■2024年全日本ラリーが開幕! 第1戦は「ラリー三河湾」
2024年全日本ラリー選手権が、3月1日~3日の第1戦「ラリー三河湾」で開幕しました。昨年まで第1戦は「新城ラリー」として開催されていましたが、今回はホストタウンを愛知県蒲郡市に移しての開催となりました。
【画像】「全日本ラリー2024 Rd.1 三河湾戦」に出場したADVAN GRヤリスの画像を見る(51枚)
2023年全日本ラリーJN-2クラスシリーズチャンピオンを獲得したNUTAHARA Rally Teamの奴田原文雄選手と東駿吾選手の組が、昨年までのGRヤリスからGRヤリスRally2にマシンを変更し、2024年は同ラリーの最高峰クラスであるJN-1クラスに参戦することになりました。ADVANカラーを纏(まと)ったニューマシンでの参戦です。
奴田原選手は1994年に名門ADVANラリーチームに加入。2006年には当時のPWRCクラスにおいてラリー・モンテカルロで日本人として初優勝を飾ると同時に、シリーズ2位を獲得するなど、国内外で好成績を収めてきました。
2021年より奴田原選手とコンビを組むコ・ドライバーの東選手は、2017年に群馬ラリーシリーズでデビュー。奴田原選手が主催するNUTAHARA RALLY SCHOOL Jr.チームの卒業生でもあリます。親子ほどの年齢差のコンビですが、チームのみならずラリー界からも期待される若手コ・ドライバーの一人です。
では、今年の参戦車両であるGRヤリスRally2について簡単に説明しておきましょう。FIAが規定するラリー車両のカテゴリーは、トヨタ、ヒョンデ、Mスポーツが参戦するRally1クラスを頂点に、Rally2からRally5に区分されており、Rally2はWRCへの参戦以外に、ヨーロッパ選手権(ERC)のような地域選手権や一部例外はあるものの、世界各地で開催される国内選手権のトップカテゴリーに位置します。トヨタ以外では、ヒョンデ、シュコダ、シトロエン、フォードなどがRally2車両をカスタマー向けに販売、サポートしています。
その中でもGRヤリスRally2は、昨年まで本拠地フィンランドを中心に欧州で開発が進められ、無事にホモロゲーションを取得し、満を持して販売された車両です。参戦を開始した最新のRally2車両ということもあり、世界中で注目を集めています。
とりわけ欧州での人気が高くオーダーが集中し、有力チームへの販売が優先されることもあって日本への割り当て台数が懸念されましたが、今年の全日本ラリー開幕戦「ラリー三河湾」には3台のGRヤリスRally2が姿を見せました。
■投入された新設計のADVAN Racing RC-4は市販モデルも発売予定!?
伝統のADVANカラーを纏(まと)ったNUTAHARA Rally TeamのGRヤリスRally2の足元を支えるタイヤはもちろん横浜ゴム製です。
そのタイヤとコンビを組むホイールがADVAN Racing。昨年までのGRヤリスと違いFIA規定のRally2車両ということで、ラリーでは多くの実績を持つADVAN Racing RCシリーズをベースとしながら、Rally2車両に適合するよう新規で設計、製造されたホイール「ADVAN Racing RC-4」です。
NUTAHARA Rally TeamのGRヤリスRally2で使用されたホイールは、市販のGRヤリス用ホイールのPCD114.3と違い、GRヤリスRally2に合わせてホイールのPCDは変更されています。PCDの変更に伴ってセンターのボアを拡大。また、穴位置が大幅に変わるために剛性や応力の再計算が必要になるため、全くの新規で設計されたホイールになっています。
さらに驚くことに、このセンターボアを拡大したデザインで、市販車のGRヤリス用に合わせたPCD114.3のADVAN Racing RC-4を販売予定とのことです。インセットは市販車用に変更されますが、センターボアのサイズやリムのデザインやデカールまでもRally2車両用のデザインを踏襲する予定ということなので、GRヤリスユーザーには魅力的な選択肢となりそうです。
■可能な限りリスクを排除するためには信頼できるタイヤ&ホイールが必要
ラリーにおいてタイヤ&ホイールに求める要素とは? そんな問いに奴田原選手は「何はなくとも耐久性」と即答しました。
たとえ縁石や岩にホイールをヒットしたとしても、エアーが漏れず走行を続けられることが一番重要。ラリー車にはスペアタイヤを積んではいますが、交換作業のタイムロスを考慮するとステージ内でのタイヤ交換は避けたいものです。
サーキットを走るレースと違い、公道を走るラリーは不確定要素や運によって左右されることが多い競技。可能な限りリスクを排除し、たとえ不測の事態があったとしてもサービスパークまで戻ればメカニックがなんとかしてくれる耐久性の高いホイールが運をも引き寄せるのかもしれません。
過去にドライブしたGr.N(グループN)や昨年までのJN-2仕様のGRヤリスと、今年からドライブするGRヤリスRally2の違いを尋ねると、いちばんの違いはRally2車両は操作に対してダイレクトに反応することだと奴田原選手は言います。そのため、今までのドライビングから大きく変更することはないものの、細かい修正は必要とのこと。
また、JN-1とJN-2ではレギュレーションによってホイールとタイヤサイズが違うため、JN-1の方が幅の細いFIA公認のタイヤを使用することとなり、奴田原選手・東選手の組はターマック(舗装路)ではERCなど海外のラリーでも実績のある235/40R18のアドバンA051Tタイヤを使用します。
もちろん、右ハンドルと左ハンドルの違いもありますが、過去にも左ハンドルでの参戦歴はある奴田原選手ですし、左ハンドルの乗用車を所有していたこともあったので大きな違和感はないとのことです。
■初開催の「ラリー三河湾」は全ての選手が初めて走るコースでもある
2024年の開幕戦となった「ラリー三河湾」は、昨年まで新城ラリーとして開催されていましたが、ホストタウンを愛知県蒲郡市に移して新たにスタートしたラリーです。
三河湾に面したラグーナマリーナにサービスパークが設置され、市街地からのアクセスの良さもあって、蒲郡駅前で開催されたセレモニアルスタートをはじめ、2カ所設定されたスーパーSS(スペシャルステージ)には多くのギャラリーが詰めかけ、ラリージャパン効果もあったのか、ラリー人気の高まりを感じさせてくれました。
「ラリー三河湾」には2車線の高速ステージもありますが、この地域特有の狭く荒れた林道が主なステージとなります。インカットによってかき出された泥や石がさらに路面を荒らしていき、新城ラリー時代と同様に難易度の高いステージと言えるでしょう。全ての選手が初めて走るコースということで、ペースノートの正確さが問われるラリーとも言えます。また、ラリーウイークを通して気温が低く、タイヤ選択も悩ましいラリーとなりました。
奴田原選手・東選手の組が駆るGRヤリスRally2は、フィンランドから到着したのがラリー本番の直前。満足なテストもかなわないなか、ほぼぶっつけ本番で臨んだSS1はクラス6位。その後もクラス後方の順位につけていましたが、1ループ目最後のSS4ではクラス3位。総合でも4位に浮上します。
■第1戦は総合4位でフィニッシュ 次戦は「ツール・ド・九州in唐津」だ!
GRヤリスRally2の素性を理解し始めた午後のループ1本目のSS5ではステージベストを獲得し、Leg1を総合4位で終えました。
LEG2は6本のSSのうち10キロ以上のロングステージが4本あり、気が抜けない1日。スーパーSSとして設定されたSS11がキャンセルされたために合計5本のSSで争われました。
奴田原選手・東選手組はこの日も安定したペースを刻みます。終始ペースをコントロールし、総合4位でフィニッシュ。「ぶっつけ本番のほぼシェイクダウンのようなラリーだった」と奴田原選手は語りました。新しいマシンということで、まずはマイレージを稼ぎつつ完走しデータを持ち帰ったことは、次戦以降のシーズンを戦う上では非常に重要なことと言えるでしょう。
次戦は2024年4月12日~14日に佐賀県唐津市を中心に開催される「ツール・ド・九州in唐津」。三河湾とはまた違った表情を見せるターマックラリーになります。奴田原選手にとっては毎年表彰台を獲得している相性のいいラリーだけに好成績が期待されます。
[Text/Photo:山本佳吾]
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