あまり重要視されることがないが、普段使いのクルマにとって小回り性能は超重要だ。狭い駐車場での車庫入れや道幅が狭い場所での取り回しなど、日々恩恵を受けることが多い性能だからだ。特に日本は、狭い場所が多いことから、もっと重要視されていい性能だと思っている。
「小回り性能」は、「クルマ(の幅や長さ)が大きいほどよくない」というものでもなく、ホイールベースのほか、フロントタイヤの最大転舵角も大きく影響する。カタログに記載されている「最小回転半径」という数値が、クルマの小回り性能を表す指標だ。
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今回は、国産メーカーの乗用車(軽含む)のうち、最小回転半径が小さなクルマ、ベスト5とワースト5をご紹介。意外に小回りが利かないクルマも!?
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUZUKI、DAIHATSU、LEXUS、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】狭い場所もお任せ!! 小回りしやすいクルマ ベスト5とワースト5
4.5m以下だと小回りが利くクルマ
最小回転半径とは、右か左にハンドルを奥まで切った状態でゆっくりと旋回し、一番外側のタイヤの中心が描く円の半径のことをいう。自動車メーカーはこの数値を国土交通省へ提出し、認可を受け、クルマのカタログに掲載している。
実はこの数値、実車で計測した値ではなく、計算式によって割り出す理論値だ。実車で測定をしない理由は、検査車両のばらつき、計測時の誤差、試験場の状態(気温、埃など)で変わるなど、予測不能の結果が出やすいから。この最小回転半径は、フロントタイヤの最大切れ角が影響するため、サスペンション設計者が割り出すことが一般的となっている。
最小回転半径は、「4.5m以下だと小回りが利くクルマ」と一般的にいわれる。逆に、5.5m以上になると小回りが利かない、といわれることが多い。ちなみに、車幅は広いほうが有利、タイヤ幅は狭い方が有利、となる。なぜなら、車体のフロントサイドメンバーと、転舵時のタイヤのクリアランスを取ることができるためだ。
スズキアルトがトップ
最小回転半径が小さいクルマ、ベスト5は以下の通りだ。
現時点(2021年5月)、国産乗用車(軽含む)のうち、小回り性能に優れるクルマ、ベスト5
現時点(2021年5月時点)は、スズキアルトの4.2mがトップであった。「これぞニッポンの足車」アルトの1位は、「やはり」といったところであろう。
4.2mの最小回転半径で1位となった現行型アルト。メガネをかけたような可愛いフロントフェイスで、人気も高い
続いて4.3mで、ホンダe。この理由は、後輪駆動が影響する。前輪が駆動輪の場合、ドライブシャフトの折れ角には限度があり、フロント転舵角を大きく取れない。後輪駆動だとそれを気にしないで済むため、フロント転舵角が大きくとれたことも理由だろう。
4.3mで2位にランクインしたホンダe。軽自動車が多いなかで、優秀な成績だ
3位の4.4mになるとたくさんあり、スズキのスペーシア、ラパン、ワゴンR、ダイハツのミラシリーズ、ムーヴシリーズ、タント、ウェイク等がランククインする。スズキ、ダイハツそれぞれで、軽自動車用の共用プラットフォームを用いているために集中したものだと考えられる。
4.4mで3位にランクインしたタント。スペーシアもランクインしており、この辺りの数値を目指すのが、ハイト軽ワゴンには求められている
4位の4.5mには、日産とホンダのハイト軽ワゴンのほか、なんとコンパクトカーのマーチもランクイン。マーチは、2450ミリという短いホイールベースと、165幅という幅細タイヤ(標準タイヤサイズは165/70R14)のため、この数値が実現できたのだろう。
最小回転半径4.5mが実現できたのは、2450ミリという短いホイールベースと、165幅という幅細タイヤが影響していると考えられる
5位の4.6mとなると、パッソ/ブーンといったコンパクトカーのほか、ルーミー/トールいった「プチバン」と呼ばれるクルマも登場する。4.6mだと狭いところでもかなり取り回しがよく、これらのクルマが運転しやすいと好まれている理由もよくわかる。ちなみに、この大人気コンパクトカーのヤリスの最小回転半径は4.8mだ。
最小回転半径4.6mのトヨタルーミー。小回りが利き、狭い道での運転もとてもしやすい
ワースト1位はハイラックス
つづいて、最小回転半径が大きいほうから並べた結果が以下の通りだ。
現時点(2021年5月)、国産乗用車(軽含む)のうち、小回り性能が悪いクルマ、ワースト5
5位の5.7mにランクインするのは、ラージクラスミニバンやスポーツカー、ラージセダンだ。エルグランドやGT-Rはなんとなく理解できるが、比較的、小回りが得意なイメージのアコードやクラリティ、カムリもランクインしているのは面白いトコロだ。このクラスになると、極端にひどいレベルとはいえないが、やはり小回りがしにくいというイメージは当てはまる。
16インチ、17インチであれば最小回転半径は5.7mだが、オプションの18インチを装着すると最小回転半径が5.9mにもなる
4位の5.8mには、フラッグシップ級の高級セダンや、大型SUVがランクインする。ホイールベースも長いため、最小回転半径は大きくなるが、その分、穏やかなハンドリング特性となる。そのため、後席に座って移動するならば、こうしたホイールベースが長いクルマの方がおススメだ。
シーマは、ホイールベースが3050ミリと長い。ハンドリング特性も穏やかだ
3位の5.9mには、スポーツカーや大型SUV、大型セダンがランクインする。レクサスRXが、ランクルやLXと同じ数字だったとは想定外だったかもしれない。スポーツカーのNSXは、もっと小回りが利くものだと想像する方がいるかもしれないが、太いタイヤ(NSXのフロントタイヤサイズは245/35R19)とAWD機構によって、フロント輪があまり切れないように規制されているようだ。
最小回転半径5.7mのレクサスRX。日本の道路事情を考えると選ぶのを躊躇しそうだが、かなりの売れ行きを見せている
2位には6.0mのホンダのフラッグシップカー、レジェンドがランクインする。「SH-AWD=超曲がる4WD」を搭載すると謡ってはいるが、実は小回りが苦手というのは皮肉なものだ。その半面、レジェンドの乗り味は実に大らかなもので、運転していると、極上の優雅な気分にさせてくれる一台だ。
レジェンドは、ホイールベース2850ミリ、車幅1890ミリ、タイヤサイズは245/40R19と、前提が悪いわけではないのだが、最小回転半径は6.0mと大きい
そしてワースト1位は、トヨタ・ハイラックスであった。ボディサイズは5340×1855×1800(全長×全幅×全高)ミリ、ホイールベースは3085ミリと、車幅は狭いが、相当ロングなボディだ。
実は、ランクル(4950×1980×1870)の方が幅広で背も高いのだが、2850ミリの短いホイールベースのため、最小回転半径が小さい。ハイラックスは、日本の道路事情から考えると相当扱いにくいが、その分、日本車離れした雰囲気と、荷台の使い勝手は良い一台だ。
6.4mでワースト一位となったハイラックスのホイールベースは3085ミリ。ランドクルーザーのホイールベース(2850ミリ)よりも、235ミリも長い
知っておくと、次のクルマ選びの指針に
最小回転半径だけでクルマを決める方はほとんどいないとは思うが、いま乗っているクルマの最小回転半径を知っておくと、次のクルマを選ぶ際の、一つの指針にはなるかと思う。
見た目だけではわからない、クルマの小回り性能。今回挙げた「ベスト5」と「ワースト5」だけでも頭に入っていると、街中を走るクルマを見る目が変わってくるかもしれない。
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みんなのコメント
これ以上の車は見つけられない。
更にタイヤが14か15インチかでも、車庫入れで擦る擦らないの差が出てくるので
購入時はそこら辺をきっちりチェックしてます