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レッドブル・ホンダの優位は揺るがず 前半戦ラスト2戦でメルセデスに惨敗も、その優位の理由は[2021年F1前半戦を総括]

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レッドブル・ホンダの優位は揺るがず  前半戦ラスト2戦でメルセデスに惨敗も、その優位の理由は[2021年F1前半戦を総括]

 2021年前半戦が終り、コロナ禍ながら3週間の夏休みでF1ワールドもやっと一息ついたところ。今シーズン前半戦の戦いは熾烈を極め、前半最後の2戦では激しさのあまり大きなクラッシュが続発したほど。この最終2戦でのクラッシュは前半戦を苦しんだメルセデスに有利に働き、チャンピオンシップをかろうじてリードの形で折り返している。

文/津川哲夫、写真/Mercedes-Benz Grand Prix Ltd,Red Bull Content Pool

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■ホンダ新PUを中心に、レッドブルがメルセデスを追い上げる今シーズン

 メルセデスのシナリオでは、今シーズンの規則で車体開発は2トークンとエアロのみなので、メルセデスが昨年まで持っていたパワーアドバンテージを多少なりとも維持できると踏んでいたのだろう。しかしホンダPUを中心にレッドブルの追い上げは急であった。

ホンダPUの進化でレッドブルは前半戦5勝 Red Bull Content Pool

 いざ開幕してみるとホンダ新PUはメルセデスと並ぶどころか条件次第ではそれ以上のパフォーマンスを発揮した。シーズンは既に始まってしまい、メルセデスとしては、通常のエアロ以外の開発には殆ど手を付けるわけには行かず、苦しい状況に追い込まれていった。

 ポイント上ではメルセデスとハミルトンが前半戦をリードしたものの、その内容はといえば、開幕戦ではフェルスタッペンのコースリミットペナルティーで、またアゼルバイジャンではタイヤバーストによるフェルスタッペンのリタイアで、そしてハンガリーではチームメイトのボッタスによるマルチクラッシュでレッドブル2台を痛めたことで、メルセデスは前半戦のリードを得ているという状況だ。したがって後半戦への戦況は本来なら前半戦とそれほど変わることなくレッドブル若干有利か、少なくともイーブンの戦いになるはずだ。

 また英国でのハミルトンとフェルスタッペンのクラッシュはFIA的にはレーシングアクシデントと裁定されたが、反ハミルトン勢力の見方はハミルトンの危険行為と考えており、これは世間にも大きく拡散されてしまった。したがってハミルトンに公的な非はないものの、よりフェアなレースに取り組まなければならない状況に追い込まれている。ただしハミルトンはそんなプレッシャーに萎縮するようなドライバーではないが。

 また前半戦では対レッドブル・ホンダへメルセデスからの政治的攻撃が目立ち、コース上のレースでの正式プロテストではなく、口撃と言う形でFIAを動かしてきた……という具合に反メルセデス陣営はメルセデスにダーティなイメージを抱いた。

 言わばシナリオ通りに運ばなかった前半戦、レッドブル・ホンダに追い込まれオーバーテイクされたことを信じることができず「なぜ?」の疑問がレッドブルへの疑惑を語らせたのだろうが、全ての疑惑はFIAによって打ち消されている。

 もちろんレッドブル・ホンダ側もそう簡単にメルセデスを打ち負かすことができずにきた。予選では安定してトップポジションを得る事ができず、フェルスタッペン・ペレスのコンビネーションもまだペレスが遅れ気味で2台体勢をなかなか確立できなかった。ペレスは優勝はしてはいるが安定性に難があった。

 しかし前半開幕5戦の学習時間を経て、終盤にはかなり向上、レッドブルが確立したいのは強固な2台体勢なのだからこれは後半への好材料だ。

 状況はメルセデスも変わらない。今シーズンのボッタスは荒れていて、予選では波が大きく、さらにレースでの失敗も多い。特にスタートでの失敗はハンガリーばかりでなく、例を挙げれば枚挙にいとまがない。もちろん速さはトップエンドのドライバーだが、今シーズンは精神的な問題も大きそうだ。

イギリスGPで優勝したルイス・ハミルトン。1周目のフェルスタッペンとの接触が問題になった Mercedes-Benz Grand Prix Ltd,

 昨年終盤ハミルトンの代走で走った若手ラッセルに先に行かれ、今シーズンのイモラではメルセデスのマシンよりも遥かに劣るウィリアムスを駆るそのラッセルに抜かれ際にこの2台が絡んで大きなクラッシュを喫している。

 ラッセルに非はあるもの、もはやベテランの域にあるボッタスがこのクラッシュに巻き込まれるのはいただけない。ボッタスは、状況的に次期メルセデスの席を噂されているラッセルからの、大きなプレッシャーにさいなまれているのかもしれない。

 後半にむけて、多くのチームが最終型の開発パーツを投入し、今後は開発のリソースを2022年型へとシフトしてゆく。したがって後半戦の再開連続3戦で今シーズンの勢力図がほぼ決まると言っていいだろう。ただレッドブルはまだ“開発の手は緩めない”と明言している。

 それもそのはずで、24年までのホンダとの係わりを維持するためにも今シーズンの成功は必須と言えるからだ。したがってチャンピシップは当然のようにメルセデスとレッドブル・ホンダの死闘となる……これは間違いないだろう。

■アルファタウリ角田次第で、レッドブル・ホンダ軍団の強固な菱形がでる

 それでもレッドブル・ホンダ陣営が若干有利と思えるのは陣営にはアルファタウリがあり、現実にガスリーは驚くほど安定した走りを見せている。残念ながら我らが角田裕毅は前半戦を苦しんで終った。もちろん立派にポイントを獲得はしているが、明らかに新人である事の不利な部分が出てしまった。

前半戦 思うような走りができなかったアルファタウリの角田 Red Bull Content Pool

 彼のポテンシャルは認められるが、経験不足で自分の立ち位置を見つけられず、方向性も決められずに前半戦を終えてしまった。表現は悪いが「背伸びをしたコルト(仔馬)」感が前半の角田裕毅を支配していたように思える。走り出せば高いポテンシャルを持ちながら、大人の競走馬の群れに突然放り込まれ突っ走るコルト……右往左往の感は免れない。もう少し時間をかけて群れを見つめて学べば、彼らの利点も弱点も見えてくるはず。学び育つ時、それが角田裕毅の後半戦になるはずだ。

 アルファタウリのこの2名がトップ10に食い込むと、レッドブル・ホンダ軍団の強固な菱形ができ上がる。この形状が常時トップ10の位置に打ち込まれれば、レッドブル・ホンダが最強軍団になり得るはずだ。後半戦にその夢を見たとしても、決して絵空事ではないだろう。

TETSU ENTERPRISE CO, LTD.
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津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。

 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。

 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などあり。

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