タイプ)、このタイプが一番質感が高いと好評
まとめ
筆者を含め普段はあまり気にしない人も多いかもしれないが、細かく見ていくとヘッドライトの個性は非常に面白い。
クルマは顔で印象が大きく変わってくる。ヘッドライトのデザインが多様化したことによって、今後どんな顔で驚かせてくれるのか楽しみだ。
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