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元DTM王者トムチェクが古巣アプトで監督就任「ドライバーとして出る幕はない」と発言も、まさかの発表

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元DTM王者トムチェクが古巣アプトで監督就任「ドライバーとして出る幕はない」と発言も、まさかの発表

 ドイツF3選手権を経て、2001年からアプト・スポーツラインのジュニアチームドライバーとしてアウディTT-RSを駆りDTMドイツ・ツーリングカー選手権にデビューしたマーティン・トムチェク。その後2004年にアウディがDTMへワークス参戦を開始するにあたり、アウディワークスドライバーへ昇格し、2010年のシーズン終わりまでの10年間にわたりアプトで活躍した。

 2012年には、この前年に所属してシリーズチャンピオンを獲得したフェニックス・レーシングを経てBMW陣営へと移籍。2021年12月をもってレーシングドライバーとしてのキャリアを終え、DTMの生中継を放送しているドイツのテレビ局で解説を務めたほか、DTMのサポートレースであったDTMトロフィーの代表やITRを率いてきたゲルハルト・ベルガー会長の代理を務めるなど、現役を退いた後はレースに関わりながら多方面で活躍していた。そんなトムチェクが、今季2023年は古巣のアプトへ幹部職としてカムバックを果たし話題を呼んでいる。

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 同チームは今季、ADACに引き継がれたDTMに引き続きアウディR8 LMS GT3エボIIで参戦するが、ニュルブルクリンク24時間レースへは新たにランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2を投入して2017年以来、6年ぶりにの復帰を果たす。その準備のために出場したNLSニュルブルクリンク耐久シリーズの開幕戦で、トムチェクに初の監督業務と今後の展望について話を聞いた。

* * * * * * *

――昨年まで所属していたITRを離れ、古巣のアプトへ戻られましたね。
マーティン・トムチェク(MT):昨年まではITRの幹部として、DTMやそのサポートレースをオーガナイズしていた立場だったが、DTMがADAC(ドイツ自動車連盟)の傘下に入ったため、私の今後のビジョンを描くことができなくなった」

「そのような経緯もあり、アプトの一員としてふたたび加入できたことをうれしく思っているし、非常に気持ちよく毎日仕事をしている」

――アプトへ加入するに至った経緯は?
MT:「ITRがADACへ売却した後に、今後はどうするのか? とアプトから電話をもらい、その後に直接面会の機会があったんだ」

「クプラでフォーミュラEとエクストリームE、アウディでDTM、ランボルギーニでニュルブルクリンク24時間レースと、今季はアプトのモータースポーツ活動が急拡大して行くなかで、彼らから提示してもらったモータースポーツディレクターというポジションは、今の自分のやりたいことと先方の希望が丁度マッチした形だったので、即答でアプトへ加入することを決めた」

「アプトはF3からDTMへとスイッチしてから、私のプロレーシングドライバーのキャリアを支え、育ててくれたチームで、10年の時を経て当時とは違うポジションで戻ってこられたので、その恩返しをしたいと思っている。チームへの強い信頼感を持っているし、このチームと一緒に仕事ができるすべての時間を楽しむつもりだ」

――モータースポーツディレクターという立場で、アプトの今季の活動のどのレースに帯同するのですか?
MT:「主にGTレースを担当するため、DTMとニュル24時間レースの準備としてNSLに帯同するが、フォーミュラEとエクストリームEの各数戦にも携わる予定だ」

「今年は私の仕事もアプトとしてのモータースポーツ事業としてもかなり多岐にわたる」

――あなたはアウディとBMWで長年に渡ってプロのレーシングドライバーとしてのキャリアを持っていますが、その経験をモータースポーツディレクターとしてどう活かしますか?
MT:「ドライバーとディレクターとは役割も求められるものも違うのだけれど、もちろんドライバーサイドの意見や視点はよく理解ができると思う」

「ただ、レーシングカーを一台動かすのに、いまのディレクターの立場では本当に色んな視点や役割から多くのことをインプット、アウトプットしなければならないので、新米ディレクターとしてはたくさんのことを学ばなければならないし、学んでいる途中でもある。ドライバーをコックピットへ座らせられるまでに、どれだけ多くの仕事があるのか、改めて自分の現役時代を考えると周りの多くの人々に支えられていたことを実感するよ」

「これらの一連すべては『モータースポーツ・ビジネス』だと捉えているし、ビジネスを成功させるにはドライバーとチームの信頼と連携は必須だ。そういった意味で、自分がドライバーだった経験もあり、彼らを理解するためにチームの誰よりも近い位置にいると思う」

「彼らのポテンシャルを最大限に発揮できるようにするのも私の大切な仕事のひとつだと考えている。私に与えられた課題と挑戦の責任は非常に重いが、私に任せてくれたアプトに感謝するとともに非常にやりがいを感じている」

■アウディは次世代GT3について考える時がきている

――ところで、DTMに参戦するチームのひとつであるチーム75ベルンハルトを経営し、チーム監督でもある元ポルシェワークスドライバーのティモ・ベルンハルトは、テストの際には自らもステアリングを担うこともあるそうですが、あなたも同様に自らドライブする機会もあるのでしょうか?
MT:「アプトに所属するドライバーはみな素晴らしく、完全に信頼しているから私の出る幕なんてまったくないよ(笑)」

「このニュルで走るランボルギーニに関しても、一度もコックピットに座ったこともないくらいだ。私がドライバーとして出てこない方がよいのではないかと思う(笑)」

――アウディのカスタマーレーシングの要であるGT3マシン、そのベース車両の『R8』が生産終了となったこともあり、後継モデルがどうなるのか、揺れています。以前にカスタマーレーシング代表のクリス・ラインケ氏とのインタビューでは、“エボIII”を出す可能性も示唆していましたが、あなたの見解をお聞かせください。
MT:「アウディはGT3のカスタマーレーシング界の先陣を切って開始し、もっとも成功しているメーカーであることは間違いないし、カスタマーチームからの信頼やそのポテンシャルは世界各地で素晴らしい活躍と成績を残していることは誰もが承知している」

「しかし、この先のことも考えなければいけない時が訪れているのは間違いない。R8というベース車両をみると、いま、今季という意味ではまだ充分に他のメーカーと戦えるポテンシャルはあると思うが、他のメーカーはアップデートや新車両を続々と出しており、先を見ている。私自身が長年アウディのワークスドライバーだった身なので、アウディの内部事情はよく知っているから言えるのだが、アウディはこのままのテクノロジーで満足しているワケではなく、アウディはなにがなんでも勝ちたいというモットーのメーカーだ」

「今後、R8のさらなるアップデートを出してくるのか、果たして新しいベース車両を持ってくるのか、解決策についてなるべく早い時期にアウディとともに話し合いを持つことになるのではないだろうか」

■元DTMチャンピオントリオがニュル24時間に参戦へ

――モータースポーツディレクター1年目としての目標は?
MT:「もちろん、勝つこと。参戦初年だろうが、新しいマシンだろうが、勝つこと以外を目標にしているプロは誰もいないだろう。それが容易でないことは百も承知だが、勝利に導けるようにベストを尽くすつもりだ。

 このインタビューの後日3月22日、アウディスポーツはトムチェク、ティモ・シャイダー、マイク・ロッケンフェラーという全員がDTMチャンピオン経験を持つ元アウディワークスドライバー3名がタッグを組み、アウディスポーツ・チーム・シェラー・フェニックスから2023年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦することを発表。トムチェクは元同僚たちとアウディR8 LMSエボIIをシェアするドライバーとして“ノルドシュライフェ”にカムバックを果たすこととなった。

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