1番のお気に入りは「佐渡島」
サムライ・チャレンジ、スタート
九州から北海道まで日本を縦断するラリー、しかも外国人が主催・運営するヒストリックカー・ラリーの開催は前代未聞のことで、誰もが考えもしなかったことだろう。ところが、それが実現されたのである。
イギリスに本拠を置くラリー・ラウンド社は、デービッドとリズのウェンマン夫妻が代表で、これまでマレーシア、ミャンマー、ブータン、ニュージーランドでヒストリックカー・ラリーを主催し、ヨーロッパでもパリ~ウィーンのような自動車黎明期の都市間レースを彷彿とさせるイベントを実施してきた。
デービッドは、イギリス人の誇りである第1次世界大戦や第2次世界大戦で活躍したホーカー機のレストアを専門とする工場を経営する。リズはあのダーウィンらを応援してきた英国王立地理学会の一員として、政府や学術団体からアジアやアフリカに派遣されてきた経験を持つだけに、今回のようなイベントを催者するのに相応しい人物である。
山の中の1本道ばかり 英国人のルート選び
そして、彼らを助けるのはイギリスのラリー界の重鎮で、経験も豊富なジョン・ベイリスとピーター・ラッシュホースである。昨年の5月と10月に彼らが来日して、九州から北海道まで走り回ってルートを選定した。私も顧問として協力を求められたが、私なら選ばないような山の中の一本道ばかりを好み、英国人らしいなと思わされた。なかでも彼らのお気に入りが佐渡島で、大抵のエリアは1泊だけなのだが、佐渡島だけは2泊して島じゅうを走り回った。後に参加者たちに感想を尋ねると、佐渡島が良かった、という方が実際に多かった。この辺りもわれわれ日本人の感覚とは違っており興味深い。
16ケ国、120名が ラゴンダ、ロールスで日本縦断
今回はイギリスの日本政府観光局からの紹介で、日本でのインバウンド旅行会社オックスフォード・インターナショナル・エクスチェンジがホテルの手配やランチ会場の手配をし、ヘッドクオーターたるリズの車には旅行業務を采配するメグミさんが乗り、競技を取り仕切るジュンとピーターの車両には通訳のナオミさんが乗り、私は20世紀末からミッレ・ミリアなどに一緒に参加してきた石田くんと組んで、様々なサポート業務を受け持った。それにしてもわれわれを含めごく少数のスタッフでの運営である。
参加者は16ケ国からの応募があり、52台/120名の参加となった。
イギリス人が一番多く、
・ベルギー
・オランダ
・ドイツ
・フランス
・ポルトガル
・スペイン
・イタリア
・スイス
と様々な国籍の人たちが参加したインターナショナルなものだった。当初は25台限定の募集だったが、反響が良くどうしても参加したいという応募者が多く、断りきれなかったそうだ。また、今回の評判からサムライ・チャレンジ2ndも開催予定だが、次回は日本からも応募し易いようにするとのことである。
車両は、ヨーロッパから海上コンテナ輸送
ところで参加車両はといえば、ラゴンダ、アルヴィス、ベントレー、ロールス・ロイス、ベンツ、アメリカのクライスラーやフォードV8と、アジア各地やペキン~パリ・ラリーに参加した車両らしく、トルクも太い重量級の頑丈なクルマが多かった。しかし参加者の皆さんとクルマ談義をすると、何台もヒストリックカーをお持ちのコレクターばかりで、用途によってクルマを使い分けていた。変哲もないポルシェ356で参加のお爺さんと話し込んでいると、フィゴニ・エ・フラスキが1台だけ架装したアルファ・ロメオ6Cやポルシェ910など、自宅のガレージにはもっと興味深いクルマも所有しているそうだ。
ほとんどの参加車両は、コンテナでヨーロッパから博多港へ海上運送し、ラリー終了後は苫小牧港から、再びコンテナに入れてヨーロッパへの帰路に就いた。ただし、日本と協定を結んでいない国の車両は法律上走れないので、それでも日本を他の参加者たちと走りたいという人はレンタカーで同行した。
ベントレーのドラシャ破断 メカニックを「空輸」
サムライ・チャレンジ、スタート
さて、スタートは4月13日に博多の海の中道のホテル、ザ・ルイガンスから。スタッフは11日に来日し、参加者も12日午後の受付に合わせてホテルに集まった。そして参加者たちは13日の午前中に博多港の保税倉庫へクルマをピックアップに行き、ガソリンスタンドで給油して、それからスタート地点で車両整備をするといった具合で、いきなりのスタートである。これでもたいした混乱がないのだから慣れたものだ。
どれもスケールが違う、英国/日本の対応
トラブルもメカニカルも含めて沢山あり、その都度われわれも迅速に解決したが、特に各地の修理工場にはお世話になった。主催者も2台のサポートカーに工具を満載して、数人のメカニックが同行していたのだが、やはり用意していないパーツもあり、通常では入手し難い種類のオイルや、6Vバッテリーや急速バッテリー・チャージャーも必要になった。そして時には板金や溶接作業をする必要に迫られた。ベントレーのドライブシャフトが折れた時には、イギリスからメカニックが部品と共に飛行機に乗って持って来た。
そういうわけで、九州では西岡さんや横田さん、関西では上野山さん、村田さん、田中さん、関東ではスーパークラフトの山田さん、ブレシアの森さん、新潟ではT-Driveの竹ちゃんにお世話になった。またドイツのリキモリ・オイルは、特に戦前車用に日本の法律に適合し環境にも配慮した有鉛ガソリンと同じ効果があるガソリン添加剤を開発して、参加車に提供してくれた。
福岡県警はスタート地点の管轄ということで、慎重に対処し厳しく指導してきたが、しかし後にサムライ・チャレンジが事故もなく無事終了したことを喜んでくれたのも彼らだった。その他の地域の警察はむしろ優しく親切な対応が多く、きっと参加者たちにとっても日本の警察は頼もしく映ったことだろう。
紳士の身のこなし これが海外のクルマ好き
参加者のほとんどが初めての日本で、いったいどうなることやら、と私を始め多くの人は思ったが、皆さん、さすがに運転スキルも高く1日彼らの走りを見て私も安心した。すれ違いが困難な山道でも、対向車とのかわし方も紳士的でありながら素早い。
こうして、九州・博多から出発して、阿蘇を巡り、小倉から下関で本州に入り、山口の錦帯橋、広島の宮島、そこから石見銀山を経て、日本海側に向かって出雲大社でお参りしてから島根の宍道湖のほとりの城下町・松江、それから鳥取砂丘を経て、宮津から京都へ向かい平安神宮で6日目のゴール。前述の佐渡島以外では、6日目の京都と13日目の東京で2泊したが、それはちょうど一週間ごとの休日にもあたり、車両を整備する時間を取ることができて、参加者は休息や観光をした。スタッフもちょっと一息といったところだ。これは合理的なスケジュール設定で、京都では祇園のお茶屋さん『一力』で舞妓さんの体験をした。
日本人じゃ、思いつかない 3週間の日本旅行
8日目に京都を出発して、奈良に泊まり、次の日は高野山の宿坊に分宿。夕食は精進料理で、慣れない畳の部屋に布団であった。これに戸惑う参加者もあり、初めての体験に喜ぶ参加者もあり。10日目は津風呂湖や長谷寺を経由して、伊賀、信楽、甲賀を通過し、彦根城で遊び、長浜にゴール。11日目は岐阜の妻籠の街道をゆっくりと走り、木曽のホテルに泊まった。ルート上の美しい風景や、各地の地元の人の温かい歓待に、参加者たちは日本という国に深く感銘したことだろう。
12日目も山を越えて、静岡の日本平へ。そして13日目は東京のパレス・ホテルへ到着。東京都内はまったく走らず、ホテルに2泊滞在してクルマの整備と観光、休養にあてた。15日目に東京をスタートして、涌井ミュージアムを表敬訪問。ベントレーの参加者たちがいたく感激していた。私はここで離脱した。フランスのイベントに向かう予定があったので。しかし、ここまで2/3の行程で、ほぼ問題は対処してきたので、相棒の石田雅芳君と畏友のラリードライバーの根本 純さんとに後を任せた。実際、その後は特に問題も起きることなく順調だったそうだ。だから今回の私の写真は涌井ミュージアムまでだ。
さて、参加車は、それから日光中禅寺湖金谷ホテルにゴール。16日目は大内宿を経て新潟へ。17日目はフェリーで佐渡島に渡り、2日間に渡って佐渡島を堪能した。19日目に新潟に戻り、そこから北上。20日目は秋田県の十和田湖、21日目は津軽海峡をフェリーで渡り、北海道・函館へ。そして22日目の5月3日にウィンザー洞爺湖にゴールした。
日本初、外国人主催ラリー完結
こうして4月13日にスタートして、ほぼ3週間で日本を縦断したサムライ・チャレンジが無事に事故もなく終了した。参加者たちも日本を堪能していた。もともとのコンセプトは日本の桜前線を追いかける、というものだったが、それは道程の混雑も予想されたので、一週間は後ろにずらしたほうがベターではないか、ということで今回の日程になったもの。実際には桜前線も今年は1週間ほども遅れて、ちょうどサムライ・チャレンジの行程に重なることになったのだ。おかげで日本中のあちらこちらで桜と親しむことができた。また、天候にも恵まれてほとんど雨に降られず、良いコンデションでのツーリングが楽しめた。
かくして、日本における最初の外国人主催による、海外からの来訪者が参加する日本縦断ヒストリックカー・ラリーは成功裏に終わった。
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