■セロー誕生の裏側にはアメリカ人の「遊び心」が?
2020年に35周年を迎えると共に、国内最終モデルを迎える「セロー」は、初代から変わらぬ姿勢で開発されてきたヤマハ独自のマウンテントレールモデルです。
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ビギナーから上級者まで幅広い層から愛され続けてきたセローは一体どのような経緯で誕生したのでしょうか。ヤマハ発動機 PF車両開発統括ST開発部ST設計Grの橋本貴行さんは次のように話します。
「私のいる開発フロアーには、当時セローの開発を担当していた近藤充が書いた資料や近藤充の先輩であったり、車体の設計のプロジェクトチーフがまとめた開発企画書が残されています。
当時は、ヤマハだけではなく各社ともマルチトレールやマルチパーパス、スーパートレールといった性能を重視したスペック重視のものへ向かっていました。当然、トライアルなどもあります。
こうしたモデルは当時の市場の流れのなかで生まれたものですが、そうした流れがオフロードとして正しいのか、上手な人ばっかりがオフロードに乗っていて、そのほかの方々を置いていっていいのかというようなところがあって、もう一度オフロードのあり方を考えてみないかい? ということがセローの開発の時に議題として挙げられました。
セローの開発に携わっていた近藤充は当然、オフロードモデル全般に携わっていましたが、USモデルの開発をした時にスペック重視のモデルを出すとUSのスタッフからはあまりいいコメントが出ないという状況でした。
なぜなら彼らは競技志向ではないものを求めていたのです。アメリカ人は遊びの天才ですので、彼らがどういう遊び方をしているのか見てきたところ、ヒルクライムやダウンヒルなどガレ場(岩や石が散乱している斜面)で楽しんでいたのです。
そうしたことを踏まえてもう一度オフロードのあり方を考えたいということになりました。その結果、マウンテントレール「XT-M」(仮称)というところに行き着きます。ちなみに仮称の最後の「M」は“マウンテントレール“を指しています。
後にセローは「二輪二足」など有名なキャッチコピーが与えられていますが、この当時は「二輪二足」という言葉はありませんでした。
セローはXT200をベースに開発されていますが、まずはXT200の良いところは何だということからスタートしました。ちなみに、その当時のコメントには“林道をかっぽぐって走る”というものも見受けられますが、これは宮城、あるいは仙台の方言らしく、“水たまりの中に靴を入れちゃってグジュグジュして気持ち悪い”というようなニュアンスがあるようです。きっと開発陣には東北の方もいたのでしょう」。
■つまるところ「マウンテントレール」ってなに?
ヤマハ「セロー」シリーズは、他のメーカーには見られない独自の要素「マウンテントレール」を掲げていますが、この「マウンテントレール」とはいったどのようなものなのでしょうか。橋本さんはつぎのように話ます。
「林道で楽しむ“遊びのオートバイ”という点がセローの美点であり、オートバイを広げる間口なんじゃないかということで“マウンテントレール”を目指しましょうということになりました。
自動車や二輪の三大要素と呼ばれるものには“走る・止まる・曲がる”というものがありますが、これは備えていて当然のものです。当時、まだ存在していなかった“マウンテントレール”というジャンルでは、 “登る・下る・転ぶ”ということまで踏まえて考えています。 セローは、お客様に“安心して遊んで下さい”、“足を付いても大丈夫ですよ”、“転んでも引き起こせますよ”というようなことを考えて設計していますので、自分たちメーカー側で考えて“これくらいならやりうるよね?”というような状態を想定しテストを行い、“お客様が遊んで帰ってこれる”状態を保てるように徹底しています。 初期型を例に挙げれば、リアフラッシャーをグラブバーの内側に収めているのも破損を防ぎ、路上で違反にならないようにするためのものです。現行車では法規の都合で同様の仕様にはできませんが、当時はウィリーをしてそのまま後ろにまくれるテストなど、今では考えられないようなメチャクチャなテストを行い“遊んで帰ってこれる”を実現しました」。 ※ ※ ※
ユーザーに寄り添った開発陣の想い、それもまたセローが長きに渡り愛されてきた理由の一つかもしれません。
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みんなのコメント
山で遊んで帰ってこれるいいバイクです。
オフロード初心者の頃に、出入りしていたバイク屋のオヤジが「転んで乗り方を覚えるならコイツだ」と強力に薦めていたのを思い出した。
もしかすると、こういった開発の裏話を聞いていたのかもしれないな。